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第2章 ロボ子と優子
#17.
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✳︎
気温は14度。寒くも暑くもない、とても穏やかな空気だ。青い絵の具をそのままキャンバスに塗ったような空に程よく真っ白な雲が邪魔をして、平和という言葉をそのまま風景にしたような景色だった。私は普段よりも軽い足取りであの公園へ向かった。
公園に着くと真っ先にあの黒猫を探した。けれど、どこを探してもその黒猫は見つからなかった。ただ、心のどこかで今日はいない気がしていたのは嘘ではない。一通り探し終わり、諦めのついた私はベンチに座り本を開いて彼を待った。読み始めて10分ほどが過ぎた時、両手に大きめの白い紙カップを持っているニケさんが公園にやってきた。そういえば私服姿の彼を見るのは初めてだった。大きめサイズの黒いパーカーがとても似合っていて可愛い印象を持った。
「ご、ごめんね。遅くなって」
「おはようございます。いえ、とんでもないです。私も今さっき来たところなので。ニケさん、その両手のものは?」
「あ、あぁ。近くのコンビニで買ってきた。好きなものが分からなかったから、抹茶オレとバニラオレ、買ってきた。ど、どっちも苦手だったりした?」
彼の選んだ二択にニケさんらしさを感じて少し心がほっこりと暖かくなった。
「私、バニラオレ大好きなんです」
私の言葉を聞いた彼は、彼の心の中が私にも分かりそうな程安堵していた。
「それはよかった。なら、はい。どうぞ」
「ありがとうございます」
彼の魅力を挙げると決して1つや2つではないけれど、まず第一にくるのは間違いなく優しさだ。
「僕、師匠以外の誰かと一緒に時間を過ごすのが初めてなんだ。だ、だから、優子を困らせたくないから何かあったら何でも言ってね」
地面を見ながら話す彼の視線の先に、私はずいっと顔を割り込ませた。
「う、うわぁ!」
「無理はしなくて大丈夫です。私も初めてなので。とりあえず読書を楽しみましょう」
「そ、そうだね」
言葉を交わした私たちは互いに本の世界へと入り込んだ。何があったわけでもないのに彼の隣にいると心が安らぐ。これは過ごしやすい気温だからではないというのは間違いない。しばらく本を読んでいると休憩にしようかと彼が言ったので、私はトートバッグに入ったタッパーから丸い形のチョコレートを取り出してそれを彼に渡した。
「食べられますか? ホワイトチョコです」
「う、うん。ありがとう。とっても好き」
「それは良かったです」
「ゆ、優子が作ったの?」
「はい。せっかくならと思いまして」
「す、すごいね。ありがとう。じ、じゃあ遠慮なく……」
彼は私が渡したチョコを口に入れると、まるでフォアグラやキャビアを初めて食べた時(私は食べたことがない)みたいな顔をして目を輝かせた。
「え、やばい。めっちゃ美味い!」
「そうでしょう、私の力作です」
「マジでやばい、優子天才じゃない?」
語彙力の乏しくなった彼はチョコを無我夢中で頬張り、そのほとんどを1人で食べきった。
「ごめん。美味すぎてもう食べきっちゃった。優子も食べた?」
全て食べ終えた後、私に問いかける彼に可愛らしさと、良い意味で年齢の差を感じた。
「はい。もちろん私もいただきました」
「そっか、それならよかった」
安心した表情で大きく息をするニケさん。食べ疲れたのか彼はそれからしばらく口を噤んだ。けれど表情は今日の天気のようにとても穏やかだった。
「ニケさん」
「うん?」
「好きな人っていますか?」
唐突に問いかけた私の質問を聞いた彼は、盛大にむせて軽い呼吸困難になった。
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん。あんまりにも予想外な質問だったから……」
「ごめんなさい。急に聞きたくなっちゃって。やっぱり今のは聞かなかった事にしてください。ニケさんに聞いてほしい話があるのでそっちを聞いてもらえますか?」
「え、う、うん。僕でよければ……」
