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#34 揃ってしまった4人
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縁司からのメールに竜司も迅速に行動をした。
それは決して怪しまれてはいけないことだった。
普通なら怪しまれるのだが、それは――
「申し訳ないですが、僕も仕事に戻りますね」
「!? あ、ぁあ、お、俺ももど――……」
「ああ。うん、長谷部君は三柴さんと、お父さんと一緒に食べてていいよ」
店主兼パテシエだからこその自然の行為。
疑われることなく、長谷部を切り捨てる格好になってしまったことに、
(ごっめぇええんンん! 長谷部君っっっっ!)
内心は激しい反省の弁が吹き荒れている。
そして、切り捨てられてしまった方の長谷部も、唖然呆然と。
「ぁ、う、…えぇ?? いやいや! 店だって混んでるじゃんか!?」
「っきょ、今日はいいよ。お疲れ様」
ぎこちなく笑うと急ぎ足で厨房へと竜司も戻って行ってしまう。
その背中を悲しい眼差しで長谷部も見送るしかない。
「お父さんと一緒にいるだけじゃないですか。その顔は――甚振りたくなります」
「…ふざんな」と歯も剥き出しにする長谷部を他所に、店内に来客を知らせる鐘がなる。
同時に長谷部の携帯も
ヴヴヴ!
「ん?」
訪れる恐怖を知らせるように鳴った。
◆◇
竜司店長:これから縁司君が! 扇さんと一緒に来ちゃうんだ! だから、申し訳ないんだけど知り合いのフリをしておくれ!
◇◆
「!?」
液晶画面で相手が竜司だとは分かっていたが。
まさかの文面に目が丸く見開かれてしまう。
(来るって!? あのくそ野郎が!? ぇ、ええ???? っちょ、ちょっと待っ――)
落ち着きをなくしてしまった長谷部に海潮も顔を傾げた。
「どうかしましたか? 長谷部君」
「や! っな、なんでもないぞ!?」
上擦ってしまう声に、激しい動揺。
(何か、おかしいですね)
海潮も疑いの視線を長谷部へと向けるのは当然だ。
「ぉんやぁ~~? ママぁーおよよ? 長谷部君も一緒なんだねぇー」
「ひぇえ‼」
驚きの声を、素っ頓狂にも上げて、席からも立ち上がってしまった長谷部の視線は扇の背後にバツの悪そうな表情を浮かべて、愛想笑いをし続ける男に注がれた。
「っげ!」
「…やぁ-~~」
軽く手を挙げて長谷部に挨拶をする縁司。
借りにも2人が一緒に海潮のバーで働いたという設定で、一緒に帰ったという設定もあるからいがみ合うのは――《あり得ない》のだが。
そのことを長谷部自身が忘れてしまっていた。
頭の中の縁司はこの男で、竜司とはまた別認識に変わったままだからだ。
この瞬間。
まだ、切り返しが出来てはいない。
(こんの馬鹿。頭、悪過ぎじゃん?)
「久しぶりだねー~~長谷部君~~」
満面の笑顔で縁司も手を振った。
そして、横に座る女性を縁司も目を向けた。
(あーこいつがママ活の相手だった、三柴海潮、…さんね)
ようやくここで初めて縁司も、自身がママ活する相手と会うことが出来た。
男と言われなければ、一見と身長はある華奢な女性にしか見えない。
だが、男だと知っている以上はトキめかない。
(んで、だ。あの馬鹿の父親なんだっけ?)
長谷部の父親だと分かっていても、だ。
「海潮さんー~~今日もお美しいですねぇ」
胸がザワついてしまう。
「あら♡ 有り難うございます♡」
「ママ。こうして店の外で出会えるのなんか運命をおじさんは感じちゃうなぁ~~あ。相席しても構わないかなw」
「ええ。勿論ですわ」
ズズズ――と隣の席を引きずりテーブルをくっつけた。
しかし、それはと縁司も口をへの字にさせた。
「席の移動をしましょー~~喫煙4人席へさw」
縁司の言葉に違和感があるのだが。
海潮と扇には分からない。
しかし、それを知る長谷部は彼を睨むことしか出来ない。
縁司は喫煙者。だが、竜司は禁煙者。
「ちょっと! 俺、トイレに行くから!」
それは決して怪しまれてはいけないことだった。
普通なら怪しまれるのだが、それは――
「申し訳ないですが、僕も仕事に戻りますね」
「!? あ、ぁあ、お、俺ももど――……」
「ああ。うん、長谷部君は三柴さんと、お父さんと一緒に食べてていいよ」
店主兼パテシエだからこその自然の行為。
疑われることなく、長谷部を切り捨てる格好になってしまったことに、
(ごっめぇええんンん! 長谷部君っっっっ!)
内心は激しい反省の弁が吹き荒れている。
そして、切り捨てられてしまった方の長谷部も、唖然呆然と。
「ぁ、う、…えぇ?? いやいや! 店だって混んでるじゃんか!?」
「っきょ、今日はいいよ。お疲れ様」
ぎこちなく笑うと急ぎ足で厨房へと竜司も戻って行ってしまう。
その背中を悲しい眼差しで長谷部も見送るしかない。
「お父さんと一緒にいるだけじゃないですか。その顔は――甚振りたくなります」
「…ふざんな」と歯も剥き出しにする長谷部を他所に、店内に来客を知らせる鐘がなる。
同時に長谷部の携帯も
ヴヴヴ!
「ん?」
訪れる恐怖を知らせるように鳴った。
◆◇
竜司店長:これから縁司君が! 扇さんと一緒に来ちゃうんだ! だから、申し訳ないんだけど知り合いのフリをしておくれ!
◇◆
「!?」
液晶画面で相手が竜司だとは分かっていたが。
まさかの文面に目が丸く見開かれてしまう。
(来るって!? あのくそ野郎が!? ぇ、ええ???? っちょ、ちょっと待っ――)
落ち着きをなくしてしまった長谷部に海潮も顔を傾げた。
「どうかしましたか? 長谷部君」
「や! っな、なんでもないぞ!?」
上擦ってしまう声に、激しい動揺。
(何か、おかしいですね)
海潮も疑いの視線を長谷部へと向けるのは当然だ。
「ぉんやぁ~~? ママぁーおよよ? 長谷部君も一緒なんだねぇー」
「ひぇえ‼」
驚きの声を、素っ頓狂にも上げて、席からも立ち上がってしまった長谷部の視線は扇の背後にバツの悪そうな表情を浮かべて、愛想笑いをし続ける男に注がれた。
「っげ!」
「…やぁ-~~」
軽く手を挙げて長谷部に挨拶をする縁司。
借りにも2人が一緒に海潮のバーで働いたという設定で、一緒に帰ったという設定もあるからいがみ合うのは――《あり得ない》のだが。
そのことを長谷部自身が忘れてしまっていた。
頭の中の縁司はこの男で、竜司とはまた別認識に変わったままだからだ。
この瞬間。
まだ、切り返しが出来てはいない。
(こんの馬鹿。頭、悪過ぎじゃん?)
「久しぶりだねー~~長谷部君~~」
満面の笑顔で縁司も手を振った。
そして、横に座る女性を縁司も目を向けた。
(あーこいつがママ活の相手だった、三柴海潮、…さんね)
ようやくここで初めて縁司も、自身がママ活する相手と会うことが出来た。
男と言われなければ、一見と身長はある華奢な女性にしか見えない。
だが、男だと知っている以上はトキめかない。
(んで、だ。あの馬鹿の父親なんだっけ?)
長谷部の父親だと分かっていても、だ。
「海潮さんー~~今日もお美しいですねぇ」
胸がザワついてしまう。
「あら♡ 有り難うございます♡」
「ママ。こうして店の外で出会えるのなんか運命をおじさんは感じちゃうなぁ~~あ。相席しても構わないかなw」
「ええ。勿論ですわ」
ズズズ――と隣の席を引きずりテーブルをくっつけた。
しかし、それはと縁司も口をへの字にさせた。
「席の移動をしましょー~~喫煙4人席へさw」
縁司の言葉に違和感があるのだが。
海潮と扇には分からない。
しかし、それを知る長谷部は彼を睨むことしか出来ない。
縁司は喫煙者。だが、竜司は禁煙者。
「ちょっと! 俺、トイレに行くから!」
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