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氷の女王
第5話 不審者
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「ふぅ、まあこんなもんでいいか」
実家から持ち込んだ荷物を適当に整理する。
今日から寮での一人暮らしだ。
学生寮と聞くと相部屋を想像するだろうが、ギフテッド学園の寮は全て個室制だった。
可能な限り優良な環境で能力育成に注力するため、自室で気疲れなどしない様にするための配慮だそうだ。
室内はワンルームのマンション形式になっている。
ドアにカギは勿論の事、トイレ風呂キッチンも完備されていた。
学園外への行動を制限されているとはいえ、この環境ならまあ大きな不満は出て来ないだろう。
「しかし、アイス・クィーンか……綺麗な子だったな」
昼間すれ違った銀髪の女性、氷部澪奈の事を思い出す。
泰三がファンになったと言うだけあって、とんでもないレベルの美少女だ。
アイドルでもあのレベルは早々いないだろう。
「あれでもう少し胸があったら、俺もファンになってたかもな」
正確なサイズは分からないが、制服の盛り上がりが殆ど無かった事から巨乳でないのは間違いなかった。
残念ながら、俺は貧乳にはあまり興味がないのだ。
その為、泰三にファンクラブ――完全非公認――に入らないかと誘われたが俺はきっぱりと断っている。
「ふむ……」
俺は窓から外を見た。
時計の針は23時を指し、まばらな電灯だけが光源であるため周囲は暗い。
動く人影は見当たらない――のが普通だ。
だが何人かの人影が、こそこそと物陰に隠れる様に移動しているのが俺には見えた。
「放っておく――ってのもあれだよな」
俺が窓の外を見たのは、殺気だった気配を感じたからだった。
そいつらがこそこそと移動し、しかも顔には覆面迄つけているとなると、これは間違いなく何らかの犯罪絡みとみて間違いないだろう
俺は窓を開け――あっ、駄目だ。
窓には落下防止の為か留め具が付いてあり、全開には出来なかった。
めんどくさいとは思いつつ、俺は部屋を出て人の気配を避けて急いで3階から1階へと駆け降りる。
「ちっ、やっぱ気配はもう感じ取れないか」
異世界に居た時は、追跡なんかはシーフのジャンがが上手くやってくれていた。
俺はそう言った類の行動が苦手なので、遠く離れてしまった相手の居場所を掴んだりする事は出来ない。
完全に不審者達を見失なってしまった。
とは言え――
「この辺りから、アッチに進んでいたよな」
目視で相手の行動は見ている。
彼らが向かう先を急変更していないのなら、同じ方向に進めばかち合う可能性は高いだろう。
ある程度の距離まで寄れば気配で分かるので、俺はその方角に向かって駆けだす。
「いた」
グラウンド場に人影が見えた。
この時間はライトアップされていないのでかなり暗いが、遠目から七人いる事が確認できる。
俺の追っていた不審者の気配は6人だったので、どうやら1人増えた様だ。
「あれって……」
強く目を凝らして気づく。
7人いる内、1人に見覚えがある事に。
それは昼間すれ違った、氷部澪奈だった。
「どうやら、仲間じゃないみたいだな」
彼女以外は全員マスクを被り、明確な殺気を彼女に向かって放っていた。
あの不審者共の狙いは氷部だった。
もしくは、怪しい行動を氷部に咎められたって所だろう。
しかしなんで氷部はこんな時間、こんな場所に一人でいるんだ?
兎に角、一触即発の雰囲気を察し助けに入ろうとしたが、俺は咄嗟に動きを止めた。
6人の内1人がその場に倒れ込んだからだ。
「そういや、桁違いの四天王だったっけか?」
どうやら助けは不要そうだ。
2人目、3人目もあっという間にのされてしまう。
だが氷部は一歩も動いていない。
全ては彼女の周囲に漂う冷気――氷の結晶による物だった。
「成程。大したもんだ」
四天王の称号は伊達じゃなさそうだ。
アイス・クィーンと呼ばれるだけあって、彼女の能力は氷――もしくは冷気――を操る物なのだろう。
彼女が纏う微小な氷の結晶が、襲撃者達の首や脇に張り付き瞬時に動脈部分を凍り付かせてしまっている。
こうなるともう、相手は真面に動けない。
残り三人も、何も出来ずにあっという間に倒されてしまった。
「帰るか」
不審者が成敗された以上、俺がする事はなにも無い。
今更大丈夫かと声を掛けるのもあれだし。
「隠れていないで、出てきなさい」
彼女――氷部澪奈は小さく呟いた。
それは間違いなく、囁く様な小声だ。
にも関わらず、遠く離れた俺の耳にまでしっかりと言葉が届く。
これも能力だろうか?
