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バトルフェスティバル
第38話 賄賂
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「……」
俺は全身にプラーナを満たし、相手の攻撃に備える。
周囲を同時に攻撃するすべのない俺にとって、上田望の透明能力は厄介な物だった。
素早く動き回る見えない相手。
しかも彼女は足音一つ立てないため、全く居場所が把握できない。
そんな相手に攻撃を当てる手段は二つ。
一つは適当にビームをばら撒き、偶然のラッキーパンチを入れる方法だ。
上手く入れば、一気に戦況を持っていく事も出来るだろう。
但しこの戦法は消耗が激しく、相手が本格的に逃げに徹してしまうと、かなり分の悪い賭けになってしまう。
もう一つはカウンターだ。
幸い事前情報で、上田が遠距離攻撃系の能力を持ち合わせていない事は分かっている。
彼女が俺を倒すには、直接攻撃するしか手段はない。
そこにカウンターを合わせるというものだ。
当然俺の選択はラッキーパンチではなく、より堅実なカウンターの方だ。
その為に、まずはプラーナを全身に巡らせ防御を固めた。
プラーナには身体能力向上と、防御能力を高める効果がある。
特に防御能力に関する影響は大きく、パワーAクラスにもなるとミサイルの一撃さえ受け止めると――あくまでも噂の範囲ではあるが――さえ言われている。
まあ俺のパワーはCクラスだが、それでも防御に徹すれば、余程の事がない限り大ダメージを受ける事は無いだろう。
「成程。そう来た訳か……やっかいね」
「!?」
目の前に突然上田が姿を現した。
その思わぬ行動に俺は虚を突かれてしまう。
だが彼女は何かする訳でもなく、その場を動かない。
「ふふ、これが何だかわかる?」
「ばかな!?それは……」
俺の視線は一点に集中する。
上田の制服の袂に。
あ、言っておくけど別に彼女の胸を凝視したわけではないぞ。
そんな価値はないからな、上田のぺたんこの胸には。
俺が凝視したのは、胸元からちらちらと見える写真の方だ。
そこには――
「そう、貴方が入学する前の宇佐田さんの写真よ。水着……しかも超ローアングル」
どうやってとったのかは分からないが、それを前に俺は全身を震わせる。
ちょう……超絶欲しい!
「私は今からこれを盾にするわ。殴れば彼女の写真は皺くちゃになり、ビームを撃てば粉々になっちゃうかもね」
「く……卑怯な……」
「ふふふ、新聞部の情報力は学園一!勝敗は始まる前から決まっていたのよ!」
上田の姿が周囲の景色に溶け込み消える。
俺はそれを、指を咥えて見ているしかなかった。
「がっ!?」
右脇腹に衝撃が走る。
反射的にその方向にビームを撃とうとするが、俺はぐっとそれを抑えた。
そんな真似をしたら、宇佐田――の写真――が粉々になってしまう。
「そらそら!」
「ぐふぅ」
反撃が来ない事を確認した上田は、調子に乗って連打で攻撃してくる。
プラーナを防御に集中させているので、痛みはそれ程でもない。
だがこうも一方的に攻撃され続けては、流石に長くは持ちそうになかった。
何とか手を考えなければ……だが、どうすればいいんだ。
例え写真であろうと、俺に宇佐田を傷付ける事は出来ない。
「岡部君!頑張って!」
その時、宇佐田の声が俺の耳に届く。
俺を見る彼女のその瞳は、心配そうに陰っていた。
その瞬間、彼女との約束――一方的に心の中でした――を思い出す。
そう、俺は負けられないんだ。
彼女に勝利を捧げる為にも。
「はぁ!」
「きゃっ!?」
俺は攻撃を受けた瞬間、その方向に向けてフックを放つ。
拳先に何かが掠る感触。
浅い、ギリギリの所で避けられてしまった様だ。
「俺は……勝つ!」
覚悟は決まった。
次の上田の一撃に、必殺のビームを合わせると決める。
その結果、写真を傷つける事になろうとも。
「いててて、じゃあこういうのはどう?」
上田は姿を消したまま、此方に語り掛けて来る。
だがもはや腹の決まった俺に甘言は――
「もし勝ちを譲ってくれれば、この写真を貴方に上げるわ」
「ぐわぁぁぁ!!」
上田の拳が腹部に突き刺さり、俺は豪快に吹き飛ばされて倒れる。
許してくれ鏡、宇佐田。
宇佐田へ捧げる勝利はまた今度でも可能だが、この写真を手に入れるチャンスは今後二度と巡って来ないかもしれないんだ。
二人の期待を裏切るのは心苦しいが、俺は……俺は…………写真が欲しい!
