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world end
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ブルードッグへ入り、各自攻略コンソールの席に着く。
「準備はいいか?」
最後に皆に確認する。目を閉じている者、コンソールを見つめる者、天井を見上げる者、各自様々だったが俺のかけ声とともに一斉にコンソールのキーボードを叩き始めた。
「ミッションスタート!」
「おい!そっちだ!フォローが甘い!」
「はい!」
「新海さん!プロトコルの変更です!繋ぎなおして下さい!」
正直、苦戦している。ブルードッグは各エリアでもっとも簡単な設定なのかと思っていた。実際、今まではそうだった。しかし、現実は違っていた。構成仕様が次々に変わり、その度に最初からやり直しになるのだ。更に折角構築したプログラムは実行前に跡形もなく破壊、というより消し去られてしまうのだ。
幸いにして相手からの攻撃はほとんどなく、今のところはメンバーの誰もかけることはなくミッションは続いている。
「くっそ!きりがないぞ!時間制限はないにしてもコレじゃどうにもならない!!」
そのとき、俺の腕に巻かれたホログラム通信機に着信が入る。
「新海さん!聞こえますか!?私です。柏木です!こっちからもミッション進行状況をモニタリングしていたんですが、相手が使っているのは恐らく破壊系です!こちらの攻撃プログラムを解読して除去しているのではなく、物理的に破壊、消去しているように見えます!これはプログラムじゃない!」
プログラムじゃない?一体どういうことだ!?俺たちが戦っている相手はシステム出はないとでも言うのか?俺は柏木から伝えられた内容をメンバーにも伝達する。
「破壊……破壊している……破壊のスキル……!新海さん!これ、雫さんです!雫さんの破壊のスキルです!」
思わぬ名前が出て来た。雫は前のミッションで皆をかばって消滅したはずだ。それになぜ雫が俺たちと戦っている?
「ロザリオさん!なぜそう思った!?」
「エフェクトです!この世界、OPWもUGWもシステムが破壊されたときは消滅エフェクトは出ません!今までのボス攻略でも相手の障壁を破壊したときはエフェクトがありませんでした!ですが今回は違います。破壊エフェクトが出ています!そして何もなかったかのように消し去られてます!これは雫さんの破壊のスキルに間違いありません!」
にわかには信じがたいが、コレが本当ならシステム本体を物理攻撃しても同じように消滅するかも知れない。ん?本体を物理攻撃?
「ガル!今までカラードッグのシステム本体に物理攻撃をしたヤツはいるか?」
「俺たちの中にか?いねぇよ!それよりこっちも手一杯なんだ!無駄口を……」
「違う。今までの歴史で、だ。石を投げるなり殴りつけるなり、とにかく物理的な手段での攻撃だ」
「それは……聞いたことがねぇ……なっ!」
やはりそうだ。俺も同じ考えを思いついたが、最初にコンソールシステムそのものを攻撃しようと提案したのは雫だ。俺の読み通りならきっと……。
「よし」
俺は胸に刺したペンをコンソールシステムに投げつけてみた。
「消えた……な。ガル、ロザリオさん見えたか?」
「ああ」
「はい」
「考えてもみなかったが、このシステムそのものが雫である可能性が高い。それならちょっと試してみたいことがある」
雫に私のバディになりなさい、と最初に言われたとき、迷子札のようなドッグタグを渡されたのだ。私とはぐれたときは、これをホログラム通信機にかざしなさい、と。
光るホログラム通信機。ホログラム通信機から出た光はコンソールシステムを指し示している。俺は通信機能で会話を試みる。
「雫、俺だ。新海だ。分かるか?そこにいるのか?聞こえているのなら返事をしてくれ」
何の反応もない。やはり俺の思い過ごしなのだろうか。そのとき、アリーシュさんが自分の横にやってきて試してほしいことがあると言いながら俺のホログラム通信機に自分のホログラム通信機を有線接続をした。
「もし、このシステムそのものが雫なら……」
【Confirm authority. Allow command input.】
「成功したわ。私たち各カラーマスターは自分の管理するシステムコンソールに直接アクセスする権限を持っているの。このブルードッグは私の権限じゃアクセス出来ないけど、このシステムそのものが雫、あなたがそのバディなら……、あなたを介してアクセスできるんじゃないかと思ったの。イエロードッグで自分の管理するコンソールシステムに同じことをしてもダメだったけどね。もしかしたらって」