彼女は真っすぐに此方を見ている。
間違いなく、今の言葉は俺に向けられた物だ。
結構距離があるというのに、良く気付いたもんだと感心する。
「どうも」
面倒くさいから言葉を無視して去ろうかとも思ったが、背を向けた瞬間いきなり背後から襲われそうだったので止めておく。
刺激しない様ゆっくりと歩いていき、俺は氷部に声を掛けた。
「……」
返事は返ってこない。
代わりに彼女の体からは、強い殺気が放たれた。
どうやら俺を不審者の仲間と勘違いしている様だ。
「あなた、組織の人間ね」
組織。
周りに転がっている不審者達は、何かの犯罪組織に所属する人間という事だろうか?
「言っとくけど、俺はこいつらの仲間じゃないぞ?寧ろ――」
「でしょうね、彼らは組織の人間じゃないわ。以前私にやられた事を恨んで、復讐に来ただけの只の大馬鹿者達だもの」
言葉を遮られてしまう。
どうやら彼女は、人の話を最後まで聞かないタイプの人間らしい。
「組織の人間とは……貴方とは……直接の繋がりはないでしょうね」
言葉と共に、彼女の殺気が膨れ上がった。
周囲の気温が一気に下がり、氷部澪奈の周囲に微細な結晶が乱舞する。
こりゃ不味いな。
彼女の言う組織が一体どういう物かは知らないが、完全に勘違いされてしまっている様だ。
兎に角、きちんと話して誤解を解かないと。
「えーっとさ……君、絶対勘違いしてるよね?」
「問答無用!」
落ち着かせようと声を掛けるが、完全に拒絶されてしまう。
氷部は手を此方に向け、問答無用で此方に攻撃を仕掛けて来た。
やれやれと心の中で呟きながら、俺は大きく背後に飛び退って躱す。
実家から持ち込んだ荷物を適当に整理する。
今日から寮での一人暮らしだ。
学生寮と聞くと相部屋を想像するだろうが、ギフテッド学園の寮は全て個室制だった。
可能な限り優良な環境で能力育成に注力するため、自室で気疲れなどしない様にするための配慮だそうだ。
室内はワンルームのマンション形式になっている。
ドアにカギは勿論の事、トイレ風呂キッチンも完備されていた。
学園外への行動を制限されているとはいえ、この環境ならまあ大きな不満は出て来ないだろう。
「しかし、アイス・クィーンか……綺麗な子だったな」
昼間すれ違った銀髪の女性、氷部澪奈の事を思い出す。
泰三がファンになったと言うだけあって、とんでもないレベルの美少女だ。
アイドルでもあのレベルは早々いないだろう。
「あれでもう少し胸があったら、俺もファンになってたかもな」
正確なサイズは分からないが、制服の盛り上がりが殆ど無かった事から巨乳でないのは間違いなかった。
残念ながら、俺は貧乳にはあまり興味がないのだ。
その為、泰三にファンクラブ――完全非公認――に入らないかと誘われたが俺はきっぱりと断っている。
「ふむ……」
俺は窓から外を見た。
時計の針は23時を指し、まばらな電灯だけが光源であるため周囲は暗い。
動く人影は見当たらない――のが普通だ。
だが何人かの人影が、こそこそと物陰に隠れる様に移動しているのが俺には見えた。
「放っておく――ってのもあれだよな」
俺が窓の外を見たのは、殺気だった気配を感じたからだった。
そいつらがこそこそと移動し、しかも顔には覆面迄つけているとなると、これは間違いなく何らかの犯罪絡みとみて間違いないだろう
俺は窓を開け――あっ、駄目だ。
窓には落下防止の為か留め具が付いてあり、全開には出来なかった。
めんどくさいとは思いつつ、俺は部屋を出て人の気配を避けて急いで3階から1階へと駆け降りる。
「ちっ、やっぱ気配はもう感じ取れないか」
異世界に居た時は、追跡なんかはシーフのジャンがが上手くやってくれていた。
俺はそう言った類の行動が苦手なので、遠く離れてしまった相手の居場所を掴んだりする事は出来ない。
完全に不審者達を見失なってしまった。
とは言え――
「この辺りから、アッチに進んでいたよな」
目視で相手の行動は見ている。
彼らが向かう先を急変更していないのなら、同じ方向に進めばかち合う可能性は高いだろう。
ある程度の距離まで寄れば気配で分かるので、俺はその方角に向かって駆けだす。
「いた」
グラウンド場に人影が見えた。
この時間はライトアップされていないのでかなり暗いが、遠目から七人いる事が確認できる。
俺の追っていた不審者の気配は6人だったので、どうやら1人増えた様だ。
「あれって……」
強く目を凝らして気づく。
7人いる内、1人に見覚えがある事に。
それは昼間すれ違った、氷部澪奈だった。
「どうやら、仲間じゃないみたいだな」
彼女以外は全員マスクを被り、明確な殺気を彼女に向かって放っていた。
あの不審者共の狙いは氷部だった。
もしくは、怪しい行動を氷部に咎められたって所だろう。
しかしなんで氷部はこんな時間、こんな場所に一人でいるんだ?