こうして俺は三回戦敗退する事になる。
代わりに上田からは約束通り、お宝をゲットした。
だが俺は知らない。
委員長が試合の流れを不審がって、途中で宇佐田に超聴力の能力を使って貰っていた事に。
この後、死ぬ程委員長に説教されました。
しかも写真まで取り上げられて踏んだり蹴ったり。
恋愛ってほんと難しいね。
俺は全身にプラーナを満たし、相手の攻撃に備える。
周囲を同時に攻撃するすべのない俺にとって、上田望の透明能力は厄介な物だった。
素早く動き回る見えない相手。
しかも彼女は足音一つ立てないため、全く居場所が把握できない。
そんな相手に攻撃を当てる手段は二つ。
一つは適当にビームをばら撒き、偶然のラッキーパンチを入れる方法だ。
上手く入れば、一気に戦況を持っていく事も出来るだろう。
但しこの戦法は消耗が激しく、相手が本格的に逃げに徹してしまうと、かなり分の悪い賭けになってしまう。
もう一つはカウンターだ。
幸い事前情報で、上田が遠距離攻撃系の能力を持ち合わせていない事は分かっている。
彼女が俺を倒すには、直接攻撃するしか手段はない。
そこにカウンターを合わせるというものだ。
当然俺の選択はラッキーパンチではなく、より堅実なカウンターの方だ。
その為に、まずはプラーナを全身に巡らせ防御を固めた。
プラーナには身体能力向上と、防御能力を高める効果がある。
特に防御能力に関する影響は大きく、パワーAクラスにもなるとミサイルの一撃さえ受け止めると――あくまでも噂の範囲ではあるが――さえ言われている。
まあ俺のパワーはCクラスだが、それでも防御に徹すれば、余程の事がない限り大ダメージを受ける事は無いだろう。
「成程。そう来た訳か……やっかいね」
「!?」
目の前に突然上田が姿を現した。
その思わぬ行動に俺は虚を突かれてしまう。
だが彼女は何かする訳でもなく、その場を動かない。
「ふふ、これが何だかわかる?」
「ばかな!?それは……」
俺の視線は一点に集中する。
上田の制服の袂に。
あ、言っておくけど別に彼女の胸を凝視したわけではないぞ。
そんな価値はないからな、上田のぺたんこの胸には。
俺が凝視したのは、胸元からちらちらと見える写真の方だ。
そこには――
「そう、貴方が入学する前の宇佐田さんの写真よ。水着……しかも超ローアングル」
どうやってとったのかは分からないが、それを前に俺は全身を震わせる。
ちょう……超絶欲しい!
「私は今からこれを盾にするわ。殴れば彼女の写真は皺くちゃになり、ビームを撃てば粉々になっちゃうかもね」
「く……卑怯な……」
「ふふふ、新聞部の情報力は学園一!勝敗は始まる前から決まっていたのよ!」
上田の姿が周囲の景色に溶け込み消える。
俺はそれを、指を咥えて見ているしかなかった。
「がっ!?」
右脇腹に衝撃が走る。
反射的にその方向にビームを撃とうとするが、俺はぐっとそれを抑えた。
そんな真似をしたら、宇佐田――の写真――が粉々になってしまう。
「そらそら!」
「ぐふぅ」
反撃が来ない事を確認した上田は、調子に乗って連打で攻撃してくる。
プラーナを防御に集中させているので、痛みはそれ程でもない。
だがこうも一方的に攻撃され続けては、流石に長くは持ちそうになかった。
何とか手を考えなければ……だが、どうすればいいんだ。
例え写真であろうと、俺に宇佐田を傷付ける事は出来ない。
「岡部君!頑張って!」
その時、宇佐田の声が俺の耳に届く。
俺を見る彼女のその瞳は、心配そうに陰っていた。
その瞬間、彼女との約束――一方的に心の中でした――を思い出す。
そう、俺は負けられないんだ。
彼女に勝利を捧げる為にも。
「はぁ!」
「きゃっ!?」
俺は攻撃を受けた瞬間、その方向に向けてフックを放つ。
拳先に何かが掠る感触。
浅い、ギリギリの所で避けられてしまった様だ。
「俺は……勝つ!」
覚悟は決まった。
次の上田の一撃に、必殺のビームを合わせると決める。
その結果、写真を傷つける事になろうとも。
「いててて、じゃあこういうのはどう?」
上田は姿を消したまま、此方に語り掛けて来る。
だがもはや腹の決まった俺に甘言は――
「もし勝ちを譲ってくれれば、この写真を貴方に上げるわ」
「ぐわぁぁぁ!!」
上田の拳が腹部に突き刺さり、俺は豪快に吹き飛ばされて倒れる。
許してくれ鏡、宇佐田。
宇佐田へ捧げる勝利はまた今度でも可能だが、この写真を手に入れるチャンスは今後二度と巡って来ないかもしれないんだ。
二人の期待を裏切るのは心苦しいが、俺は……俺は…………写真が欲しい!
こうして俺は三回戦敗退する事になる。
代わりに上田からは約束通り、お宝をゲットした。
だが俺は知らない。
委員長が試合の流れを不審がって、途中で宇佐田に超聴力の能力を使って貰っていた事に。
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