15 / 85
4属性使い
第14話 獣医
しおりを挟む
「女子には人気でそうな能力じゃん」
「美容師とかには興味ないからなぁ」
皇に能力を聞かれ、少し迷ったが素直に答えた。
例え隠しても、同じクラスだから直ぐにばれるだろうしな。
「そうなんだ?あたしはさ……将来獣医になりたいんだ」
「へぇ」
皇の初対面の印象は、一言で言うならロック少女だった。
そのままのイメージで獣医になりたいなんて言われていたら、きっと「ふぁっ?」となっていただろう。
でも今なら素直に納得できる。
何せ、さっきまで飼育している動物達の話を延々聞かされ続けていたからな。
俺は。
その時の熱意と優しい彼女の表情から、本気で動物が好きだというのがハッキリと伝わっている。
「あ!今そんな見た目で獣医とか、何言ってんだこいつって思っただろ?」
「いやいや、思ってないよ」
「本当かよ?」
「ほんとほんと」
一応自覚はあるんだな。
今のビジュアルが獣医向きではないという自覚は。
「あたしがこんな格好してるのってさ……両親の影響なんだ」
「両親の」
「うん、親がロック大好きでさ。その影響で子供の頃からあたしも髪染められて、メイク迄させられてたんだぜ。お陰で友達なんて一人も出来やしねぇ」
皇は寂しげに笑う。
趣味を持つのは悪い事ではないが、子供にまでそれを強く押し付けるは最早虐待と言っていい。
「そんなあたしの唯一の友達は、家で飼ってた犬のパンクだけさ。あいつだけは、いつでもあたしと一緒にいてくれたんだ」
飼ってた犬だけが友達か。
彼女が動物好きになった理由が垣間見えるな。
「動物は見た目で人を判断しないからいいぜ」
「ははは、そうだな」
ふと疑問に思う。
この学園は基本全寮制だった。
両親の元を離れているのなら、もう髪の色もメイクも無理しなくていいはず。
それでも続けてるって事は、結局本人も今の格好を気に入ってるって事だろうか?
「なあ聞いて良いか?」
「ん?」
「両親の影響で、結局皇もロック好きになったのか?」
「いや全然、寧ろ大っ嫌いだよ」
「え?」
じゃあ何でそんな格好を続けてるんだ?
親に強制されているならともかく、好きでもないのにそんな恰好をしている意味が分からない。
「言いたい事は分かるよ。なんつーかなー、習慣になっちまってんだよ。子供の頃からやってるせいか、この格好じゃないと何となく落ち着かないんだ」
「そ、そうなのか……」
何それ。
もうほぼ洗脳じゃん。
笑えないぞ。
「なあ鏡……下の名前で呼んでもいいか?あたしの事も理沙って呼んでくれていいから」
「皇の下の名前は理沙か」
可愛らしい名前だ。
もっとロックなのが付いてるかと思ったが、名前は大丈夫だった様だ。
「あれ?あたしの名前教えてなかったっけ」
「自己紹介の時は苗字しか聞いてないぞ」
「ああ、ごめんごめん。あの時はシロの事が気になってて、それ所じゃなくってさ」
理沙は照れ臭そうに笑う。
あの時窓から外をずっと見ていたのは、素気ないんじゃなく、飼育ゾーンが気になっていたせいだ。
「いいって、俺は気にしてないから。それより名前の件、オッケーだぜ」
「へへ、今日は付き合ってくれてありがとな。……竜也」
彼女は照れ臭そうに俺の名を呼ぶ。
その女の子らしい仕草に、俺は思わずドキリとしてしまう。
「これで貸し2つだ」
「将来獣医になったら、その時は無料で診察してやるよ。2回分」
「おいおい、けちくせーな」
貸が返って来るのは大分先になりそうだ。
まあそれ以前に俺はペットを飼うつもりがないので、多分一生返ってこないな。
ま、別にいいけど。
たった貸二つでクラスメート……いや、友達の事を色々知れたんだ。
対価としては安い位だ。
「さて、ちょっと便所行って来るわ」
「でっかい方か?」
理沙がにやりと笑う。
発想が泰三のそれと一緒だった。
俺は呆れて首を竦める。
「超でっかい奴だ。ついでに、寮でジュースでも買って来るかな。理沙の分も買って来てやるぞ?」
「いや、あたしはいいよ」
「そっか。ちょっと時間かかるけど、一人だからって寂しくて泣くなよ」
「誰が泣くか。大体あたしにはシロが付いてるからな」
「ははは、そうだな。じゃあいってくら」
俺は軽く手を振ってプレハブを後にする。
そしてそのまま便所には行かず、グラウンドの方へと歩いて行った。
もう10時を回っている為グラウンドに人影はなく、照明も完全に落とされている。
ここで良いだろう。
俺は振り返って声を掛けた。
「何か用か?」
飼育ゾーンから俺の後を追って来た人影は、無言で俺を睨み付ける。
その顔には赤いマスクを被っているが、気配で誰だか分かった。
こいつは――
「四条王喜。いや、エレメント・マスターって呼んだ方が良いか?」
