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12.ジャベリン・スミス
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「スミスの車を爆発させたのは私よ。スミスは統括者の名前。彼は王族の人間で苗字を持つことができる人間。苗字はジャベリンよ。街の人間は皆彼を恐れているわ。目をつけられたら仕事なくなるからね。スミスの高級車を爆発した時はスッキリしたわ」
レイラはウイスキーをロックで飲み干すと、私の前に小皿を置いてミックスナッツを入れてくれた。この国では王族のみ苗字を持つことができ、それは権力者の証だ。王家の力は絶対的なもので誰も歯向かうことはできない。武器は言葉といった非人道的思想も覆すことはできず、もし非難しようものなら命を落とすことさえある。今日の出来事が良い例だ。私たちはジャベリン・スミスの命令で殺されそうになった。
ジントニックの氷が音を立てて溶けていく。
「あの護衛兵もしぶといわね。まだ生きているよ。名前はガイネ。あなたの仇ね」
レイラは私の目をジッと見つめて教えてくれた。茶色い目が深刻さを伝える。私は自分の手で殺さなければならない相手だと言った。
グラスの氷が少ない。私は全て飲み干した。
「私はね、奴隷制度廃止運動をジェイクと始めたの。この国から奴隷制度をなくすのよ」
私は目を見開いた。レイラは自分のグラスにウイスキーを注ぐ。
「この国はおかしい。あなただってそう思わない?王家が民衆を掌握し、非人道的思想を植え付けて逆らえば拘束する。王家はね、奴隷制度をつくって民衆に恐怖と優越感を与えてるの。働かないと税金を払えず奴隷にならざる得ない恐怖と、自身が奴隷ではない優越感よ」
そう言うとジェイクのもとへ行った。
ジェイクはゲラゲラ笑ってる。
レイラはアリスを助けに行ったみたいだ。
祭りの会場は静かだった。スミスの言葉に拍手も喝采もない。説教に近い話を聞いている人々は、どこか他人ごとのように受け流していた。目をつけられないように顔は相手に向けるが聞き流していた。きっと彼らにとって王家の望むことなどどうでもよいのだ。日々仕事に励み美味しいお酒やご飯を食べる。それが彼らにとっての幸せなのだ。だから国の思想を非難することなど絶対にしない。その行為は幸せを失うから。そしてそこには彼らの自由はない。王家の顔色を見ながら追放されないように生きる。まるで国の奴隷だ。民衆は王家の所有物になっている。この事実を皆理解しているのだろうか。いや理解はしていないだろう。理解していれば優越感など生まれない。昔、奴隷市場へ向かうトラックに乗った私たちを蔑む目を忘れはしない。レイラはおそらく奴隷制度を廃止することで、奴隷だけではなく国民を自由にしたいのだ。自由に想い、自由に語り、自由に表現できる国にしたいのだ。レイラのタトゥーを思い出した。大蛇は再生を意味する。国を蘇生させたいのか。私は身震いして目の前にあるウイスキーを飲んだ。
肩の傷口にレイラは薬草を塗ってくれた。銃で撃たれた時にはとても効果があるらしい。そのせいか痛みが徐々に減っていく。だがそれ以上にレイラは私の身体の回復力に驚嘆している。普通なら薬草を塗っても熱を出し数日は寝込むらしい。私は昔から傷の回復が早いと答えた。
気がつけば兄妹は仲直りしたようで、私とレイラ、ジェイクとアリスの四人で話しをする。皆酒を飲みながら私へ奴隷制度廃止計画を説明してくれる。
要約するとレイラは以前、西部にある隣国と戦う都市ガリシカに住んでいた。そのため太いパイプを持ち武器を調達できる。ジェイクはガソリンスタンドで働いていて、いざ王家を攻め落とすときにはそのガソリンを無料で提供するという。アリスはメンバーに入っていない。戦うことはしたくないみたいだ。