アリーシュさんがシステムへのコンタクトを開始しようとした瞬間、全員の攻略コンソールに雫が現れた。
「あー。随分早くバレちゃったわね。もっと引っ張れると思ったのになぁ」
「おい!雫、どういうことだ!お前はなぜ……そうか。そういうことか。お前がオールド・マスターか。本当の雫は支配の塔、大聖堂に封印されたdropsだな?」
「ちょ、ちょっとまて!それじゃ俺たちが反攻作戦で見たオールド・マスターは何だったんだ!?あれは確かに俺の親父だったぞ!?」
ガルは混乱した様子で俺を問いつめる。それにはアリーシュさんが答える。
「ガル、あの反攻作戦でオールド・マスターの前まで行けた攻略組プレーヤーはいたかしら?それに無理な作戦を押し進めようとしていたのは誰かしら?それに……あなたは父親とのなにか思い出はあるかしら?」
「俺と親父は……親父は……雫が……雫が…………」
「ガル、どうした?」
「全部、雫と親父の思い出だ。雫のいない思い出はない。記憶はない!なんでだよ!」
「それが作られた記憶だとしたら?そもそも私たちは存在するのかしら?ねぇどうなの?雫」
「……そうね。どうなのかしら?試しに何かしてみたらどうかしら?」
「ロザリオさん、コンソールからではなく俺のコネクションポート経由で俺自身を攻略してみてくれないか?」
「そんなことしたら!」
「適当に突っつくくらいでいい。俺は防御行動はなにもしない。俺の予想が正しければ、俺自身を攻略することは出来ないはずだ」
ロザリオさんはホログラム通信機と俺のコネクションポートを接続し、簡単な防御破壊プログラムを実行した。
「プログラム自体が走らないわ」
「次に。同じようにアリーシュさんのコネクションポートから同じプログラムを走らせてみてくれ。アリーシュさんも防御行動はなにもしないでくれ」
「プログラムが……走ったわ!どういうことなの!?」
「雫、このメンバーで実体を持っているのは俺、セルシス、ロザリオ、この3人だけだな?その他のローライン、ガル、ヘルエス、アリーシュは実体のないプログラム構成体だな?つまり、OPWに元々居たプレーヤーは実体のあるプレーヤー、UGWに元々いたプレーヤーは実体のないプレーヤー、そう言うことじゃないか?」
「新海さん、それってどういう……」
セルシスが不安げな声を上げる。ローラインは自身の両手を見つめている。
「まぁ、元々、勘が鋭いとは思っていたけども。そうね。その通りよ。ちなみに、私も実体を持たないプログラム構成体よ。本物の雫は想像の通り支配の塔地下大聖堂にいた彼女。彼女は各カラードッグから本来はシステムそのものの攻撃タイミングをプレーヤーに指示していたつもりだったみたいだけど。私がOPWプレーヤーを攻撃すればブラックマネーが手に入る、ってふれて回ったのよ」
「なんでそんなことを……!雫!答えろ!」
ガルは興奮した様子で雫を問い詰める。
「簡単じゃない。OPWからこの世界により多くの住人を連れてくるためよ?OPWなんて幻想の世界。私の管理し得ない世界。世界は私。この世界は私の世界……」
「雫、お前は……」
「でもなぜ?OPWは監獄なんでしょ?私たちはその監獄のような世界を飛び出してseven keys worldの攻略をしてきたわ!」
ロザリオさんも興奮した様子で声を上げる。
「違う、ロザリオさん。地上世界、OPWの監獄のような世界を作ったのは雫だ、恐らくは管理システムそのものが実体を持たないシステムだ。警備ロボが攻略できたように、教師も攻略できた。虚無に落ちたOPWプレーヤーのモルフェスは……恐らく雫に物理的に殺された、ということだ」
「それで?新海くん続けて?」
「雫、お前はゲームを楽しんでいたんだ。違うか?そんなことをして何が楽しい?」
「変なことを聞くわね。楽しいに決まってるじゃない。自分の決めたルールの上であーだこーだ色々な考えが飛び交うの。倒すべき者が何かも知らないで。私はそれを一番近くで眺めるの。楽しいじゃない?それで?どうするの?このまま私と戦う?また実体化してスキル戦でもいいわよ?」
雫は楽しそうに俺たちを挑発する。どうする。想像が正しければこの世界の創造者である雫は絶対に倒せない。そもそも倒したからといって何がある?UGWに落とされたプレーヤーの救済?そもそもモルフェスを物理的に殺せたということは雫はプログラムではなく俺と同じ実際の人間!?