「美容師とかには興味ないからなぁ」
皇に能力を聞かれ、少し迷ったが素直に答えた。
例え隠しても、同じクラスだから直ぐにばれるだろうしな。
「そうなんだ?あたしはさ……将来獣医になりたいんだ」
「へぇ」
皇の初対面の印象は、一言で言うならロック少女だった。
そのままのイメージで獣医になりたいなんて言われていたら、きっと「ふぁっ?」となっていただろう。
でも今なら素直に納得できる。
何せ、さっきまで飼育している動物達の話を延々聞かされ続けていたからな。
俺は。
その時の熱意と優しい彼女の表情から、本気で動物が好きだというのがハッキリと伝わっている。
「あ!今そんな見た目で獣医とか、何言ってんだこいつって思っただろ?」
「いやいや、思ってないよ」
「本当かよ?」
「ほんとほんと」
一応自覚はあるんだな。
今のビジュアルが獣医向きではないという自覚は。
「あたしがこんな格好してるのってさ……両親の影響なんだ」
「両親の」
「うん、親がロック大好きでさ。その影響で子供の頃からあたしも髪染められて、メイク迄させられてたんだぜ。お陰で友達なんて一人も出来やしねぇ」
皇は寂しげに笑う。
趣味を持つのは悪い事ではないが、子供にまでそれを強く押し付けるは最早虐待と言っていい。
「そんなあたしの唯一の友達は、家で飼ってた犬のパンクだけさ。あいつだけは、いつでもあたしと一緒にいてくれたんだ」
飼ってた犬だけが友達か。
彼女が動物好きになった理由が垣間見えるな。
「動物は見た目で人を判断しないからいいぜ」
「ははは、そうだな」
ふと疑問に思う。
この学園は基本全寮制だった。
両親の元を離れているのなら、もう髪の色もメイクも無理しなくていいはず。
それでも続けてるって事は、結局本人も今の格好を気に入ってるって事だろうか?
「なあ聞いて良いか?」
「ん?」
「両親の影響で、結局皇もロック好きになったのか?」
「いや全然、寧ろ大っ嫌いだよ」
「え?」
じゃあ何でそんな格好を続けてるんだ?
親に強制されているならともかく、好きでもないのにそんな恰好をしている意味が分からない。
「言いたい事は分かるよ。なんつーかなー、習慣になっちまってんだよ。子供の頃からやってるせいか、この格好じゃないと何となく落ち着かないんだ」
「そ、そうなのか……」
何それ。
もうほぼ洗脳じゃん。
笑えないぞ。
「なあ鏡……下の名前で呼んでもいいか?あたしの事も理沙って呼んでくれていいから」
「皇の下の名前は理沙か」
可愛らしい名前だ。
もっとロックなのが付いてるかと思ったが、名前は大丈夫だった様だ。
「あれ?あたしの名前教えてなかったっけ」
「自己紹介の時は苗字しか聞いてないぞ」
「ああ、ごめんごめん。あの時はシロの事が気になってて、それ所じゃなくってさ」
理沙は照れ臭そうに笑う。
あの時窓から外をずっと見ていたのは、素気ないんじゃなく、飼育ゾーンが気になっていたせいだ。
「いいって、俺は気にしてないから。それより名前の件、オッケーだぜ」
「へへ、今日は付き合ってくれてありがとな。……竜也」
彼女は照れ臭そうに俺の名を呼ぶ。
その女の子らしい仕草に、俺は思わずドキリとしてしまう。
「これで貸し2つだ」
「将来獣医になったら、その時は無料で診察してやるよ。2回分」
「おいおい、けちくせーな」
貸が返って来るのは大分先になりそうだ。
まあそれ以前に俺はペットを飼うつもりがないので、多分一生返ってこないな。
ま、別にいいけど。
たった貸二つでクラスメート……いや、友達の事を色々知れたんだ。
対価としては安い位だ。
「さて、ちょっと便所行って来るわ」
「でっかい方か?」
理沙がにやりと笑う。
発想が泰三のそれと一緒だった。
俺は呆れて首を竦める。
「超でっかい奴だ。ついでに、寮でジュースでも買って来るかな。理沙の分も買って来てやるぞ?」
「いや、あたしはいいよ」
「そっか。ちょっと時間かかるけど、一人だからって寂しくて泣くなよ」
「誰が泣くか。大体あたしにはシロが付いてるからな」
「ははは、そうだな。じゃあいってくら」
俺は軽く手を振ってプレハブを後にする。
そしてそのまま便所には行かず、グラウンドの方へと歩いて行った。
もう10時を回っている為グラウンドに人影はなく、照明も完全に落とされている。
ここで良いだろう。
俺は振り返って声を掛けた。
「何か用か?」
飼育ゾーンから俺の後を追って来た人影は、無言で俺を睨み付ける。
その顔には赤いマスクを被っているが、気配で誰だか分かった。
こいつは――
「四条王喜。いや、エレメント・マスターって呼んだ方が良いか?」
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる