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第55話 一回戦
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「流石に、前回準優勝者だけはあるな」
予選は問題なく、全員通過している。
現在は、本選一回戦目中だ。
その様子を俺は選手席からベニイモ達と眺めていた。
対戦カードは、エンデ対前回準優勝者のガロスだ。
エンデはエリクシル化した事で、大幅に能力が増している。
さらに、それ以前には取れなかった最上級クラスのスキルも取得できる様になっており、そのレベルも89まで上がっていた。
ハッキリ言って、今の彼女はかなり強い。
実際ガロス相手に優勢な戦いを見せていた。
但し――それは相手が獣化するまでの話ではあるが。
獣化。
それは獣人という種族がもつ、固有の能力だ。
肉体がより獣に近くなり――映画などの狼男の様な感じ――その身体能力が大幅に上昇する。
「エンデさん頑張れー!」
ベニイモが大声で応援するが、残念ながらもう勝負はほぼついた状態だ。
獣化したガロスは身体能力が大幅にあがる。
それに対してエンデは身体強化スキルの、オーガパワーを発動させて対抗してみせた。
だがその継続時間は獣化と違って30秒と短い。
効果は既に切れており、ガロスの攻撃に対してもはや彼女は防戦一方の形となっていた。
勝敗はじきにつくだろう。
「あぁ!?」
ガロスの拳を真面に受け、エンデが吹き飛ばされてしまう。
彼女は何とか起き上がるが、最早フラフラで真面に動けない状態だ。
そこに容赦なくガロスが突っ込む。
ここで追撃を喰らえば、勝負ありである。
「くぅぅ……まだよ!パワースラッシュ!」
「――っ!?」
ボロボロになりながらも、まだエンデは勝利を諦めていなかった。
ガロスの蹴りに合わせた渾身のカウンターが放たれる。
ナイスガッツだ。
この一撃が決まれば、逆転の芽も出て来るかもしれない。
まあ決まれば、だが――
最後の反撃が来る事を確信していたのだろう。
ガロスはエンデの攻撃を完全に見切る形で、カウンターを綺麗に回避する。
普通トドメの瞬間ってのは、油断しやすい物だ。
だが彼にはそれが一切無かった。
――獅子は兎を狩るにも全力を尽くす。
いくら相手が弱り切っていようとも全くスキを見せない姿は、正にその諺に通じるものがある。
流石獣人と言った所か。
「今度こそ、本当に勝負ありだ」
もうエンデに剣を振るう力は残っていない。
彼女は無防備な腹部にガロスの拳を叩き込まれ、その場に崩れ落ちてしまう。
「あー、負けちゃいましたねぇ」
「よく頑張ったよ。エンデは」
途中で負けはほぼ確定していた。
それは彼女自身、良く分かっていただろう。
それでも諦めず最後の最後まで勝利を求めるその姿勢は、称賛に値すると言っていい。
「初戦から素晴らしい戦いを繰り広げた両選手に拍手を!」
場内アナウンスが流れ、客席から惜しみない拍手が武舞台へと注がれる。
そんな中、気絶したエンデが担架で運ばれていく。
気絶こそしてはいるが、まあ大きな怪我はしていない様なので心配はいらないだろう。
「エンデの仇は俺が討つ」
本選第二試合は、タロイモの出番だ。
これに勝てば、次の2回戦第一試合はガロスと当たる事になる。
「ちゃんと目の前の敵に集中しろよ」
今のタロイモが早々簡単に負けるとは思わないが、一応師匠としてそれらしい事は言っておいた。
「あの程度の相手、気にする必要はないです」
「今日の相手、騎士学校時代の教官なんですよ。私達は学生時代に勝ってますから大丈夫ですよ、師匠」
「あ、そうなんだ」
タロイモの対戦相手は、彼らの学生時代の教官らしい。
しかしその割に、本選開会式の場でお互い挨拶一つしてなかったが……
ひょっとして仲が悪かったのだろうか?