王家と戦い自由を得ることを聞き驚く。なぜそこまでして奴隷制度を廃止したいのか疑問に思う。自分の命をかけてまで廃止すべきものだろうか。大切な人まで危険な目に合わせるかもしれないのに。私は戦う以外に方法がないか尋ねるが、他は考えられないとジェイクは言う。
「ダーチ、お前もチームのメンバーにならないか?」
弟を見つけ奴隷から解放することは奴隷制度廃止に繋がるとジェイクは言う。
私はただ自分のためにするだけだから繋がらないと答えた。そもそもこの国に愛着がないから今後王家によって国民がどうなろうと構わない。応援はするが協力はできないと断った。レイラは少し落ち込んだ顔で気が変わったらいつでも教えてと言う。アリスは安心した表情で私を見ている。
赤いライトが綺麗に輝いているから上を向くとシャンデリアが美しく佇んでいた。佇むという表現がなぜかしっくりくる。もしかして酔っているのかもしれない。いや酔っ払っている。こんなに酒を飲んだことは今までない。なぜか全てが自分の思い通りになる気がする。肩の痛みも酒で麻痺して、もう治ったと思い動かすと気絶する程痛い。銃で撃たれたんだ。勘違いも甚だしい。カチ カチ カチカチ ガチャ
幻聴だろうか入口の扉から音がする。隣りに座るアリスを見ると私を見ていて目が会うと首を横に傾げていた。扉がゆっくりと開いた。
「こんばんは。今夜は冷えますね」
冷たい風が店内に侵入する。
レイラは入口に立つ訪問者を睨む。
私は振り返り男の顔を見ると驚いた。
そこには奴隷商人のラベルが笑顔で立っていたのだ。
ラベルは扉を閉めてフラリフラリとカウンター席に座って足を組みはじめた。肩肘を付いて棚に並ぶ酒を眺める様子はどこか落ち着いている。不気味な目つきで私を見て話しだす。
「まさかスミスを怒らせてしまうとはねぇ。それにしても妖魔の力は偉大だねぇ」
ラベルはソファで眠るシナを眺めて笑っている。
「ここから出ていけ」
レイラはラベルに近づいて銃を向けた。
レイラはウイスキーをロックで飲み干すと、私の前に小皿を置いてミックスナッツを入れてくれた。この国では王族のみ苗字を持つことができ、それは権力者の証だ。王家の力は絶対的なもので誰も歯向かうことはできない。武器は言葉といった非人道的思想も覆すことはできず、もし非難しようものなら命を落とすことさえある。今日の出来事が良い例だ。私たちはジャベリン・スミスの命令で殺されそうになった。
ジントニックの氷が音を立てて溶けていく。
「あの護衛兵もしぶといわね。まだ生きているよ。名前はガイネ。あなたの仇ね」
レイラは私の目をジッと見つめて教えてくれた。茶色い目が深刻さを伝える。私は自分の手で殺さなければならない相手だと言った。
グラスの氷が少ない。私は全て飲み干した。
「私はね、奴隷制度廃止運動をジェイクと始めたの。この国から奴隷制度をなくすのよ」
私は目を見開いた。レイラは自分のグラスにウイスキーを注ぐ。
「この国はおかしい。あなただってそう思わない?王家が民衆を掌握し、非人道的思想を植え付けて逆らえば拘束する。王家はね、奴隷制度をつくって民衆に恐怖と優越感を与えてるの。働かないと税金を払えず奴隷にならざる得ない恐怖と、自身が奴隷ではない優越感よ」
そう言うとジェイクのもとへ行った。
ジェイクはゲラゲラ笑ってる。
レイラはアリスを助けに行ったみたいだ。
