素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す~神様から貰ったランクアップで楽々領地経営~

榊与一

文字の大きさ
39 / 158

第38話 駄々っ子

しおりを挟む
「嘘だ!そんなはずがない!」

馬車の前でカンカンが叫ぶ。
急に大声で叫んだりして、いったい何があったのだろうか?

「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!父や母が俺を見捨てるだなんて事ある物か!!」

「父や母が見捨てた?」

カンカンの言葉に、俺は眉根を寄せる。

「俺はこの領地の主、エドワード・スパムだ。これはいったい何事だ?」

近付いて声をかけると、御者達が恭しく頭を下げた。

「スパム男爵様。私が知らされているのは、オルブス商会の支店をこの村に作るという話がなくなったという点だけです。詳しくはお屋敷の方に使いの方がいらっしゃいますので」

支店を出さない。
つまり、雑貨店を出さないという事か。
そうなると必然的に、カンカンの世話役はこの村に留まれない訳だが……

「うそだうそだうそだぁ!!」

カンカンが駄々っ子の様に地面に転がって手足をバタつかせる。
ショックなのは分からなくもないが、いくらなんでも精神年齢低すぎだろ。
こいつ。

「うそだうそだうそだうそだ――うっ!?」

地面に寝転がってバタバタ暴れるカンカンを、タゴルが素早く締め落とす。
正直、鬱陶しかったので助かる。

「ちょっとお兄ちゃん!いくら何でも可愛そうでしょ!」

「お、俺じゃねーよ。体が勝手に……おいナタン!勝手に人の体を動かすな!」

『神の前であまりにも見苦しかったのでな』

ずいぶん気が利いてるなと思ったら、どうやらやったのはナタンの様である。

しかし解せないな……

世話のための雑貨屋を用意しないという事は、カンカンを見捨てたに等しい――だから彼もあれだけ見苦しく暴れたのだ。
だが、オルブスは既に結構な額を俺に支払っている。
見捨てる気だったなら、処刑を止める為に金を支払う必要はなかったはず。

ふーむ……親心として、命だけは守ってやりたかったという事かな?

カンカンの処刑の撤回に、雑貨屋の出店は含まれていない。
なので、それが撤回されたからと言って、じゃあ処刑しますねと脅す事は出来ないのだ。
雑貨店はあくまでも、カンカンの補助を認める為の条件でしかないから。

けどブンブンの様子からは、そういうのは一切感じなかったんだがなぁ……

俺には彼が息子の事を本気で心配している様にしか見えなかった。
あれが演技だったというのなら、流石商売人としか言いようがない。

その場で雑貨店を断らなかったのは、それを断る事で、処刑の撤回条件に追加を入れられるかもしれないと考慮してって所か……

「屋敷に使いの者が来てるんだな?」

「はい。男爵様の屋敷でお待ちして――実は、やってきているのは奥方様でして。男爵様と折り入ってお話したい事があるとの事です」

御者の男が一旦言葉を区切り、ちらりと気絶したカンカンを見てから俺に奥様が来ていると告げる。

「奥様?」

奥方様ってのは、まあ当然ブンブンの嫁さんの事だろうと思われる。
つまりカンカンの母親だな。
まさかカンカンの嫁って事はないだろう。

……謎だな。

これからカンカンを見捨てようって時に、何故母親が態々やってきたのか?
そしてこの状況で俺に折り入ってしたい話とは一体?

「じゃあ屋敷に戻るか。悪いけど、家畜の搬入の立ち合いは村長に頼むよ」

「お任せください」

搬入は村長に任せ――まあ俺がいても何かすることもないだろうし。
俺はカンカンの母親の話を聞くため、屋敷へと戻るのであった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

処理中です...