「あの人、エブスを贔屓してましたから」
「ああ、成程」
俺の疑問を察したのか、ベニイモが説明してくれる。
まあそりゃそんな相手じゃ、挨拶なんかせんわな。
「じゃあ行ってきます」
タロイモが武舞台に上がる。
「確かに、警戒する様なレベルの相手じゃなかったな」
試合は一方的な形で終わる。
防御寄りのクラスであるタロイモが、一方的に相手を打ちのめして試合終了だ。
第一試合と違って、完全に見どころ無しである。
その後、俺もベニイモも順調に一回戦を突破。
一回戦最後はシードであるゾーン・バルターの試合だったが、対戦相手が事前に棄権していた為、彼の戦い振りを見る事は出来なかった。
彼は一応、警戒するべき相手なので試合を見たかったのだが……
まあしょうがないか。
予選は問題なく、全員通過している。
現在は、本選一回戦目中だ。
その様子を俺は選手席からベニイモ達と眺めていた。
対戦カードは、エンデ対前回準優勝者のガロスだ。
エンデはエリクシル化した事で、大幅に能力が増している。
さらに、それ以前には取れなかった最上級クラスのスキルも取得できる様になっており、そのレベルも89まで上がっていた。
ハッキリ言って、今の彼女はかなり強い。
実際ガロス相手に優勢な戦いを見せていた。
但し――それは相手が獣化するまでの話ではあるが。
獣化。
それは獣人という種族がもつ、固有の能力だ。
肉体がより獣に近くなり――映画などの狼男の様な感じ――その身体能力が大幅に上昇する。
「エンデさん頑張れー!」
ベニイモが大声で応援するが、残念ながらもう勝負はほぼついた状態だ。
獣化したガロスは身体能力が大幅にあがる。
それに対してエンデは身体強化スキルの、オーガパワーを発動させて対抗してみせた。
だがその継続時間は獣化と違って30秒と短い。
効果は既に切れており、ガロスの攻撃に対してもはや彼女は防戦一方の形となっていた。
勝敗はじきにつくだろう。
「あぁ!?」
ガロスの拳を真面に受け、エンデが吹き飛ばされてしまう。
彼女は何とか起き上がるが、最早フラフラで真面に動けない状態だ。
そこに容赦なくガロスが突っ込む。
ここで追撃を喰らえば、勝負ありである。
「くぅぅ……まだよ!パワースラッシュ!」
「――っ!?」
ボロボロになりながらも、まだエンデは勝利を諦めていなかった。
ガロスの蹴りに合わせた渾身のカウンターが放たれる。
ナイスガッツだ。
この一撃が決まれば、逆転の芽も出て来るかもしれない。
まあ決まれば、だが――
最後の反撃が来る事を確信していたのだろう。
ガロスはエンデの攻撃を完全に見切る形で、カウンターを綺麗に回避する。
普通トドメの瞬間ってのは、油断しやすい物だ。
だが彼にはそれが一切無かった。
――獅子は兎を狩るにも全力を尽くす。
いくら相手が弱り切っていようとも全くスキを見せない姿は、正にその諺に通じるものがある。
流石獣人と言った所か。
「今度こそ、本当に勝負ありだ」
もうエンデに剣を振るう力は残っていない。
彼女は無防備な腹部にガロスの拳を叩き込まれ、その場に崩れ落ちてしまう。
「あー、負けちゃいましたねぇ」
「よく頑張ったよ。エンデは」
途中で負けはほぼ確定していた。
それは彼女自身、良く分かっていただろう。
それでも諦めず最後の最後まで勝利を求めるその姿勢は、称賛に値すると言っていい。
「初戦から素晴らしい戦いを繰り広げた両選手に拍手を!」
場内アナウンスが流れ、客席から惜しみない拍手が武舞台へと注がれる。
そんな中、気絶したエンデが担架で運ばれていく。
気絶こそしてはいるが、まあ大きな怪我はしていない様なので心配はいらないだろう。
「エンデの仇は俺が討つ」
本選第二試合は、タロイモの出番だ。
これに勝てば、次の2回戦第一試合はガロスと当たる事になる。
「ちゃんと目の前の敵に集中しろよ」
今のタロイモが早々簡単に負けるとは思わないが、一応師匠としてそれらしい事は言っておいた。
「あの程度の相手、気にする必要はないです」
「今日の相手、騎士学校時代の教官なんですよ。私達は学生時代に勝ってますから大丈夫ですよ、師匠」
「あ、そうなんだ」
タロイモの対戦相手は、彼らの学生時代の教官らしい。
しかしその割に、本選開会式の場でお互い挨拶一つしてなかったが……
ひょっとして仲が悪かったのだろうか?
「あの人、エブスを贔屓してましたから」
「ああ、成程」
俺の疑問を察したのか、ベニイモが説明してくれる。
まあそりゃそんな相手じゃ、挨拶なんかせんわな。
「じゃあ行ってきます」
タロイモが武舞台に上がる。
「確かに、警戒する様なレベルの相手じゃなかったな」
試合は一方的な形で終わる。
防御寄りのクラスであるタロイモが、一方的に相手を打ちのめして試合終了だ。
第一試合と違って、完全に見どころ無しである。
その後、俺もベニイモも順調に一回戦を突破。
一回戦最後はシードであるゾーン・バルターの試合だったが、対戦相手が事前に棄権していた為、彼の戦い振りを見る事は出来なかった。
彼は一応、警戒するべき相手なので試合を見たかったのだが……
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