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第27話 信頼
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屋敷を出て村までは15分ほど。
以前は片道30分ぐらいかかっていた訳だが、敏捷性が上がって体が軽くなったお陰で、今では半分程度の時間で村まで辿り着けるようになっていた。
――俺は立派になった村の門を潜る。
村の様子は以前とは激変していた。
俺が大量に入ったポイントを使い、Dプラスまでランクアップさせたからだ。
なので、ちょっとした地震が来ただけで崩れそうだったボロイ木造の家々は、新築とまでは言わないが、今やある程度しっかりした物へと生まれ変わっている。
因みにCランクまで上げていないのは、追加で2万ポイントも必要だったからだ。
まあ別に上げてもよかったのだが、Dの時点である程度しっかりした物になったので、節約のため止めておいた。
無軌道に際限なく使っていたら、流石に20万ポイント以上あってもすぐに使い切ってしまいかねないからな。
「おお、領主様ようこそいらっしゃいました」
村長が俺を出迎えてくれる。
「体の調子はどうだ?」
「ほっほっほ、見ての通り絶好調です。これも領主様が私の体力を上げてくださったお陰です」
魔物討伐後、俺は希望者にはランクアップを施していた。
痛みがあるのは周知の事実だったが、耐えさえすれば色々と便利に動けるって事で、それならと希望者が殺到したためだ。
特に老人連中の。
で、まあ村長を含めた老人連中の体力を上げた所、みんな驚くほど元気に動けるようになったという訳である。
人間を支えているのは体力だといういい例だろう。
ま、俺の体力はこれ以上上げるつもりは更々ないけど。
力仕事する訳でもなし。
なのでD-もあれば充分だ。
「そりゃよかった」
「お茶をお出ししますので、どうか我が家にお越しください」
「そうか?じゃ、遠慮なくいただくよ」
村長に連れられ、彼の家へと向かう。
「領主様、いらっしゃいませ」
「領主様ー」
村の人間が俺に気づき声をかけて来る。
気分はちょっとした芸能人だ。
現在、俺のクエスト【村人の信頼を勝ち取れ!】はかなり進んでいた。
畑や水の復旧。
村が滅んでもおかしくない様な魔物の襲来を撃退。
それに加え老人連中の体力増進。
更に、村自体のランクアップ。
流石にここまでやったら信頼はうなぎ登りである。
なので現在、119人いる村人達の信頼は118人まで獲得できていた。
残すは一人だけ。
そう、俺の護衛であるタゴルだけだ。
はぁ、まったく……なんで村人唯一の使徒であるタゴルが、俺の足を引っ張るんだ?
普通は逆で、使徒が率先して村人を懐柔したりするもんだろうに。
なんでお前が最後まで頑なに俺を信用しないんだよ。
ま、ぼやいても仕方ない事だが。
「なんです?」
「なんでもない」
タゴルの方に目をやると、不機嫌そうな視線が帰って来た。
このクエストの達成は難しそうである。
仲良くなれるビジョンが全く浮かんでこない。
「ささ、粗末なお茶ですがどうぞ」
「のどが渇いてたんだ。ありがとう」
村長宅につき、奥さんから出されたお茶を口にする。
別にこれは社交辞令ではなく、相変わらずくそ熱いし歩いて来たのでのどが渇いてたというのは本当の話だ。
因みにお茶は、出涸らしに近い物を無理やり煮出した様な果てしなくうっすいの香りと味だった。
普通なら領主になんてもの出すんだって所ではあるが、この村は超が付くほど貧しいので、これでも最大限のおもてなしだったりする。
やっぱ物資は必要だよな……
食料についてはバラックボアの肉が大量に手に入り、それをカッパーの水魔法で凍らせて保存しているので暫くは問題ない。
とは言えそれもいつまでも持つものではなく、それ以外の物も、というか何もかも足りていないというのが現状だ。
金を作って、隣の領にでも買い出しに行くべきか……
黒鋼の武器はそこそこの値段で売れるはず。
10本も売れば、とりあえず村に必要な物資を買い集める事は出来るだろう。
因みに、売る場合は自我を持った武器ではなく普通の物として売る予定だ。
二本目以降は自我を持ってはいても、ナタンやユミルの様にはっきりしたものではないため意思疎通は出来ず――タゴル達側から通信機の子機の様に、メッセージのやり取りは出来るらしいが。
しかも力を引き出せるのは資格を得た一部の人間だけなので、武器の有用性を証明するがかなり難しい。
なので、普通の武器として売るしかないのだ。
まあちょっともったいない気もするが、一本当たりのポイントは1,000未満と高くないからな。
それに自我を持った特殊な武器を大量に売りだしなんてしたら、悪目立ちしてしまう。
まあ能力を認めさせ、有名になって王家に返り咲こうってんならそれもありなんだろうが、今のところ俺にその気はない。
何故なら……戻っても死ぬほど気まずいだけだから。
さんざん馬鹿な事やって、挙句に兄の婚約者に横恋慕して体当たりで大怪我を負わせてる訳だからな。
どの面下げて戻るんだって話である。
生き恥もいいところだ。
まあ100万ポイントを諦めるのは少々惜しくはあるのだが、嫌なストレスためてまで王家に戻るより、このまま男爵として生きていこうと俺は考えていた。
「村長。村で足りない物、あったらうれしい物なんかをリストアップしておいてくれないか?」
「足りない物ですか?」
「ああ。黒鋼の武器を量産して売り飛ばして、その金で村に必要な物資を買って来るよ」
「なんと……これまでも色々と良くして頂いていると言いうのに……領主様には感謝の言葉しかございません」
村長夫婦が揃って恭しく俺に頭を下げた。
「領民に最低限の生活を保障するのも領主の仕事だ。気にしなくていい」
「さっすがエドワード様!まさに出来る領主様って感じですね!」
終始むっつりしているタゴルと違い、アリンは結構軽い性格をしていたりする。
まあまだ14歳だからというのもあるだろうが、タゴルにもこのフレンドリーさを少しは見習ってほしい物だ。
「ああ、それほどでもないさ」
タゴルを見るとしかめっ面をしていた。
彼はシスコンらしく、妹が他の男を褒めるのを嫌う。
その証拠に、その信頼度を確認してみると数字が7%から6%に下がっていた。
いい事をしても上がらず。
その事で妹が俺を褒めたら下がるとか……
絶対無理だろ、こいつの信頼勝ち取るのって。
以前は片道30分ぐらいかかっていた訳だが、敏捷性が上がって体が軽くなったお陰で、今では半分程度の時間で村まで辿り着けるようになっていた。
――俺は立派になった村の門を潜る。
村の様子は以前とは激変していた。
俺が大量に入ったポイントを使い、Dプラスまでランクアップさせたからだ。
なので、ちょっとした地震が来ただけで崩れそうだったボロイ木造の家々は、新築とまでは言わないが、今やある程度しっかりした物へと生まれ変わっている。
因みにCランクまで上げていないのは、追加で2万ポイントも必要だったからだ。
まあ別に上げてもよかったのだが、Dの時点である程度しっかりした物になったので、節約のため止めておいた。
無軌道に際限なく使っていたら、流石に20万ポイント以上あってもすぐに使い切ってしまいかねないからな。
「おお、領主様ようこそいらっしゃいました」
村長が俺を出迎えてくれる。
「体の調子はどうだ?」
「ほっほっほ、見ての通り絶好調です。これも領主様が私の体力を上げてくださったお陰です」
魔物討伐後、俺は希望者にはランクアップを施していた。
痛みがあるのは周知の事実だったが、耐えさえすれば色々と便利に動けるって事で、それならと希望者が殺到したためだ。
特に老人連中の。
で、まあ村長を含めた老人連中の体力を上げた所、みんな驚くほど元気に動けるようになったという訳である。
人間を支えているのは体力だといういい例だろう。
ま、俺の体力はこれ以上上げるつもりは更々ないけど。
力仕事する訳でもなし。
なのでD-もあれば充分だ。
「そりゃよかった」
「お茶をお出ししますので、どうか我が家にお越しください」
「そうか?じゃ、遠慮なくいただくよ」
村長に連れられ、彼の家へと向かう。
「領主様、いらっしゃいませ」
「領主様ー」
村の人間が俺に気づき声をかけて来る。
気分はちょっとした芸能人だ。
現在、俺のクエスト【村人の信頼を勝ち取れ!】はかなり進んでいた。
畑や水の復旧。
村が滅んでもおかしくない様な魔物の襲来を撃退。
それに加え老人連中の体力増進。
更に、村自体のランクアップ。
流石にここまでやったら信頼はうなぎ登りである。
なので現在、119人いる村人達の信頼は118人まで獲得できていた。
残すは一人だけ。
そう、俺の護衛であるタゴルだけだ。
はぁ、まったく……なんで村人唯一の使徒であるタゴルが、俺の足を引っ張るんだ?
