素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す~神様から貰ったランクアップで楽々領地経営~

榊与一

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第99話 古代魔法

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超越魔法オーバーロードマジック!メテオレイン!!」

魔法が発動し、遥か遠方の敵軍に火球が降り注ぐ。
それらは敵軍に地獄を齎し、瞬く間にその陣形を蹂躙していく。

その大破壊。
この一撃で、この戦闘の勝敗は9割決したと言っても過言ではないだろう。

「ふはははははは!これが我が力だ!ポロロン王国に牙を向けた愚を思い知るがいい!グラントの走狗共め!!」

私は吠える。
自らの放った魔法が及ぼす、絶対的な影響に酔いしれ。

ポロロン王国対グラント帝国の初戦は、予想だにしない事態で幕を閉じた。
第二王子であるガイオスの死と、その旗下にあった第二王宮軍団の壊滅と言う形で。

あの知らせを受けた時、私は唖然とすることになる。

ガイオスは愚かな弟ではあったが、騎士としての実力は本物だった。
この国に、弟を超えるだけの騎士はいないと断言できる程に。

更にガイオスのスキル、【戦王】は戦場で圧倒的に輝くスキルであり。
そして弟が率いていたのは王国屈指の精鋭達だった。

そのため私はガイオスがこの戦争で戦火を大きく上げ、後継者争いで私の足を掬う事すら懸念していたのだが……

まさかの大敗である。
だれがそんな結果を予想できようか?

そしてガイオスが負け、王国側は劣勢を強いられる事となる訳だが……

「くくく。ペカリーヌ王女は本当に素晴らしい物をくれた物だ」

私は左手の親指に付けている指輪を撫でる。
これは私は元婚約者であり、現神聖エルロンド教の聖女となったペカリーヌから貰った物だ。

最初、婚約破棄を告げられた時は憤慨した物だが……

なにせ、彼女が聖女になれたのは私のお陰なのだから、相手都合の婚約破棄はとんでもない裏切り行為だった。
怒らない訳がない。

その際、ペカリーヌは慰謝料代わりに、聖器を私へと差し出して来た。
正直、貰った時点では全然足りないと思っていたのだが、今この段になって考えを改める。
彼女との結婚より、この聖器の方が何倍も有用だったと。

――なにせ、古の超越魔法オーバロードマジックを使えるようになるのだかな。

遥か昔。
神代の時代、邪悪な魔物相手に強大な力を持ったメガ精霊が放ったとされる広範囲殲滅魔法。
それが超越魔法オーバーロードマジック、メテオレインだ。

その魔法を、偉大なる大賢者スカピンが100年前に復活させた訳だが……

それを扱える物は、大賢者スカピン以降現れる事はなかった。
何故なら、この魔法を扱うには膨大な魔力が必要だったからだ。

そのため魔法の概要は広く知られていても、戦場でこの魔法が放たれる事はなかった。

だが。
そう、だが。
現代において、遂にその魔法の使い手が現れる。

それが私だ!

まあ、私個人だけの力という訳ではないが……

自分でいうのもなんだが、私は魔法の天才だ。
更にそのスキルは魔力量二倍という、魔法使いになれと天が言っているとしか思えない物だった。

だがそんな私の才能をもってしても、超越魔法オーバーロードマジックの発動には程遠い魔力量しか有せなかったのだ。
それを可能にしたのが――

聖女ペカリーヌから貰ったこの、【聖魔力の円環ホーリーリング】である。

聖魔力の円環。
それは魔力貯蓄効果を持つ指輪だ。
外部から魔力を注ぐ事で指輪内に膨大な魔力を蓄積し、そして装備者に自由に扱える魔力へと変換する効果を持っている。

そう、この指輪に蓄えられた膨大な魔力を使って私は超越魔法を放っているという訳だ。

「魔法使いの数が今の倍入れば、戦争などあっという間に決着がつくのだが……」

指輪への魔力チャージは、魔法使い達が行っている。
超越魔法を扱うための魔力量は膨大で、国に仕える魔法使い達ではそのチャージに一週間もの時間が必要だった。
そのため、超越魔法が使えるのは一週間に一度のみとなっている。

「まあだが、防衛だけを考えるのなら十分か」

一週間に一度では、こちらから攻め込める程の戦果は期待できない。
だが、防衛用として、ピンポイントに敵軍をせん滅する分には十分である。

攻めあぐねるとなれば、戦争理由が理由だけに、帝国は侵攻を早期段階で諦める事になるはずだ。
それまで私は精々、超越魔法オーバーロードマジックの使い手、大賢者ケイレスとしてその名を響かせるとしよう。

「侵略を退けた若き大賢者ケイレス……くくく、なんと甘美な響きか」

継承争いのライバルは消え。
そして私は名を響かせる。
もはや私の王位継承に異を唱える者はいないだろう。

そして偉大なる大賢者は偉大なる王となり。
ポロロン王国は更なる繁栄を迎えるのだ。


――この時の私は知らなかった。

――初戦以降、姿を現していないガイオスを下した黒龍軍団の力を。

――そして、その裏に潜む強大な存在を。

それは私を……
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