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第7話 見切り発車
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「滝谷様。改めてありがとうございました」
あの後村長の家に招待され、一晩過ごした。
朝目を覚ますと、村長とそのお孫さん――12歳ぐらいの少年――に深々と頭を下げられる。
「ああ、いや。そんなに何度もお礼を言わなくっても……とにかく、頭を上げてください」
誤解は既に解けており、もう何度も石を投げた事を謝られ、魔物達から救った事のお礼を言われていた。
「いいえ。滝谷様が来られなければ、このヘキソンの村は滅んでおりました。本当にありがとうございます」
ヘキソン村の人口は42名。
昨日の魔物の襲撃でその内26人が亡くなっている。
最初その話を聞いた時「え!?そんなに!?」と俺は驚いてしまった。
村の中には魔物が暴れた形跡はあっても、全く死体は転がっていなかったので、そんなに殺されているとは夢にも思わなかったからだ。
だがどうやらあの宴は昼過ぎから続いていたらしく。
魔物達は食った人間の骨を焚火の中に捨てていた為、周囲に遺体が見当たらなかっただけだった様だ。
「それに、亡くなった者達の埋葬迄手伝って頂いて」
あの後、暗い中魔物の死体の処理と、亡くなった人達の遺体の埋葬を行っている。
残された人達が、そのままにはしておけないと泣いたからだ。
俺も当然それを手伝っている。
泣きながら骨を運ぶ人達を見て、居た堪れなくなって知らんぷりなんてとてもできなかったからだ。
「気にしないでください。困った時はお互い様ですから」
不謹慎だとは思うが、彼らに貸を作れたのは大きい。
何せ右も左も分からない状態だ。
この世界の常識を持ち合わせていない俺は、きっと変な言動をしてしまうだろう。
だが少しぐらいおかしな事を口走っても、恩人ならある程度は流して貰えるはずだ。
「それよりも、この辺りには良く魔物が出るんですか?」
取り敢えず情報収集開始。
「いえ。此処数十年、魔物の姿などとんと見なかったのですが」
俺の質問に答えながら、長老は目配せする。
それを見てお孫さんが「失礼します」と言って居間から出て行った。
やらかしてしまった。
考えて見ればまだ昨日の今日だ。
魔物に襲われ家族が殺されている子供の前でその話をするなんて、我ながら無神経過ぎる行動だった。
これはボッチ気質で、真面に人付き合いしてこなかった弊害と言えるだろう。
だがこれからは気を付けないと。
何せここは異世界だ。
日本でなら空気の読めない奴でも生きてはいけるが、右も左も分からない世界で周囲に嫌われる生き方なんてしたら、あっと言う間に詰みかねない。
「ですが1月ほど前から村の近くに魔物が姿を現すようになり、国に何とかして貰おうと遣いの者を送ったのですが……」
「動いて貰えなかったと?」
「はい」
もし国が村からの要請を聞き入れてちゃんと魔物退治をしていたなら、昨日の様な事にはなっていなかっただろう。
昨日兵士と間違われて石を投げられたが、村の人間が国に対して怒るのも当然の話だった。
しかし勝手に呼び出しておいて人をゴミ呼ばわりして始末しようとしたり、危険な状態の村を放置したり、糞みたいな女王だな。
アイリーンの奴は。
「それで、これからどうされるおつもりなんですか?」
この村の男手はほぼ全滅状態だった。
魔物に抵抗して真っ先に殺されてしまったからだ。
働き手は40代の男性が1人で、他に生き残っているのは女子供に老人だけだった。
存続は難しい様に思える。
「取り敢えず、片付けを終えたら隣村に行こうと思っています。男手も居ませんし、魔物にまたいつ襲われるか分からないこの村で生活を続けるのは難しいですから」
「そうですか」
村長は暗い顔で俯く。
長く暮らした村を捨てて、他所に移り住むのは大変だろう。
国からの助成もあまり当てにはならなさそうだし。
「それで、滝谷様に一つお願いがあるのです」
「はい?なんでしょう」
聞き返しといてなんだが、まあ何となく予想は出来る。
「片付けが済むまでと、隣村へと移動の際に護衛をお願いしたいのです。助けて貰った上に厚かましい事ですが……どうかお願いいたします!勿論出来うる限りのお礼は致しますので!どうか!」
村長は頭を床に擦り付けんばかりに、その場で土下座する。
今のまま隣村に向かって、また魔物に襲われでもしたらシャレにはならい。
自分達で身を守れない以上、それは至極当然の頼み事だった。
「分かりました。お引き受けしますよ」
「おお!ありがとうございます!」
村長はがばっと起き上り、その枯れ木の様な手で俺の手を握る。
その眼にはうっすらと涙が浮かんでいるのが見えた。
この状況で頼りになるのは俺だけだから、必死だったのだろう。
「ですが、条件があります」
「な、何でもおっしゃってください。私達に出来る事でしたらなんでもいたします」
最初は遠回しにこの国の――この世界の情報を引き出すつもりだった。
だが気づいてしまったのだ。
話題を誘導し、情報を引き出すのには巧みな話術が必要となる事を。
ボッチ気質のコミュ障寄りの俺にとって、それが超難易度に当たる行為だ。
という訳で路線変更する。
「これからする話は、他言無用でお願いします」
「わ、わかりました」
俺は真剣みを出す為、声のトーンを落とす。
村長はその言葉に神妙な表情で頷いた。
「実は俺、この世界の人間ではないんです。だからこの世界の事がよく分からないんで、村長には色々教えて貰いたんです。この世界の事を」
聞きたい事はもうド直球で聞く事にする。
此方は相手の命綱を握っている様な物だし、きっと素直に答えてくれるだろう。
最悪後で村長が国に通報したとしても、此方には完全異常耐性にダメージ一回無効、更には永久コンボ迄あるのだ。
どうにでもなるだろう……多分。
あの後村長の家に招待され、一晩過ごした。
朝目を覚ますと、村長とそのお孫さん――12歳ぐらいの少年――に深々と頭を下げられる。
「ああ、いや。そんなに何度もお礼を言わなくっても……とにかく、頭を上げてください」
誤解は既に解けており、もう何度も石を投げた事を謝られ、魔物達から救った事のお礼を言われていた。
「いいえ。滝谷様が来られなければ、このヘキソンの村は滅んでおりました。本当にありがとうございます」
ヘキソン村の人口は42名。
昨日の魔物の襲撃でその内26人が亡くなっている。
最初その話を聞いた時「え!?そんなに!?」と俺は驚いてしまった。
村の中には魔物が暴れた形跡はあっても、全く死体は転がっていなかったので、そんなに殺されているとは夢にも思わなかったからだ。
だがどうやらあの宴は昼過ぎから続いていたらしく。
魔物達は食った人間の骨を焚火の中に捨てていた為、周囲に遺体が見当たらなかっただけだった様だ。
「それに、亡くなった者達の埋葬迄手伝って頂いて」
あの後、暗い中魔物の死体の処理と、亡くなった人達の遺体の埋葬を行っている。
残された人達が、そのままにはしておけないと泣いたからだ。
俺も当然それを手伝っている。
泣きながら骨を運ぶ人達を見て、居た堪れなくなって知らんぷりなんてとてもできなかったからだ。
「気にしないでください。困った時はお互い様ですから」
不謹慎だとは思うが、彼らに貸を作れたのは大きい。
何せ右も左も分からない状態だ。
この世界の常識を持ち合わせていない俺は、きっと変な言動をしてしまうだろう。
だが少しぐらいおかしな事を口走っても、恩人ならある程度は流して貰えるはずだ。
「それよりも、この辺りには良く魔物が出るんですか?」
取り敢えず情報収集開始。
「いえ。此処数十年、魔物の姿などとんと見なかったのですが」
