61 / 91
第61話 桜木の案
しおりを挟む
日向が開けた天井の穴を見上げた。
「大きな穴ね」
その穴の付近には、野菜と果物が、宙に浮いている。
「敵も、いっぱいるわね」
小さく希美もボヤく。
《魔法少女の杖》を、掌で叩き。
何かを考えている。
「のなか、ちゃん」
桜木も、希美の横顔を伺いながら、おどおどと。
「階段から行かない?」
その提案に、希美も聞き返してしまう。
「? 階段??」
「ううん」
「でも、まどか」
「ううん。閉所……だよね。分かってるよ」
口元に、桜木は指を置き甘く噛む。
「狭い場所の方がね」
視線を逸らしつつ、希美に言う。
「魔法の効果もあると思うんだ。私」
希美も、頷く。
「それもそうね」
例えば。
たぬ吉の背中に乗って上がるとする。
そこで魔法の効果が切れてしまったら。
飛ぶことが、出来ない以上。
落下して、怪我をすることも間違いない。
「階段で行くのは、どうかと思うのだ」
日向が手を挙げた。
そのことに、桜木が驚いた。
「でも、お兄さん。浮いたら……危ないんですよ??」
「恐れて、逃げ腰癖をつかせれば」
ぎゅ、っと日向が手を握った。
「また、同じようなことが起こるのだ」
どこか重い言葉であった。
(逃げ腰……――でも)
希美の眉間にしわが寄る。
「私は階段で行った方が、いいと思うわ」
希美の言葉に、日向が眉間にしわを寄せた。
二人が睨み合う恰好になる。
たぬ吉も、わたわたと狼狽えながら見守っている。
手に汗を握りながら。
「どうしてなのだ。分からず屋!」
「! どうしても何も、危ないからよ!」
日向が言い、それに希美も切り返す。
桜木も、二人を見合っている。
不安そうな表情で。
「お兄さん……のなか、ちゃん……」
それにお構いなく。
二人の言い争うは続く。
「私は、まどかを危険にしたくないのよ!」
「それは、おれもそうなのだ!」
顔を、擦れ擦れにくっつけながら。
「私は、まどかと外に出たいのよ!」
「おれだって、そうなのだ!」
「なら、どうして聞き分けないのよ!」
希美が、肩で荒く息を吐く。
顔を真っ赤に紅潮させて。
「邪魔しないで!」
希美は《魔法少女の杖》を向けた。
先端に光りが集まる。
「止めて! のなかちゃん!」
桜木が、希美の腕にしがみつく。
それに希美も、振り払えずに、鞘に収めた。
「お兄さんもですよ!」
「――……まどちゃん」
日向が口をへの字にさせる。
ドゴォオオン!
桜木が金属バットを床に叩きつけた。
「仲良く行こうよ♡」
にこやかに、声のトーンダウンさせて。
再度、床に金属バットを叩きつけた。
ドゴォオオン!
「何か、中間を考えようよ♡ ね?」
桜木の言う中間に、希美と日向が首を傾げた。
「大きな穴ね」
その穴の付近には、野菜と果物が、宙に浮いている。
「敵も、いっぱいるわね」
小さく希美もボヤく。
《魔法少女の杖》を、掌で叩き。
何かを考えている。
「のなか、ちゃん」
桜木も、希美の横顔を伺いながら、おどおどと。
「階段から行かない?」
その提案に、希美も聞き返してしまう。
「? 階段??」
「ううん」
「でも、まどか」
「ううん。閉所……だよね。分かってるよ」
口元に、桜木は指を置き甘く噛む。
「狭い場所の方がね」
視線を逸らしつつ、希美に言う。
「魔法の効果もあると思うんだ。私」
希美も、頷く。
「それもそうね」
例えば。
たぬ吉の背中に乗って上がるとする。
そこで魔法の効果が切れてしまったら。
飛ぶことが、出来ない以上。
落下して、怪我をすることも間違いない。
「階段で行くのは、どうかと思うのだ」
日向が手を挙げた。
そのことに、桜木が驚いた。
「でも、お兄さん。浮いたら……危ないんですよ??」
「恐れて、逃げ腰癖をつかせれば」
ぎゅ、っと日向が手を握った。
「また、同じようなことが起こるのだ」
どこか重い言葉であった。
(逃げ腰……――でも)
希美の眉間にしわが寄る。
「私は階段で行った方が、いいと思うわ」
希美の言葉に、日向が眉間にしわを寄せた。
二人が睨み合う恰好になる。
たぬ吉も、わたわたと狼狽えながら見守っている。
手に汗を握りながら。
「どうしてなのだ。分からず屋!」
「! どうしても何も、危ないからよ!」
日向が言い、それに希美も切り返す。
桜木も、二人を見合っている。
不安そうな表情で。
「お兄さん……のなか、ちゃん……」
それにお構いなく。
二人の言い争うは続く。
「私は、まどかを危険にしたくないのよ!」
「それは、おれもそうなのだ!」
顔を、擦れ擦れにくっつけながら。
「私は、まどかと外に出たいのよ!」
「おれだって、そうなのだ!」
「なら、どうして聞き分けないのよ!」
希美が、肩で荒く息を吐く。
顔を真っ赤に紅潮させて。
「邪魔しないで!」
希美は《魔法少女の杖》を向けた。
先端に光りが集まる。
「止めて! のなかちゃん!」
桜木が、希美の腕にしがみつく。
それに希美も、振り払えずに、鞘に収めた。
「お兄さんもですよ!」
「――……まどちゃん」
日向が口をへの字にさせる。
ドゴォオオン!
桜木が金属バットを床に叩きつけた。
「仲良く行こうよ♡」
にこやかに、声のトーンダウンさせて。
再度、床に金属バットを叩きつけた。
ドゴォオオン!
「何か、中間を考えようよ♡ ね?」
桜木の言う中間に、希美と日向が首を傾げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる