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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

19.

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「…死にたくなくば動くな…」

マキシオはベッドルームへロゼッタを連れ込んだ。
しかし、肩に担いでいたロゼッタの重さが消えたと思った瞬間、首筋に短剣を突きつけられていた。

「…なっ!?」

驚いた彼は振り向こうとした瞬間に、ガツンと首の後ろに痛みを感じて意識を失ったーーーー。


「……うぅ…」

首の後ろに痛みを感じながら、マキシオは首を押えながら体を起こした。

「っ!ここは……」

目を開けて周囲の景色が馴染みの場所だと分かると、彼は腰に手を持っていった。

「っ!?」

そこにはあるはずの自分の剣が無かった。

「…やあ。気がついたかい?」

背後から掛けられた声に慌てて跪き、騎士としての姿勢を取る。

「へぇ…。誰が自分の使える主かは覚えてるんだ?」

クスクス笑っているのは、自国の王太子カイエンだった。

「…カイエン殿下。自分は…」

マキシオがいるのは、騎士団のだった。
いつもならば、机と椅子が並べられているそこは、今は壁際へと寄せられ、カイエンが座る椅子だけが部屋の中央に置かれていた。
そして、そこから離れた彼は先程まで転がされていたのだ。
そして、カイエンの背後だけではなく、壁に沿うようにズラリと同僚達が並んで立っていた。
誰も彼も失望したような顔や、軽蔑したような顔で、マキシオを見ていた。

「マキシオ・マイデール。お前の忠誠は?」

冷たく威厳のある声が、マキシオに投げかけられる。
ゴクリと固唾を飲み込み、マキシオはゆっくりと顔を上げた。

「……私の忠誠は王家のものでございます」

答えたマキシオに、カイエンは肩を竦めて、手を上げた。

「…連れて来い…」

連れてこられたのは二人の男と女が一人だった。
だが、彼らの顔を見るなり、マキシオは全身の血が凍りつくような気がした。

何故だ?何故、こいつらが、ここにいる?

彼らはマキシオが小銭を渡して噂を広めるために雇っていた男達と、ロゼッタの様子を見張らせるためにグリオール伯爵家に紹介して雇わせた女だった。

「……彼らが誰か知ってるかい?」

優雅に足を組み、椅子に背を預けたカイエンの言葉に、マキシオは何処まで知られたのかと、必死で考え出した。

「ああ。別に答えなくても構わないよ。こちらの調べは済んでるからね…」

サッと手を上げると、連れてこられていた三人は、部屋を出されて行った。

「さて。君は何が問題で、ここにいると思う?」

ニコニコ笑うカイエンに、マキシオは視線をさまよわせる。

「……グリオール伯爵夫人への態度…でしょうか?」

「そうだね。もあるね…」

「…ランディへの…。グリオール伯爵の噂を広めたことですか?」

カイエンはチラッと横に視線を向けた。
そこにはいつ来たのか、ランディ・グリオールの姿があったーーーー。
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