「ああ、もう!わかんねぇよ!雫、お前は一体何者なんだよ!世界の創造主か?UGWを作ったのはお前か?OPWの管理世界を作ったのもお前か!?」
「新海くん、私はね……未来が見たいのよ。この先の未来が。私の作った世界がどうなるのか。そして、私のいない世界はどんな世界なのか。中間層が本来の世界って言ったでしょ
?そこに私は存在できない。だからこの世界を作った。抗った。新海くんはきっとこの先も……見てきて。私のいない世界を。あなたはこの先も……」
雫の映像が乱れる。何かを伝えようとしているようだが雑音にかき消されて聞き取れない。
「雫!雫!!」
「新海!お前、その足!」
ガルに言われて自分の足を見ると雫と同じように映像が乱れ、それは徐々に身体に広がり粒子になって消え始めた。そう、あの時と同じだ。OPWからUGWに落ちたときと。周りを見回すと自分以外のメンバー、それだけじゃない、目に見えるすべての構造物の映像が乱れ、流子になって消え始めている。
「なに?何が起きたの??私たちどうなっちゃうの!?」
セルシスとローラインは抱き合って叫ぶ。
ガルはモニターを両手で乱暴に掴み雫を呼び続けている。ヘルエスさんとアリーシュさんはこの事態を受け入れるように粒子になる自分の手を見つめている。ロザリオさんは自身を修復出来ないかホログラム通信機を必死で操作している。
「雫!お前!」
消える瞬間、俺はそう叫んだ。しかし、雫からの返事は無かった……。
・
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・
・
・
・
・
「おーい、終わったかぁ?」
「市ノ瀬さん、何で俺がこんな面倒なことしなきゃならないんですか。ってか、カップラーメンなんて食べてないで一緒にやって下さいよ」
「あーん?麻雀に負けたのはお前だろ?自分で言い出したんじゃないか。使命は全うしろよ、若者サン」
「ヒドイっすよこれ。誰が組んだんですか。バグだらけですよ。プレーヤーが消えるとか、最初の訓練施設から出られないとか、バックグラウンドで妙なプログラムが動いていたり」
「ほぉ。デバッカーとして腕の見せ所じゃあないか。メーカーへの納品期限は明後日だからなー。それまでにキッチリ終わらせておけよぉ。じゃ、俺は帰るぞ新海」
「あー、クッソ、これ最初から作り直した方がいいんじゃねぇのか?誰が作ったんだよ。涼風雫?誰だコレ。そんなのうちに居たか?あー、もう!やってられっかよ!タバコでも吸ってくるか……。喫煙室もなくなって近所のコンビニまで行かなきゃならんとは世知辛いぜ……」
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「準備はいいか?」
最後に皆に確認する。目を閉じている者、コンソールを見つめる者、天井を見上げる者、各自様々だったが俺のかけ声とともに一斉にコンソールのキーボードを叩き始めた。
「ミッションスタート!」
「おい!そっちだ!フォローが甘い!」
「はい!」
「新海さん!プロトコルの変更です!繋ぎなおして下さい!」
正直、苦戦している。ブルードッグは各エリアでもっとも簡単な設定なのかと思っていた。実際、今まではそうだった。しかし、現実は違っていた。構成仕様が次々に変わり、その度に最初からやり直しになるのだ。更に折角構築したプログラムは実行前に跡形もなく破壊、というより消し去られてしまうのだ。
幸いにして相手からの攻撃はほとんどなく、今のところはメンバーの誰もかけることはなくミッションは続いている。
「くっそ!きりがないぞ!時間制限はないにしてもコレじゃどうにもならない!!」
そのとき、俺の腕に巻かれたホログラム通信機に着信が入る。
「新海さん!聞こえますか!?私です。柏木です!こっちからもミッション進行状況をモニタリングしていたんですが、相手が使っているのは恐らく破壊系です!こちらの攻撃プログラムを解読して除去しているのではなく、物理的に破壊、消去しているように見えます!これはプログラムじゃない!」
プログラムじゃない?一体どういうことだ!?俺たちが戦っている相手はシステム出はないとでも言うのか?俺は柏木から伝えられた内容をメンバーにも伝達する。
「破壊……破壊している……破壊のスキル……!新海さん!これ、雫さんです!雫さんの破壊のスキルです!」
思わぬ名前が出て来た。雫は前のミッションで皆をかばって消滅したはずだ。それになぜ雫が俺たちと戦っている?
「ロザリオさん!なぜそう思った!?」
「エフェクトです!この世界、OPWもUGWもシステムが破壊されたときは消滅エフェクトは出ません!今までのボス攻略でも相手の障壁を破壊したときはエフェクトがありませんでした!ですが今回は違います。破壊エフェクトが出ています!そして何もなかったかのように消し去られてます!これは雫さんの破壊のスキルに間違いありません!」
にわかには信じがたいが、コレが本当ならシステム本体を物理攻撃しても同じように消滅するかも知れない。ん?本体を物理攻撃?
