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EP:62 まさかの〇〇

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「あ」

 身体の熱に。
「ぁ゛っつい‼」
 安住が目を覚まし、ベッドから身体を起こした。
「――…へ? ここは、あれ? あれれ??」
「起きたのか。日本人アズミ
「???? ぇっと、看守の方ですか? 日中の」

「はァ゛!? ちげぇよ‼」

 顔を歪ませて言い切るミラに、こくこく、と安住も頷くしかなかった
「俺様はなァ! 不法侵入した一般人だよォ゛‼」

(明らかに…一般人なんかじゃない)

 そんなミラの後ろにあるベッドにはゲイリーが寝ていた。
 顔は真っ赤で、牢獄にアルコール臭が籠っていた。
「くさ」
 眉をひそめ、鼻先を抑える安住に。
「何? 酒とか、煙草とかやんない人間タイプかよ?」
「うん」
「子供かよ!」
 声を出して笑う彼を、
(こいつ、嫌いだ)
 安住が目を細めた。
「で。何なんですか? あんたは」
「俺様ァ゛!? ふふぅん? 知りてェの??」

「いや。いいです。出てって下さい」

 一蹴するように安住が言い放った。
 ミラも、怪訝な表情に変わる。
親父ラバーの代わりにマフィアのボスをやってんだよォ゛!」
「っま、マフィア?!」
「何を驚いてんだよ? 親父のこと、何にも知らねェって訳じゃねェだろう?」

「もっと強面の人間ひとだってイメージで…」

 眉が吊り上がり。
「はァ゛!? ドラマの観すぎじゃねェのか?? 日本人!」
 強い口調で吐き捨てた。
「確かに」
「親父だって強面じゃねェだろうがァ゛!」

「…――まぁ。確かに」

「若。一般の方に絡むのは止めて下さい」
「っち! お茶は??」
「ありますよ?」
 そう言うとエルドが懐から、お茶の一式を取り出した。
「っど、ら…ぇもん…」
 自重しつつ、安住も言う。
「コーヒーと、紅茶。貴方はどちらが好みですか?」

「コーヒー。甘めで」

 ◆◇

 若がボクに話しかけてきた。
『どうだよ? 監獄の中ってのは』
『んー』
『ったくよ~~様ねェなァ゛』

『んーはいーー』

 弾む声を出す若ー
 とても機嫌がいい証拠だ。
『勝手にどこぞの骨の野郎にのこのこ、ついて行くからだぞ!』
『んーでもーそのおかげでー』
『? 何だよ』

『ババさんにーまた、会えたー』

 ボクの言葉に、
『出ていかなけりゃあ。ずっと傍に居られただろうが』
 若が言う。
『確かにー』
 ボクだって分かってるよー
 でも、でもだよー?

『1人で自立ーしたかったんだよー』

 これ以上、親元にも。
 ババさんの傍にも。

 居たくなかったんだよ。

『んで。刑務所かよ! 馬鹿の極みだなァ゛!』

『んー確かにー』
『俺様の傍にも…居たくなかってのかよ? 手前は』
『ですねー』
『っち! はっきり言ってくれるぜ!』

『ごめんなさいー』
『出してやろうか? 監獄こっから』
『えー?』

『んでよー俺様の右腕になれよ』

 若が脈略もなくボクに言う。
 いや。
 無理だよー?

『手前にゃ。その資格もある』

 何を、言っているのー????

B・Bビーツー。手前はーー』

 ◇◆

「俺様は養子で。このお子様が親――父の実子だ」

 ぶっふぉ!

 思いがけない言葉に。
 安住はコーヒーを吹き出してしまう。
「おい! 手前汚ねェ!」

「っが! っは! ァ、鼻に、はぃった!」

「大丈夫ですか? アズミさん」
「ん。平気で、す」

 エルドが布巾ハンカチを安住に差し出した。
 安住も、それを受け取り鼻先を抑えた。
「その話しは――」
「あァ゛あ゛? 俺様がホラいているってか?!」
 今にも掴み掛りそうなミラに、
「若。落ち着いて下さい」
 エルドがはにかみながら言う。

「ゲイリーが、ボスの実子でることに間違いはないです」

本当マジ…なのか」

 バクバク。

 バクバクバクバク――……。

 やけに心臓音が聞こえた。
 緊張なのか。

 それとも。

 何とも言えない。

 ただ、安住の心臓は高鳴っていた。
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