学園ランキング最強はチートで無双する~能力はゴミだが、異世界転生で得たチート能力で最強~

榊与一

文字の大きさ
46 / 85
バトルフェスティバル

第45話 vs超重の制圧者

しおりを挟む
対戦相手の登場を待っていると、武舞台上に大きな影が落ちる。
視線を上にやると、上空に巨大な飛行船が停滞しているのが見えた。

「こりゃまたド派手な登場だな」

飛行船の底がスライドして丸く開き、そこからゴンドラがせり出して来る。
そこには漆黒のバトルドレスを身にまとった、荒木真央の姿があった。

底面に設置されている色とりどりの強烈なサーチライトが上空を飛び交い、やがて飛行船の落とす陰で暗くなった武舞台の一点に強い光が集約されていく。
奴は俺と目が合うと、口の端を“ニィ”っと吊り上げ、そこへ向かってゴンドラから飛び降りた。

「待たせたの」

30メートル程の高さから、ふわりと風を纏い、音もなく荒木真央が降り立つ。
恐らく彼女の持つ能力ギフト、重力操作の力をつかったのだろう。
荒木が頭上で指を鳴らすとサーチライトの光が消え、飛行船が飛び去っていく。

「デートで良い女を待つのも、男の甲斐性さ」

まあデートなんて物は、生まれてこのかた一度たりともした事は無い訳だが。
こんな軽口じゃなく、本当のデートで一度は言ってみたい物だ。

「そうか?では待たせた分、存分に楽しませてやろうではないか」

「嬉しい事言ってくれるじゃないか」

荒木真央の全身からプラーナが溢れ出し、その眼が赤く輝く。
単純なプラーナの量でいうなら、今まで戦ってきた相手の中では薬を決めた四条が頭一つ抜けていた。
だが彼女の纏うプラーナの量はその四条の倍、下手をしたら3倍近くある。
正に桁違いだ。

「そう言えば、妾を倒せば答えを聞かせてやる約束だったのう」

「ああ。お前さんが何者なのか、きっちり聞かせて貰うぜ」

「よくよく考えれば、それは条件としてはきつ過ぎたの。少し緩和してやろう。もし妾に一発入れる事が出来れば、その時答えを教えてやろう」

随分と舐められたもんだ。
まあそれだけ自分の強さに絶対的な自信があると言う事だろう。
実際、今のままでは勝ち目は限りなく0に近い。

「そいつは大サービスだな。だが不要だ。お前を倒せばいいだけの話なんだからな」

「ふむ、そうか。なら精々頑張るがよい」

軽く息を吐き、全身にプラーナを巡らせ半身に構える。
まあこの状態でどこまでやれるか分からないが、まずは先制攻撃といこう。

「では、始めるとしようか」

荒木真央が手を上げる。
それを合図に、試合開始のアナウンスが流れた。

「いくぜ!」

真っすぐに奴へと突っ込む。
遠距離攻撃を警戒していたが、驚くほどあっさりと俺と奴との間合いが詰まる。
どうやら接近戦に付き合ってくれる様だ。

「はっ!」

腕を組み、余裕の微笑みを浮かべる奴の顔面に全力の拳を突きこんだ。
だがそれは皮一枚、まるで頬を滑らせるかの様に悠々と躱されてしまう。

その最小限の動きによる完璧な回避に少し驚くが、俺は気にせず攻撃を続ける。

フェイントを織り交ぜ、蹴りを出し、肘を打ち込む。
だがそれら一連の攻撃は、すべてが紙一重で躱されてしまう。
まるで此方の攻撃が全て見切られているかの様だ。

「ほれ」

「くっ」

それまで受けに専念していた荒木真央が蹴りを繰り出す。
体が小さいためリーチはないが、それはとてつもなく重く鋭い一撃だ。
咄嗟に片手で受け止めたが、威力を殺しきれずに俺は大きく吹き飛ばされてしまう。

「ったく、ガキの放つ蹴りじゃねぇぞ」

「おや、少し強く蹴り過ぎたかのう。何だったら、もう少し手加減してやっても良いぞ?」

「気持ちだけ貰っておくよ」

再び突撃し、攻撃を仕掛ける。
荒木真央はスウェーでギリギリ躱そうとする――だがその頬に、俺の拳がヒットして奴は吹き飛んだ。

「ぐっ!?貴様」

空中で旋回し、着地した彼女は鋭い視線で俺を睨み付ける。
完全に入ってはいないのでダメージ自体はそれ程大した事はないが、躱したと思った攻撃が当たったのだ。
精神的ダメージは大きいだろう。