「ガル!今までカラードッグのシステム本体に物理攻撃をしたヤツはいるか?」
「俺たちの中にか?いねぇよ!それよりこっちも手一杯なんだ!無駄口を……」
「違う。今までの歴史で、だ。石を投げるなり殴りつけるなり、とにかく物理的な手段での攻撃だ」
「それは……聞いたことがねぇ……なっ!」
やはりそうだ。俺も同じ考えを思いついたが、最初にコンソールシステムそのものを攻撃しようと提案したのは雫だ。俺の読み通りならきっと……。
「よし」
俺は胸に刺したペンをコンソールシステムに投げつけてみた。
「消えた……な。ガル、ロザリオさん見えたか?」
「ああ」
「はい」
「考えてもみなかったが、このシステムそのものが雫である可能性が高い。それならちょっと試してみたいことがある」
雫に私のバディになりなさい、と最初に言われたとき、迷子札のようなドッグタグを渡されたのだ。私とはぐれたときは、これをホログラム通信機にかざしなさい、と。
光るホログラム通信機。ホログラム通信機から出た光はコンソールシステムを指し示している。俺は通信機能で会話を試みる。
「雫、俺だ。新海だ。分かるか?そこにいるのか?聞こえているのなら返事をしてくれ」
何の反応もない。やはり俺の思い過ごしなのだろうか。そのとき、アリーシュさんが自分の横にやってきて試してほしいことがあると言いながら俺のホログラム通信機に自分のホログラム通信機を有線接続をした。
「もし、このシステムそのものが雫なら……」
【Confirm authority. Allow command input.】
「成功したわ。私たち各カラーマスターは自分の管理するシステムコンソールに直接アクセスする権限を持っているの。このブルードッグは私の権限じゃアクセス出来ないけど、このシステムそのものが雫、あなたがそのバディなら……、あなたを介してアクセスできるんじゃないかと思ったの。イエロードッグで自分の管理するコンソールシステムに同じことをしてもダメだったけどね。もしかしたらって」
アリーシュさんがシステムへのコンタクトを開始しようとした瞬間、全員の攻略コンソールに雫が現れた。
「あー。随分早くバレちゃったわね。もっと引っ張れると思ったのになぁ」
「おい!雫、どういうことだ!お前はなぜ……そうか。そういうことか。お前がオールド・マスターか。本当の雫は支配の塔、大聖堂に封印されたdropsだな?」
「ちょ、ちょっとまて!それじゃ俺たちが反攻作戦で見たオールド・マスターは何だったんだ!?あれは確かに俺の親父だったぞ!?」
ガルは混乱した様子で俺を問いつめる。それにはアリーシュさんが答える。
「ガル、あの反攻作戦でオールド・マスターの前まで行けた攻略組プレーヤーはいたかしら?それに無理な作戦を押し進めようとしていたのは誰かしら?それに……あなたは父親とのなにか思い出はあるかしら?」
「俺と親父は……親父は……雫が……雫が…………」
「ガル、どうした?」
「全部、雫と親父の思い出だ。雫のいない思い出はない。記憶はない!なんでだよ!」
「それが作られた記憶だとしたら?そもそも私たちは存在するのかしら?ねぇどうなの?雫」
「……そうね。どうなのかしら?試しに何かしてみたらどうかしら?」
「ロザリオさん、コンソールからではなく俺のコネクションポート経由で俺自身を攻略してみてくれないか?」
「そんなことしたら!」
「適当に突っつくくらいでいい。俺は防御行動はなにもしない。俺の予想が正しければ、俺自身を攻略することは出来ないはずだ」
ロザリオさんはホログラム通信機と俺のコネクションポートを接続し、簡単な防御破壊プログラムを実行した。
「プログラム自体が走らないわ」
「次に。同じようにアリーシュさんのコネクションポートから同じプログラムを走らせてみてくれ。アリーシュさんも防御行動はなにもしないでくれ」
「プログラムが……走ったわ!どういうことなの!?」
「雫、このメンバーで実体を持っているのは俺、セルシス、ロザリオ、この3人だけだな?その他のローライン、ガル、ヘルエス、アリーシュは実体のないプログラム構成体だな?つまり、OPWに元々居たプレーヤーは実体のあるプレーヤー、UGWに元々いたプレーヤーは実体のないプレーヤー、そう言うことじゃないか?」
「新海さん、それってどういう……」
セルシスが不安げな声を上げる。ローラインは自身の両手を見つめている。
