吾輩は時々、黒猫である。

やまとゆう

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最終章 黒猫と「人」

#27.

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「んー、美味しいー♪」

風花と真希が声を揃えて同じ反応をした。

 「師匠、これ何か隠し味で入ってますよね?」

目を光らせながら師匠に尋ねる料理好きな美咲に対して、師匠はあのムカつくニヤケた表情を返していた。

 「お、よく気づいたな。うん、隠し味である物を入れてるんだ。優子に教えてもらった」

みんなの視線が一気に優子の方を向いた。それに照れた様子で反応した優子は視線を自分の取り皿に向けた。

 「へぇー! 優子ちゃんに! もしかして優子ちゃん、料理出来る人?」

今度は京子が、まるで彼女の好きな男の人を見るようなキラキラした目で優子を見た。

 「人並みですよ」

優子は照れ隠しをするように感情を抑えて反応していた。優子は照れた時、それを悟られまいと冷ややかに対応したりする。この1年で優子のクセが少しぐらいは分かった気がする。気がするだけかもしれないが。僕は彼女のそんな反応も好きだが、みんなに誤解されていないか少し焦る時がある。

 「クールな優子ちゃん、謙虚だ!」

優子の返しにも太陽のような笑顔を見せる京子を見て、その心配はいらなそうだと安心した。

 「けど師匠。そこまで言うなら隠し味が何か教えてくださいよー♪」

酒に飲まれ始め顔が赤くなってきた風花がへらへらしたまま師匠に尋ねた。

 「バーカ、隠し味は誰にも話さないから隠し味なんだよ。オレと優子だけの秘密だ」
 「えー、何かズルーい」
 「ハハ、悪いな。けど、いつかお前たちもその隠し味を知ることが出来ると思うぞ。んで、それはいつまでもお前たちの財産になるはずだ」
 「何ですか、それ。まさか『まごころ』とかそういう類のやつですか?」
 「それはどうだろ。隠し味だ」
 「意味分かりませーん!」

 楽しい時間は驚く程一瞬で過ぎていった。僕はその一瞬の間に人生で一番幸せだと胸を張って言える誕生日を過ごした。実はさっきの時間、多分誰も気づいていなかっただろうけれど師匠は何故か誰にも見られないように静かに涙を流していた。僕にはそれが嬉し泣きでもなく、悲しくて泣いているのでもないように見えた。師匠が泣いている理由は分からなかったけれど僕は師匠のその姿が、目を閉じて意識が無くなる瞬間までずっと頭の中に残っていた。そしてその夜、夢が現実か分からない朧げな意識の中で、師匠が僕の寝るベッドに潜り込んできて僕の体を静かに抱きしめた。感覚があったので夢ではない気がしたものの、あまりの心地よさと幸福感で僕は再び眠りに落ちた。師匠が師匠じゃないみたいだったから、もしかしたら夢だったかもしれない。

            
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