再び間合いを詰め、連撃を仕掛ける。
躱す荒木真央に、先程迄の余裕はない。

実際、クリーンヒットではないが何発かは攻撃が入っていく。

「鬱陶しい!!」

荒木は声を荒げ、その手を大きく振る。
すると眼には見えない何かが大量に生まれ、散弾の様に四方八方へとばら撒かれた。
恐らく重力系の力だろう。

俺は咄嗟に後ろに飛んでそれを躱す。

「追尾か」

放たれた攻撃は軌道を変え、取り囲む様に此方へと殺到してきた。

 「躱しきるのは無理そうだな。しゃーない」

俺は両手を広げ、闘気を全身から放ち迎撃する。
闘気とぶつかったそれは、ボボボンと爆発音を残して全て消え去った。

「ふん、手足を伸ばすか。小賢しい技を使いおる」

どうやら、早々にタネに気付かれてしまった様だ。
俺は先程から、千堂先生が使っていた関節を外す技を使っていた。
この日の為に用意した手の一つだ。

そういや、千堂先生にご褒美のチュー(ほっぺ)をまだ貰っていないな。
この試合が終わったら催促してみるかな。

その時、何故だか脳裏に怖い目つきをした友人達の顔が浮かんだ。
特に彼女達に文句を言われる筋合いはないのだが、無性に嫌な予感がするのでやっぱりやめておく事にする。

「悪いが、お主の戦いに付き合うのもここまでじゃ。そろそろ此方も本気で行かせて貰うとするかの」

荒木真央が手を広げると、再び力がばら撒かれる。
だが先程の物とは次元が違う。
それは光を歪め、その存在をハッキリと俺の瞳に映す程に強力な物だった。

しかもその数は、際限なく増え続けていく。

「当たると痛そうだな」

先程と同じ要領でその全てを消し飛ばすのは難しいだろう。
残念ながら、そこまでの闘気は天地がひっくり返っても捻り出せそうにない。

「痛いで済めばいいがの」

荒木真央が目元を歪め、楽し気に微笑む。
それは虫を無慈悲に蹂躙する、子供の残酷さを思わせる眼差しだ。

「では行くぞ」

荒木真央が両手を此方へと向ける。
と、同時に無数の重力弾が俺に襲い掛かって来た。

その余りにも容赦のない数に、俺は思わず苦笑いする。

「ま、やるしかないか!」

全身から闘気を放ち、その第一陣を退ける。
だが直ぐに第二陣が飛んできた。
俺は拳を闘気でガードし、飛んでくる重力弾を拳のラッシュで迎撃する。

「ぐっ!?」

だが全てを捌き切る事は出来ず、何発かがヒットしてしまう。
その度に俺の体に激痛が走った。

「おおおおおおおおお!!!」

だがそんな物に構っている暇などない。
俺は痛みに怯む事無く、ひたすら飛来する攻撃を拳で迎撃し続けた。

殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って。

そして――

「はぁ、はぁ……へっ!どうだ!!」

俺は吠えた。

かなりギリギリの感じだったが、なんとか攻撃を捌き切れた様だ。

だが直ぐに気づく。

気付いてしまう。

今の攻撃が、只の牽制けんせいでしかなかった事に。

「――っ!?マジかよ……」

いつの間にか荒木真央は空高くに飛翔していた。
彼女はその右手を天に向かって高々と掲げおり、その頭上には巨大な黒い球体が浮かんでいる。
それは頭上から光を屈折させ、会場全体に影を落としていた。

「こいつは……」

その巨大さは武舞台全体をカバーするレベルだ。
そのため逃げ場はない。
もし範囲外に逃げれば、自動的に場外負けになってしまうだろう。

だがこの攻撃をそのまま受ければ――多分俺は死ぬ。
普通に考えれば逃げるのが正解だろう。

だが俺は逃げない。

「どうした?逃げぬのか?」

「へっ、必要ねぇさ」

口の端を歪めて不敵に笑う。
流石の荒木真央も、これを放てばプラーナがごっそり持っていかれるだろう。
ならば、これを凌ぎきれば優位に立ち回れる筈だ。

そう、これはピンチであると同時にチャンスでもあるのだ。

「ほう?受ければ死ぬぞ?それが分からぬほど愚かではあるまい?」

俺はその言葉には応えず、黙って拳を武舞台に叩きつけた。
砕けた武舞台は、粉塵となって俺の周囲を包みこむ。

「俺が勝つ」

死ぬ気もなければ負ける気も無い。
俺は勝つために――奥の手を使う。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...