「まぁ、元々、勘が鋭いとは思っていたけども。そうね。その通りよ。ちなみに、私も実体を持たないプログラム構成体よ。本物の雫は想像の通り支配の塔地下大聖堂にいた彼女。彼女は各カラードッグから本来はシステムそのものの攻撃タイミングをプレーヤーに指示していたつもりだったみたいだけど。私がOPWプレーヤーを攻撃すればブラックマネーが手に入る、ってふれて回ったのよ」
「なんでそんなことを……!雫!答えろ!」
ガルは興奮した様子で雫を問い詰める。
「簡単じゃない。OPWからこの世界により多くの住人を連れてくるためよ?OPWなんて幻想の世界。私の管理し得ない世界。世界は私。この世界は私の世界……」
「雫、お前は……」
「でもなぜ?OPWは監獄なんでしょ?私たちはその監獄のような世界を飛び出してseven keys worldの攻略をしてきたわ!」
ロザリオさんも興奮した様子で声を上げる。
「違う、ロザリオさん。地上世界、OPWの監獄のような世界を作ったのは雫だ、恐らくは管理システムそのものが実体を持たないシステムだ。警備ロボが攻略できたように、教師も攻略できた。虚無に落ちたOPWプレーヤーのモルフェスは……恐らく雫に物理的に殺された、ということだ」
「それで?新海くん続けて?」
「雫、お前はゲームを楽しんでいたんだ。違うか?そんなことをして何が楽しい?」
「変なことを聞くわね。楽しいに決まってるじゃない。自分の決めたルールの上であーだこーだ色々な考えが飛び交うの。倒すべき者が何かも知らないで。私はそれを一番近くで眺めるの。楽しいじゃない?それで?どうするの?このまま私と戦う?また実体化してスキル戦でもいいわよ?」
雫は楽しそうに俺たちを挑発する。どうする。想像が正しければこの世界の創造者である雫は絶対に倒せない。そもそも倒したからといって何がある?UGWに落とされたプレーヤーの救済?そもそもモルフェスを物理的に殺せたということは雫はプログラムではなく俺と同じ実際の人間!?
「ああ、もう!わかんねぇよ!雫、お前は一体何者なんだよ!世界の創造主か?UGWを作ったのはお前か?OPWの管理世界を作ったのもお前か!?」
「新海くん、私はね……未来が見たいのよ。この先の未来が。私の作った世界がどうなるのか。そして、私のいない世界はどんな世界なのか。中間層が本来の世界って言ったでしょ
?そこに私は存在できない。だからこの世界を作った。抗った。新海くんはきっとこの先も……見てきて。私のいない世界を。あなたはこの先も……」
雫の映像が乱れる。何かを伝えようとしているようだが雑音にかき消されて聞き取れない。
「雫!雫!!」
「新海!お前、その足!」
ガルに言われて自分の足を見ると雫と同じように映像が乱れ、それは徐々に身体に広がり粒子になって消え始めた。そう、あの時と同じだ。OPWからUGWに落ちたときと。周りを見回すと自分以外のメンバー、それだけじゃない、目に見えるすべての構造物の映像が乱れ、流子になって消え始めている。
「なに?何が起きたの??私たちどうなっちゃうの!?」
セルシスとローラインは抱き合って叫ぶ。
ガルはモニターを両手で乱暴に掴み雫を呼び続けている。ヘルエスさんとアリーシュさんはこの事態を受け入れるように粒子になる自分の手を見つめている。ロザリオさんは自身を修復出来ないかホログラム通信機を必死で操作している。
「雫!お前!」
消える瞬間、俺はそう叫んだ。しかし、雫からの返事は無かった……。
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「おーい、終わったかぁ?」
「市ノ瀬さん、何で俺がこんな面倒なことしなきゃならないんですか。ってか、カップラーメンなんて食べてないで一緒にやって下さいよ」
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「ヒドイっすよこれ。誰が組んだんですか。バグだらけですよ。プレーヤーが消えるとか、最初の訓練施設から出られないとか、バックグラウンドで妙なプログラムが動いていたり」
「ほぉ。デバッカーとして腕の見せ所じゃあないか。メーカーへの納品期限は明後日だからなー。それまでにキッチリ終わらせておけよぉ。じゃ、俺は帰るぞ新海」
「あー、クッソ、これ最初から作り直した方がいいんじゃねぇのか?誰が作ったんだよ。涼風雫?誰だコレ。そんなのうちに居たか?あー、もう!やってられっかよ!タバコでも吸ってくるか……。喫煙室もなくなって近所のコンビニまで行かなきゃならんとは世知辛いぜ……」
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