普通は逆で、使徒が率先して村人を懐柔したりするもんだろうに。
なんでお前が最後まで頑なに俺を信用しないんだよ。
ま、ぼやいても仕方ない事だが。
「なんです?」
「なんでもない」
タゴルの方に目をやると、不機嫌そうな視線が帰って来た。
このクエストの達成は難しそうである。
仲良くなれるビジョンが全く浮かんでこない。
「ささ、粗末なお茶ですがどうぞ」
「のどが渇いてたんだ。ありがとう」
村長宅につき、奥さんから出されたお茶を口にする。
別にこれは社交辞令ではなく、相変わらずくそ熱いし歩いて来たのでのどが渇いてたというのは本当の話だ。
因みにお茶は、出涸らしに近い物を無理やり煮出した様な果てしなくうっすいの香りと味だった。
普通なら領主になんてもの出すんだって所ではあるが、この村は超が付くほど貧しいので、これでも最大限のおもてなしだったりする。
やっぱ物資は必要だよな……
食料についてはバラックボアの肉が大量に手に入り、それをカッパーの水魔法で凍らせて保存しているので暫くは問題ない。
とは言えそれもいつまでも持つものではなく、それ以外の物も、というか何もかも足りていないというのが現状だ。
金を作って、隣の領にでも買い出しに行くべきか……
黒鋼の武器はそこそこの値段で売れるはず。
10本も売れば、とりあえず村に必要な物資を買い集める事は出来るだろう。
因みに、売る場合は自我を持った武器ではなく普通の物として売る予定だ。
二本目以降は自我を持ってはいても、ナタンやユミルの様にはっきりしたものではないため意思疎通は出来ず――タゴル達側から通信機の子機の様に、メッセージのやり取りは出来るらしいが。
しかも力を引き出せるのは資格を得た一部の人間だけなので、武器の有用性を証明するがかなり難しい。
なので、普通の武器として売るしかないのだ。
まあちょっともったいない気もするが、一本当たりのポイントは1,000未満と高くないからな。
それに自我を持った特殊な武器を大量に売りだしなんてしたら、悪目立ちしてしまう。
まあ能力を認めさせ、有名になって王家に返り咲こうってんならそれもありなんだろうが、今のところ俺にその気はない。
何故なら……戻っても死ぬほど気まずいだけだから。
さんざん馬鹿な事やって、挙句に兄の婚約者に横恋慕して体当たりで大怪我を負わせてる訳だからな。
どの面下げて戻るんだって話である。
生き恥もいいところだ。
まあ100万ポイントを諦めるのは少々惜しくはあるのだが、嫌なストレスためてまで王家に戻るより、このまま男爵として生きていこうと俺は考えていた。
「村長。村で足りない物、あったらうれしい物なんかをリストアップしておいてくれないか?」
「足りない物ですか?」
「ああ。黒鋼の武器を量産して売り飛ばして、その金で村に必要な物資を買って来るよ」
「なんと……これまでも色々と良くして頂いていると言いうのに……領主様には感謝の言葉しかございません」
村長夫婦が揃って恭しく俺に頭を下げた。
「領民に最低限の生活を保障するのも領主の仕事だ。気にしなくていい」
「さっすがエドワード様!まさに出来る領主様って感じですね!」
終始むっつりしているタゴルと違い、アリンは結構軽い性格をしていたりする。
まあまだ14歳だからというのもあるだろうが、タゴルにもこのフレンドリーさを少しは見習ってほしい物だ。
「ああ、それほどでもないさ」
タゴルを見るとしかめっ面をしていた。
彼はシスコンらしく、妹が他の男を褒めるのを嫌う。
その証拠に、その信頼度を確認してみると数字が7%から6%に下がっていた。
いい事をしても上がらず。
その事で妹が俺を褒めたら下がるとか……
絶対無理だろ、こいつの信頼勝ち取るのって。
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