私はこの機会に私の過去の全てを彼に打ち明けようとこの瞬間に決めた。この場所でしたかった話だ。私は大きく息を吸って心を落ち着かせた。
気温は14度。寒くも暑くもない、とても穏やかな空気だ。青い絵の具をそのままキャンバスに塗ったような空に程よく真っ白な雲が邪魔をして、平和という言葉をそのまま風景にしたような景色だった。私は普段よりも軽い足取りであの公園へ向かった。
公園に着くと真っ先にあの黒猫を探した。けれど、どこを探してもその黒猫は見つからなかった。ただ、心のどこかで今日はいない気がしていたのは嘘ではない。一通り探し終わり、諦めのついた私はベンチに座り本を開いて彼を待った。読み始めて10分ほどが過ぎた時、両手に大きめの白い紙カップを持っているニケさんが公園にやってきた。そういえば私服姿の彼を見るのは初めてだった。大きめサイズの黒いパーカーがとても似合っていて可愛い印象を持った。
「ご、ごめんね。遅くなって」
「おはようございます。いえ、とんでもないです。私も今さっき来たところなので。ニケさん、その両手のものは?」
「あ、あぁ。近くのコンビニで買ってきた。好きなものが分からなかったから、抹茶オレとバニラオレ、買ってきた。ど、どっちも苦手だったりした?」
彼の選んだ二択にニケさんらしさを感じて少し心がほっこりと暖かくなった。
「私、バニラオレ大好きなんです」
私の言葉を聞いた彼は、彼の心の中が私にも分かりそうな程安堵していた。
「それはよかった。なら、はい。どうぞ」
「ありがとうございます」
彼の魅力を挙げると決して1つや2つではないけれど、まず第一にくるのは間違いなく優しさだ。
「僕、師匠以外の誰かと一緒に時間を過ごすのが初めてなんだ。だ、だから、優子を困らせたくないから何かあったら何でも言ってね」
地面を見ながら話す彼の視線の先に、私はずいっと顔を割り込ませた。
「う、うわぁ!」
「無理はしなくて大丈夫です。私も初めてなので。とりあえず読書を楽しみましょう」
「そ、そうだね」
言葉を交わした私たちは互いに本の世界へと入り込んだ。何があったわけでもないのに彼の隣にいると心が安らぐ。これは過ごしやすい気温だからではないというのは間違いない。しばらく本を読んでいると休憩にしようかと彼が言ったので、私はトートバッグに入ったタッパーから丸い形のチョコレートを取り出してそれを彼に渡した。
「食べられますか? ホワイトチョコです」
「う、うん。ありがとう。とっても好き」
「それは良かったです」
「ゆ、優子が作ったの?」
「はい。せっかくならと思いまして」
「す、すごいね。ありがとう。じ、じゃあ遠慮なく……」
彼は私が渡したチョコを口に入れると、まるでフォアグラやキャビアを初めて食べた時(私は食べたことがない)みたいな顔をして目を輝かせた。
「え、やばい。めっちゃ美味い!」
「そうでしょう、私の力作です」
「マジでやばい、優子天才じゃない?」
語彙力の乏しくなった彼はチョコを無我夢中で頬張り、そのほとんどを1人で食べきった。
「ごめん。美味すぎてもう食べきっちゃった。優子も食べた?」
全て食べ終えた後、私に問いかける彼に可愛らしさと、良い意味で年齢の差を感じた。
「はい。もちろん私もいただきました」
「そっか、それならよかった」
安心した表情で大きく息をするニケさん。食べ疲れたのか彼はそれからしばらく口を噤んだ。けれど表情は今日の天気のようにとても穏やかだった。
「ニケさん」
「うん?」
「好きな人っていますか?」
唐突に問いかけた私の質問を聞いた彼は、盛大にむせて軽い呼吸困難になった。
「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん。あんまりにも予想外な質問だったから……」
「ごめんなさい。急に聞きたくなっちゃって。やっぱり今のは聞かなかった事にしてください。ニケさんに聞いてほしい話があるのでそっちを聞いてもらえますか?」
「え、う、うん。僕でよければ……」
私はこの機会に私の過去の全てを彼に打ち明けようとこの瞬間に決めた。この場所でしたかった話だ。私は大きく息を吸って心を落ち着かせた。
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