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#35 似ても似つかない性格の兄弟

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 すー~~っふぅー~~……

「? あ。この煙草の匂い、嫌い~~?」

 2人の視線に縁司は、煙草を指に挟めて首を傾げた。
「いいやーおじさんは嫌いじゃないよ~~?」
アタシもですわ」
 縁司も2人の反応に、
「よかったw」
 はにかんで煙草を咥えて白い煙を口から吐いた。

(あンの馬鹿。トイレ、…長くねぇか????)

 心の中で縁司は、トイレへと走って行った。
 大嫌いだが、興味もある少年でもある長谷部を思い浮かべている。
 そんな彼が。

 戻って来ないのだ。

「…息子さん。トイレ、長いですねー」

「あら。そういえば、そうですわね」

 ◆

「竜司さんンん! あンた、ひっでぇな‼」

「んン゛ん゛~~…っご、ごっめんンよぉうぅうう~~」

 厨房の中で長谷部が竜司に詰め寄っていた。
 突然と、訳も分からずにあてがわれてしまったのだから。
 当然といえばそうなのだが。
「あの人たちの中で! 俺ぁ、どうしたらいいんだっての!」
「ンん゛ん゛ー~~…ぁ、合わせてくれないかなぁ?」
「嫌だ! 絶対に嫌だもんね!」
 涙目で、大きな身体を震わせる長谷部の背中を、

 ゲシ!

「玉無しかよw お宅ってば」

 恵が細くも長い足で踏みつけた。
「恵ぃいい~~!」
「恵、じゃない。恵さん、なw」
 強く蹴飛ばし口端を吊り上げ、恵も意地悪く微笑んだ。
「っだ!」
 蹴飛ばされたことによって、長谷部も前のめりに弾んでしまったのだが。
 そんな長谷部へと竜司も手を差し伸べて支えた。

「めぐみん君!?」

 竜司は恵を睨みつけた。
 睨まれた方は、赤い舌を出している。
「もういいから。早く茶番は終わらせて、戦場こっちに戻って来てくんないかな?」
 堪らずに声をかけたのはともみである。
 働けど働けど、待てども待てども――……

 馬鹿騒ぎが終わらないっ!

 それには流石にともみも沸々と機嫌も斜めになってしまっていた。
 引きつった笑顔は強張り、言葉の語尾も震えている。
 怒り心頭の彼に、
「ごめんごめんってw」
 恵も素直に謝った。
「分かればいいんだけどさ!」
 大きく鼻息を吐き、肩も揺らす様子に恵も安堵の息を吐く。
 そして、ずいずいとともみは長谷部へと歩み寄った。

「とりあえず。長谷部君は縁司君を竜司店長さんって思って接してっ、乗り切るんだ!」

「…ぇ゛ええ゛ぇ゛ー~~…」

 後ずさる長谷部の身体を後ろから、竜司も抑えた。
 逃がす訳にもいかないからだ。
「!? っりゅ――」
 驚きの顔で竜司を見るのだが。
 彼も複雑な表情をしている。

「ぉ、扇さんに、…よろしく頼んだよ」

 好きなのだが、前に一歩の踏み込みが怖いのが垣間見えた。

「…今度、なんかケーキ食わしてくれる?」

「! ぁ、ああ。もちろんだよっ!」

 ◆

(あの馬鹿を竜司店長として、…接するたってよぉう)

 戻る最中の長谷部の胸中はザワついている。
 どうにもこうにも、同じなのだが違う彼に腹が立ち、苛立つのだから。
 そんな彼を、親愛なる竜司と《同じに》とは難しい話しだ。

「ああー~~遅かったっじゃんw」

 咥えた煙草を揺らして嗤う。

全然っぜんっぜんンん。キャラ違うんだっぜぇええ????)

 縁司の反応に、長谷部の胃がキュウ~~と締めつけられてしまう。

(胃が、…っいってぇ!)
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