マスタースロット1の無能第333王子、王家から放逐される~だが王子は転生チート持ち。スキル合成による超絶強化&幻想種の加護で最強無敵に~

榊与一

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8――初クエスト

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「あー、もう!邪魔だ!」

手にした鉈を振り回し、道を遮る枝葉を切り落とす。
此処は王都から出て数時間程の距離にある、スライムの森と呼ばれる場所だった。
鬱蒼とした森の中には藪なども多く、俺の歩みを度々遮って来る。

本当に鬱陶しい。

「はぁー、だる」

今はまだ春先なのでだるいだけで済むが、これが夏場だったらここに暑さ迄加わって地獄だったろう。
先の事を考えると、少々高くつくがタリスマン――魔法の力を宿した護符――の購入か、頑張って寒暖用の防御魔法を覚えておいた方が良いのかもしれない。

「しっかしスライムいねーなー」

態々こんな所へやって来たのは、勿論スライムを狩る為だ。
正確にはその肝の収集だな。

スライムは一見動くゼリー状の粘体にしか見えないが、よく見るとその中心には小さな核の様な物が存在している。
それがスライムの肝と呼ばれる部分だ。

スライムの肝は魔法研究などに使われる素材で、その名の示す通り生ものである。
その為長期保存が効かず、スライムの肝集めは常に募集の途切れない定番クエストとなっていた。

俺はその収集クエストを受け此処へやって来ている訳だが、森はその名に反し、一向にスライムの姿が当たらない。
閑古鳥もいい所である。

「楽で美味しいクエストだと思ったんだけどなぁ」

本来スライムの肝収取は、アイアンシルバーと言った低階級の冒険者が受ける仕事だ。
当然報酬はかなり安い。

だが少し前、このスライムの森に高位のモンスターが現れて暴れたらしく、現在森への立ち入りには制限がかけられていた。
一応魔物自体は討伐済みらしいのだが、念の為という事でゴールド以下はクエストを今は受けられない様になっている。
その為スライムの肝を収集するクエストの単価が上がっており、これは美味しいと思い飛びついた訳だ。

「こんな落とし穴があるとは……1時間成果無しとか。勘弁してくれ」

他は誰もこのクエストを受けていないと、受付嬢は言っていた。
話を聞いた時は元が低ランククエストだからだろう程度にしか考えていなかったが、その理由を身をもって体感させられる。

これだけ見つからないとなると、多少単価が高くてもそりゃ人気がない訳だと納得せざる得ない。
普段は此処からさらに単価が下がるのかと思うと、これを飯の種にしている低ランク冒険者達には同情を禁じ得なかった。

因みに、俺の冒険者としてのランクは白金プラチナに上がっている。
ゴールドよりワンランク上で、一応冒険者としてはぎりぎり一流扱いになるクラスだ。
野球で言うならAランクの最下位と言った所だろうか。

試験ではギルドマスターに手も足も出なかった俺ではあるが、どうやらそこそこ評価は高かったらしい。
これも全て合成で生み出した宝玉のブースト効果のお陰だろう。

「こりゃ泊りか」

小さく溜息を吐いた。
クエストの最低要数は10個からだ――超えた分も買い取ってくれるが。
正直、10個程度なら半日もあれば終わると考えていたのだが、この調子では間違いなくここで一泊する事になりそうである。

一応手こずった時用に毛布などの用意はして来ているが……
出来れば森の中で寝泊まりしたくなかったというのが本音だ。

「しっかし、何もいねーな」

さっきからスライムは元より、動物の姿などもまったく見かけていない。
まるで生物などいない、死の森の様に感じて不気味に思えてしまう。

「ま、そんな訳ないか」

初仕事で緊張しているせいだろう。
我ながら馬鹿みたいな考えだと笑ってしまう。

暫く進むと、広い湖畔に出くわす。
目の前に広がる美しい湖面に吸い寄せられるかの様に、俺はフラフラと近づいて岸辺に立った。
特に何かがある訳ではないが、穏やかな水面みなもをみていると体からすっと疲れが抜けていく様な穏やかな気持ちになる。

「ん?」

暫く無心でじっと眺めていると、水面に小さな黒い染みの様な影が映り込んだ。
それは見る間に大きく広がって行き、更に湖面が大きく波立ち始めた。

「ぶわっぷ!?」

盛り上がった水面が大きく弾け、勢いよく水飛沫が舞う。
俺は大量の水を浴びてしまい、咄嗟に目を閉じた。

「何だってんだ!?」

顔を腕で拭いて目を開けると――

そこには美しく輝くエメラルド色をした、巨大なドラゴンが佇んでいた。

「我に捧げよ」

唖然と固まる俺の内側に、その一言が響く。
だが俺は驚きの余り反応できず、只々目の前のドラゴンを呆然と凝視するのだった。
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