ノゾミノナカと悪霊迷宮の殺人鬼

ちさここはる

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第67話 ピンチの時間

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 ジリリリーー……ッッ‼

「警報、音」

 そして。
 天井のスプリンクラーから、水の粒が滴り始めた。
「ぅ、動くんだ!?」
 桜木は驚きの色を、表情に浮かべた。
「そのようね」
 希美もあっけにとられた顔をしていたが、すぐに。
 笑顔になり、桜木に向けた。

「まどか。やったわ!」

 ぼわ!

「ぅ、ひゃ、あああ♡♡」
「? まどか。どうかしたの?」

「なん、でも……ないよ?!」

 火照った顔を手で抑えながら、はにかむ桜木。
 それを鎮めるかのように、スプリンクラーから大量の水が舞い落ちた。
「ふぁ~~あ゛! 水なのだぁ♡」
 日向ひゅうがが口を開け、咽喉を鳴らしていく。
 ぐい! と口元を拭い。
「海水ではないのが、ちと、残念なのだ」
 日向が苦笑した。
 2階のフロアーの天井から、一斉に流れ始めた防水。
 黒いマネキンの動きは、水の動きで聞こえた。

 ぱしゃ。

 ぱしゃしゃ。

「の、のなかちゃん。スプリンクラーを発動させても」
 桜木が首を傾げた。
「水は、他の階に流れちゃうよ??」
 そんな彼女の頬に、希美は指を添えた。
「春日部が、どうにかするわよ」
「ううん」

「!?」

 驚きの表情をする日向に、希美は。
「水が出たらどうにかするって言っていたわ」
 冷淡に言い返した。
 日向は「それは、そうなのだが」と頭を掻くと。
 おもむろに、銛を回した。

「おれに期待をしたことに!」

 天井のスプリンクラーに銛を刺した。
 すると。
 勢いよく水が噴き出した。
 大量に、怒涛に。

「後悔しても遅いのだ♪」

 日向を睨みつけながら、希美は《魔法少女の杖》で、黒いマネキンを爆破させていく。
「春日部!」
 強い口調で言う希美に、

「分かっているのだw」

 日向は、さらに銛を回転させた。
 その様子を、希美と桜木は魅入っていた。
「この水。お兄さん、何を考えているのかな?」
「そうね。普通に考えたら、地下にまで零れて、溜まるような話じゃないわ」
 希美は、手の甲に杖を叩く。
「漁師さんには、何か考えがあるのでしょうね」
「ううん。そうだと、いいな」
 不安そうに桜木は、日向を見た。
 潤んだ瞳で。

 ◆

 さて。

 困ったのだ。
 策はなくはないのは確かであるし。
 どれも、安心出来るものでもないのだ。
「この水に、どう乗ればいいのだ?!」
 危ない、声が大きくなってしまったのだ。

 ーー……よし、聞こえていないようなのだ!

 確かに。
 この水の量とて、この階を満たすことは出来ない。
 下に落ちていくことは、想定内ではあるが。

 船?

 魚??

 船は水の量がないと動かぬし。
 魚は、元々がーー海中であるし。

「困ったのだ!」

「「え??」」

「あ゛」

 しかし。
 このままではいかぬのは承知なのだ。
 
「……春日部?」
「お、兄さん??」

 不安そうに見る、このらを守るのが。
 おれの役目なのだ!

 きっと、その為に。
 おれは。

 ここに来たのだろう!
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