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#36 空気を壊す、縁司

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(ああ。このピアスって、このおじさんからの贈りものだったのね~~)

 扇との会話で、縁司は耳たぶに嵌められたピアスを想った。
 とてもキレイなピンクの石。
(兄貴も、なんだってこんなのを貰っちまうかなぁ~~)
 にこやかに会話を続けて縁司も、竜司の推しの弱さに頭を痛めた。
(こんなの貰っちまったら、…しかも、こんな高価なピアスをさぁ~~)
 
 まるで。
 扇の所有物なってしまっているかのような気持ちになってしまう。
(ああ~~貰いんじゃなかったわぁー~~)
 頭を掻きたいが、

 す――……

 ふぅ~~……

 煙草を吸い込み、宙へと噴き出した。

本当っほんとに面倒事になっちゃったなぁ~~)

 今さらながらに――《ママ活》をしたことに後悔をした。
 ようやくと、この状況の元凶をつくってしまったことに、縁司は後悔をした。

(本当に、…悪い真似ことってのはお天道様も見てんだねぇ~~w)
 
 自嘲するしかない。
 悪いのは自身がやってしまった行いなのだから。
(まぁ。仕方なって割り切るしかねぇんだけどー~~wwwww)
 だが、決して悪いことではない、と縁司は長谷部を見た。
「っりゅ、竜司さん…どうかしたのかよ…」
 ぎこちなくも縁司を《竜司》呼ぶ彼と出会えたのだから。
べっつにぃ~~w」
「ふぅん?」と長谷部は流したものの。

(ならこっちを見んじゃねぇよ!)

 内心では悪態を吐いていた。
(早く、終わんねぇかなぁ)
「あのさ? 俺がいる意味ってあんの?」
 早く、この席から立ち去りたいの一心だ。
 縁司が何かを、ボロを出さないうちにである。
「いやぁ~~おじさん、本当に嬉しいなぁ~~こうして縁司君とケーキを食べられるなんて感激だよ!」
 相手が違うなどと疑う様子もなく扇が縁司に喜々と語る。
 それには長谷部も、
(違いが分かんねぇってんなら)
 さらに内心で悪態を吐くのだった。
(こいつの想いなんか嘘なんだろうな)
 頼んだコーヒーを飲んで、甘いケーキを頬張っていたときだ。

「扇さんて、長谷部君も食べたんだっけ?」

「いやいや。キスだけだったでしょー~~w」
「ああ。そうだったねー~~」
 改めて縁司は扇に長谷部とのことを聞いた。
「知らないうちにシちゃってたかと思ちゃったんだよねぇ~~真っ暗だった訳だしぃ~~」
 縁司の言葉に長谷部の身体も小刻みに震えた。
 顔も真っ青から赤へと変えていく。

「ぇん、縁司さンん゛…っつ?」

「視えないものを信じろっては無理ってっもんっだよなぁ~~」

 すー……
 
 っふぅー~~……

「他もされちゃってんじゃねぇのー~~?」

「っな゛!」と勢いよく席を立ってしまう。
 場が場でなければ彼の頬を長谷部も殴りたかった。

「いやぁ? もうとっくにされちまってんだよなぁ??」

「ぉ、お前っっっっ!」

 長谷部の貞操を異様に勘ぐる様子の彼に、長谷部も苛立ちが隠せない。
 もう、この場から立ち去って仕事に戻りたいところだ。

「縁司さん?」

「はいぃ?」

アタシの長谷部君は、そんな尻軽なんかじゃありませんよ」
 堪らずになのか海潮が縁司に応えた。
「確かに。私の店なんかに出入りはさせていますが、私もこの子の親ですからね」
 微笑む目の奥は嗤なんかおらず。
 口許だけが緩まっているだけの表情を見せる。

「ビッチ扱いは止してもらえますか?」

「違うならねー~~」

 火花を散らす海潮と縁司に扇も戸惑ってしまう。

「弱ったなぁー~~wwwww」 
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