祭りの会場は静かだった。スミスの言葉に拍手も喝采もない。説教に近い話を聞いている人々は、どこか他人ごとのように受け流していた。目をつけられないように顔は相手に向けるが聞き流していた。きっと彼らにとって王家の望むことなどどうでもよいのだ。日々仕事に励み美味しいお酒やご飯を食べる。それが彼らにとっての幸せなのだ。だから国の思想を非難することなど絶対にしない。その行為は幸せを失うから。そしてそこには彼らの自由はない。王家の顔色を見ながら追放されないように生きる。まるで国の奴隷だ。民衆は王家の所有物になっている。この事実を皆理解しているのだろうか。いや理解はしていないだろう。理解していれば優越感など生まれない。昔、奴隷市場へ向かうトラックに乗った私たちを蔑む目を忘れはしない。レイラはおそらく奴隷制度を廃止することで、奴隷だけではなく国民を自由にしたいのだ。自由に想い、自由に語り、自由に表現できる国にしたいのだ。レイラのタトゥーを思い出した。大蛇は再生を意味する。国を蘇生させたいのか。私は身震いして目の前にあるウイスキーを飲んだ。
肩の傷口にレイラは薬草を塗ってくれた。銃で撃たれた時にはとても効果があるらしい。そのせいか痛みが徐々に減っていく。だがそれ以上にレイラは私の身体の回復力に驚嘆している。普通なら薬草を塗っても熱を出し数日は寝込むらしい。私は昔から傷の回復が早いと答えた。
気がつけば兄妹は仲直りしたようで、私とレイラ、ジェイクとアリスの四人で話しをする。皆酒を飲みながら私へ奴隷制度廃止計画を説明してくれる。
要約するとレイラは以前、西部にある隣国と戦う都市ガリシカに住んでいた。そのため太いパイプを持ち武器を調達できる。ジェイクはガソリンスタンドで働いていて、いざ王家を攻め落とすときにはそのガソリンを無料で提供するという。アリスはメンバーに入っていない。戦うことはしたくないみたいだ。
王家と戦い自由を得ることを聞き驚く。なぜそこまでして奴隷制度を廃止したいのか疑問に思う。自分の命をかけてまで廃止すべきものだろうか。大切な人まで危険な目に合わせるかもしれないのに。私は戦う以外に方法がないか尋ねるが、他は考えられないとジェイクは言う。
「ダーチ、お前もチームのメンバーにならないか?」
弟を見つけ奴隷から解放することは奴隷制度廃止に繋がるとジェイクは言う。
私はただ自分のためにするだけだから繋がらないと答えた。そもそもこの国に愛着がないから今後王家によって国民がどうなろうと構わない。応援はするが協力はできないと断った。レイラは少し落ち込んだ顔で気が変わったらいつでも教えてと言う。アリスは安心した表情で私を見ている。
赤いライトが綺麗に輝いているから上を向くとシャンデリアが美しく佇んでいた。佇むという表現がなぜかしっくりくる。もしかして酔っているのかもしれない。いや酔っ払っている。こんなに酒を飲んだことは今までない。なぜか全てが自分の思い通りになる気がする。肩の痛みも酒で麻痺して、もう治ったと思い動かすと気絶する程痛い。銃で撃たれたんだ。勘違いも甚だしい。カチ カチ カチカチ ガチャ
幻聴だろうか入口の扉から音がする。隣りに座るアリスを見ると私を見ていて目が会うと首を横に傾げていた。扉がゆっくりと開いた。
「こんばんは。今夜は冷えますね」
冷たい風が店内に侵入する。
レイラは入口に立つ訪問者を睨む。
私は振り返り男の顔を見ると驚いた。
そこには奴隷商人のラベルが笑顔で立っていたのだ。
ラベルは扉を閉めてフラリフラリとカウンター席に座って足を組みはじめた。肩肘を付いて棚に並ぶ酒を眺める様子はどこか落ち着いている。不気味な目つきで私を見て話しだす。
「まさかスミスを怒らせてしまうとはねぇ。それにしても妖魔の力は偉大だねぇ」
ラベルはソファで眠るシナを眺めて笑っている。
「ここから出ていけ」
レイラはラベルに近づいて銃を向けた。
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