俺の質問に答えながら、長老は目配せする。
それを見てお孫さんが「失礼します」と言って居間から出て行った。
やらかしてしまった。
考えて見ればまだ昨日の今日だ。
魔物に襲われ家族が殺されている子供の前でその話をするなんて、我ながら無神経過ぎる行動だった。
これはボッチ気質で、真面に人付き合いしてこなかった弊害と言えるだろう。
だがこれからは気を付けないと。
何せここは異世界だ。
日本でなら空気の読めない奴でも生きてはいけるが、右も左も分からない世界で周囲に嫌われる生き方なんてしたら、あっと言う間に詰みかねない。
「ですが1月ほど前から村の近くに魔物が姿を現すようになり、国に何とかして貰おうと遣いの者を送ったのですが……」
「動いて貰えなかったと?」
「はい」
もし国が村からの要請を聞き入れてちゃんと魔物退治をしていたなら、昨日の様な事にはなっていなかっただろう。
昨日兵士と間違われて石を投げられたが、村の人間が国に対して怒るのも当然の話だった。
しかし勝手に呼び出しておいて人をゴミ呼ばわりして始末しようとしたり、危険な状態の村を放置したり、糞みたいな女王だな。
アイリーンの奴は。
「それで、これからどうされるおつもりなんですか?」
この村の男手はほぼ全滅状態だった。
魔物に抵抗して真っ先に殺されてしまったからだ。
働き手は40代の男性が1人で、他に生き残っているのは女子供に老人だけだった。
存続は難しい様に思える。
「取り敢えず、片付けを終えたら隣村に行こうと思っています。男手も居ませんし、魔物にまたいつ襲われるか分からないこの村で生活を続けるのは難しいですから」
「そうですか」
村長は暗い顔で俯く。
長く暮らした村を捨てて、他所に移り住むのは大変だろう。
国からの助成もあまり当てにはならなさそうだし。
「それで、滝谷様に一つお願いがあるのです」
「はい?なんでしょう」
聞き返しといてなんだが、まあ何となく予想は出来る。
「片付けが済むまでと、隣村へと移動の際に護衛をお願いしたいのです。助けて貰った上に厚かましい事ですが……どうかお願いいたします!勿論出来うる限りのお礼は致しますので!どうか!」
村長は頭を床に擦り付けんばかりに、その場で土下座する。
今のまま隣村に向かって、また魔物に襲われでもしたらシャレにはならい。
自分達で身を守れない以上、それは至極当然の頼み事だった。
「分かりました。お引き受けしますよ」
「おお!ありがとうございます!」
村長はがばっと起き上り、その枯れ木の様な手で俺の手を握る。
その眼にはうっすらと涙が浮かんでいるのが見えた。
この状況で頼りになるのは俺だけだから、必死だったのだろう。
「ですが、条件があります」
「な、何でもおっしゃってください。私達に出来る事でしたらなんでもいたします」
最初は遠回しにこの国の――この世界の情報を引き出すつもりだった。
だが気づいてしまったのだ。
話題を誘導し、情報を引き出すのには巧みな話術が必要となる事を。
ボッチ気質のコミュ障寄りの俺にとって、それが超難易度に当たる行為だ。
という訳で路線変更する。
「これからする話は、他言無用でお願いします」
「わ、わかりました」
俺は真剣みを出す為、声のトーンを落とす。
村長はその言葉に神妙な表情で頷いた。
「実は俺、この世界の人間ではないんです。だからこの世界の事がよく分からないんで、村長には色々教えて貰いたんです。この世界の事を」
聞きたい事はもうド直球で聞く事にする。
此方は相手の命綱を握っている様な物だし、きっと素直に答えてくれるだろう。
最悪後で村長が国に通報したとしても、此方には完全異常耐性にダメージ一回無効、更には永久コンボ迄あるのだ。
どうにでもなるだろう……多分。
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