兎に角、一触即発の雰囲気を察し助けに入ろうとしたが、俺は咄嗟に動きを止めた。
6人の内1人がその場に倒れ込んだからだ。
「そういや、桁違いの四天王だったっけか?」
どうやら助けは不要そうだ。
2人目、3人目もあっという間にのされてしまう。
だが氷部は一歩も動いていない。
全ては彼女の周囲に漂う冷気――氷の結晶による物だった。
「成程。大したもんだ」
四天王の称号は伊達じゃなさそうだ。
アイス・クィーンと呼ばれるだけあって、彼女の能力は氷――もしくは冷気――を操る物なのだろう。
彼女が纏う微小な氷の結晶が、襲撃者達の首や脇に張り付き瞬時に動脈部分を凍り付かせてしまっている。
こうなるともう、相手は真面に動けない。
残り三人も、何も出来ずにあっという間に倒されてしまった。
「帰るか」
不審者が成敗された以上、俺がする事はなにも無い。
今更大丈夫かと声を掛けるのもあれだし。
「隠れていないで、出てきなさい」
彼女――氷部澪奈は小さく呟いた。
それは間違いなく、囁く様な小声だ。
にも関わらず、遠く離れた俺の耳にまでしっかりと言葉が届く。
これも能力だろうか?
彼女は真っすぐに此方を見ている。
間違いなく、今の言葉は俺に向けられた物だ。
結構距離があるというのに、良く気付いたもんだと感心する。
「どうも」
面倒くさいから言葉を無視して去ろうかとも思ったが、背を向けた瞬間いきなり背後から襲われそうだったので止めておく。
刺激しない様ゆっくりと歩いていき、俺は氷部に声を掛けた。
「……」
返事は返ってこない。
代わりに彼女の体からは、強い殺気が放たれた。
どうやら俺を不審者の仲間と勘違いしている様だ。
「あなた、組織の人間ね」
組織。
周りに転がっている不審者達は、何かの犯罪組織に所属する人間という事だろうか?
「言っとくけど、俺はこいつらの仲間じゃないぞ?寧ろ――」
「でしょうね、彼らは組織の人間じゃないわ。以前私にやられた事を恨んで、復讐に来ただけの只の大馬鹿者達だもの」
言葉を遮られてしまう。
どうやら彼女は、人の話を最後まで聞かないタイプの人間らしい。
「組織の人間とは……貴方とは……直接の繋がりはないでしょうね」
言葉と共に、彼女の殺気が膨れ上がった。
周囲の気温が一気に下がり、氷部澪奈の周囲に微細な結晶が乱舞する。
こりゃ不味いな。
彼女の言う組織が一体どういう物かは知らないが、完全に勘違いされてしまっている様だ。
兎に角、きちんと話して誤解を解かないと。
「えーっとさ……君、絶対勘違いしてるよね?」
「問答無用!」
落ち着かせようと声を掛けるが、完全に拒絶されてしまう。
氷部は手を此方に向け、問答無用で此方に攻撃を仕掛けて来た。
やれやれと心の中で呟きながら、俺は大きく背後に飛び退って躱す。
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