ブラック労働死した俺は転生先でスローライフを望む~だが幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~黒

榊与一

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第44話 ボス

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「ホーリーバリアー!」

タロイモが盾に着いた二つ目の効果を発動させ、淡い光が大きく展開される。

ホーリーバリアー。
自身を中心に、半径10メートル程の聖なるフィールドを展開させるスキルだ。
その効果は範囲内の自分と味方の状態異常を完全に無効化するという物。

クラススキルにはない錬成固有の物で、効果時間は10分。
再使用までの時間は1時間となっている。

更にナイト系が装備している場合は効果時間が3倍になり、ディレイも半減する。
しかも使用中、1度だけ自身のHPを全快するスキルも使用できるおまけつき。
つまりタロイモなら常時展開しつつ、30分に1回のペースで全回復出来るという訳だ。

かなり強烈な、大当たりに分類される効果オプションと言って間違いないだろう。
自分が使わない物に限って、こういうのがあっさり付くから困る。

「「「パワースラッシュ!」」」

3人が連携で魔物を始末する。
今回の相手は、ヒュドラと言う多頭の蛇だ。

広範囲に強力な毒をばら撒く奴で、喰らうと危険って事で、今までは毒無効のアクセサリーを付けていた――1個しかない――俺だけが相手をしていたのだが、ホーリーフィールドでその毒を無効化できる様になったため、タロイモ達も問題なくこいつと戦える様になっている。

「いやー、毒に気を付けて遠くに離れてた昨日までが嘘みたいですよ」

「ふふふ、本当ですね」

周囲からの評価は上々である。
まあエフェクトは派手だし、今戦っている魔物にぶっ刺さっているので、当然と言えば当然か。

「師匠!どうか一つ、私達のも超すごいのお願いします」

兄が羨ましいのか。ベニイモが厚かましいお願いをして来る。
勿論本気で言っている訳ではなく、冗談だろうとは思うが。

「まあそのうちな」

「本当ですかぁ。約束ですよ!」

「分かった分かった。じゃあ先に進むぞ」

「はい!」

――魔物を狩り。

――レベルを上げて素材も収集。

――そんな生活が2週間ほど続いた頃、俺達は広い空間へと辿り着く。

「絶対……何かあるよな」

巨大な円形の空間。
その中央には、青い巨大な球状の物体が浮いていた。
遠目からでははっきりしないが、その陰影から中に何かが入っている様に見える。

これがゲームなら間違いなくボス部屋なのだが、察知は特に反応なしだ。

まあこれは敵意や殺意に反応する物だからな。
相手がまだ此方を敵と認識していないだけの可能性も考えられるが。

「お前達はちょっと待っててくれ。中に入ってまずは俺が確認してくる」

どういう状況になるか分からないので、ベニイモ達には空間の外――通路で待っていてもらう。
何が起きても、俺一人ならどうにでもなるからな。

「分かりました。気を付けてください」

「分かってるって」

俺は慎重に中央の玉へと近づく。
するとあと10メートルという距離まで近づいた所で、球が薄っすらと光り出した。

察知は反応していない。
まあ敵意がないだけで攻撃してこないとは限らないので、俺は警戒しつつも、ゆっくりと玉へと近づく。

「老人……」

ある程度近づくと、中に入っている物がハッキリと確認できた。
長い白髭を生やした、ローブを身に纏った老人だ。
目を瞑るその姿は、まるで中で眠っている様にも見える。

まあ普通に考えれば、生きてる訳はないと思うのだが……

「――っ!?」

その時、老人の目が急に見開かれた。
予想外の事に驚きつつも、俺は足を止め、戦闘態勢に入る。

「待っていた」

突如、老人の声が周囲に響く。
青い球の中の老人の口元は動いていない。
だが、タイミング的にそいつが語り掛けて来た事は疑いようがなかった。

どうやって声を出しているのかは不明だな。
まあそんな事より……

「あんた……何者だ?」

「ずっと、待っていた。神より使命を受け。賢者の石を生み出し。この遺跡を作り出し。ずっと……だが、それもここで終わる」

俺の言葉は聞こえていないのだろうか?
老人は此方の問いには答えず、うわ言の様に言葉を紡ぐ。

正直、言ってる事は意味不明な物が多い。
だがただ一つ、ハッキリした事がある。
それは、こいつがこの遺跡ダンジョンを生み出したという者だという事だ。

となると……古代文明人の生き残りって事になるな。

どうやってかは知らないが、この老人は相当長い時間を生き続けていた様だ。
こちらの問いかけに答えないのは、長く行き過ぎたせいでボケてしまったからなのかもしれない。

「さあ、今こそ神の使命を果たす時。お前がこの世界の黒き柱たる――新たな神に相応しいか……その試練を乗り越え、我の生み出した賢者の石を受け入れて見せよ」

「――っ!?」

老人が球の中で、両手を大きく開げる。
その瞬間、強力な光が閃光となって爆発した。
俺はその眩しさに顔を背け、目を強く瞑る。

「……ボスはスライムか」

閃光が収まると古代人の入っていた球は消えており、代わりに目の前には巨大な青いスライムが姿を現していた。
俺はその場から飛び退り、間合いを開いてから後方を確認する。

「閉じてやがる」

通路への出入り口は、全て塞がってしまっていた。
どうやら完全に閉じ込められてしまった様だ。

スキルで察知できなかったのは、スキルの発動を阻害する何かがあったか。
単に扉の開閉だけだからトラップと判断されかったのか。
そのどちらかだろうと思われる。

「まあこいつを倒せば開くだろう」

倒して開かない可能性はあるが、その時はぶち破ってやればいい。
兎に角、今は目の前のスライムに集中するとしよう。
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