学園ランキング最強はチートで無双する~能力はゴミだが、異世界転生で得たチート能力で最強~

榊与一

文字の大きさ
2 / 85
プロローグ

第1話 帰還

しおりを挟む
「馬鹿な!こんな馬鹿な!妾は魔を統べる王じゃ!その妾が!!」

薄暗い城内に、ヒステリックな女の声が響いた。
魔族の支配者である女王ラキア。
追い込まれた彼女は、狂った様に金切り声を上げる。

「終わりだ!!魔王ラキア!」

相手は女だが魔王だ。
俺は容赦しない。

手にした剣――人の身の丈ほどもあり、ブロックの様な厚みを持った大剣を俺は魔王ラキアへと振り下ろす。
剣はもはや真面に動く事すら出来ないラキアの頭蓋をかち割り、そのまま真っすぐに奴の体を縦に引き裂いた。

「ばぎぇえが……この恨み……必ず……や……ベル……ドス……ミリ……ガ……」

最後の恨み言を残し、魔王ラキアは息絶える。
その肉体は塵となって消えていった。

しかし奴の最後の言葉、ベルドスミリガとはなんだろうか?

まるで呪文の様にも思えたが、何か起こった様子はない。
まあ気にしても仕方がないか。
俺は片手を上げ、勝利を告げる勝鬨かちどきを上げた。

「思い知ったか!これがレベルの力だ!」

異世界転生で神から授かったのは、レベルシステムという力だ。
他にはない。
俺だけが訓練や魔物の討伐でレベルが上がるという、それはある意味最強のチートだった。

「やっと終わったな。所でレベルってなんだ?」

俺の言葉を耳聡く聞きつけたシーフのジャンが聞いて来る。
彼女は全身ボロボロで片膝を付いている状態ではあるが、その顔は晴れやかだった。

「気にすんな」

転生チートの事は、仲間達には話していない。
強力すぎて、何となくズルしている気分だったからだ。
実際俺がそれを聞かされたら「うわっ!ズルっ!」ってなるだろうし。

「さて、全部終わったな……じゃあ俺は故郷に帰るよ」

「そんな!?せめてもう暫く一緒に」

ピンク髪の巨乳エルフ――エルザ――が、悲しげな眼で俺を見てくる。
エルザは魔王討伐パーティーの魔法使いだ。
魔力切れで辛いはずだろうに、彼女は壁に手をつきながら俺に歩み寄って来た。

「悪いな」

俺は震える彼女の肩に手を置いた。
正直、可愛いし胸も大きいしで、彼女と離れ離れになるのは本気で惜しく思える。
だが魔王ラキア討伐を果たした以上、俺は元の世界に帰らなければならない。

「ちっ……勝ち逃げかよ」

リーゼントをした、目つきの悪い勇者――サイガが舌打ちする。
彼もボロボロで、剣を杖代わりにしなければ立っていられない程疲弊していた。

「へへっ、悪いな」

彼は悪態を吐いたが、それは決して本心では無かった。
その証拠に、サイガの眦には涙がうっすらと浮かんでいる。

見た目はヤンキーっぽく口も悪い男ではあるが、なんだかんだで情に厚い奴だからな。
サイガとは色々とぶつかり合ってきたが、それも今ではいい思い出だ。

「俺が居なくなったからって、訓練さぼるなよ?」

「ざっけんな。俺は今よりずっとずっと強くなって、次に会う時は、テメーをへこませてやるぜ」

「はは、楽しみにしてるよ」

どうやら時間切れの様だった。
俺の周囲に強い光の気泡が泡立ち始める。
その眩しさに俺は目を開けておられず、目を閉じた。

「さよなら、皆……」

大気に溢れるマナが、俺の体を高速で通り抜けていくのが分かった。
この感覚は2度目。
一度目は、この世界に飛ばされた時の物だ。

「帰って来た……か」

マナが感じられなくなり、瞼の裏を赤く染め上げていた光が消える。
ゆっくりと目を開けると、前方から横転して車道を滑るトラックが此方へと突っ込んで来るのが見えた。

「おっと」

俺は咄嗟に飛んでそれを躱す。

「流石にもう一度ぺしゃんこはごめん被るぜ」

かつての俺は、滑って来たトラックを躱せずに轢死している。
だが今の俺は違う。

女神から転生チートとしてレベルアップの能力を貰い。
厳しい訓練と戦いで魔王討伐を果たすまでの力を得た俺にとって、路面を滑って来るトラックを躱す事など朝飯前だ。

「取り敢えず110番……いや、119番がいいか」

トラックの中から感じる生命は多少弱っている様に感じたが、死ぬ程酷い状態ではない様だ。
緊急事態なら俺が急いで助け出しても良かったが、この様子なら警察や救急に任せて大丈夫だろう。

ポケットに手を突っ込むと、無機物の感触が指先に当たる。
久しぶりのスマートホンの感触だ。
顔認証の機能を使って画面を開き、俺は119番へと通報した。

「久しぶりに帰って来たんだ。まずはコーラでも飲むか」

傍に会った自販機はトラックがぶつかってしまい、大破していた。
とてもコーラを買える状態ではないので、近くのコンビニへと向かう事にする。
電話口でそこで待っていて下さいと言われたが、ちょっと飲み物を買いに行くぐらいなら問題ないだろう。

「ぷはー。うっっめぇ」

コンビニで買ったぺットボトルを開け、一気にあおる。
久しぶりのコーラは最高に美味い。
これを飲めるだけで、異世界から帰って来た甲斐があるという物だ。

異世界には炭酸飲料はなかったからな。

「帰って来て良かった!」

その日、俺は異世界から4年ぶりに帰還した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...