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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

23.

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「んー。ちょっと色々困ったことが分かってね…。君達夫婦に協力を頼みたい。その代わりに、正しい知識を与えようって事になったんだ…」

カイエンの言葉に、ランディは首を傾げながらも頷いた。

「自分共がお役に立つと申されるならば、喜んでお手伝いさせていただきます。ですが、正しい知識とは、何の事でございましょうか?」

貴族たるもの、王族に命じられるでなく頼まれたのだ。これを断るなどとんでもないと思い、協力を申し出たものの、ランディは何故そんな話をされるのか分からなかった。

「ランディ・グリオール。我々が今いるこの場所が、どういうとこかは知ってるかい?」

「…高級娼館です」

からかうようなカイエンの言葉に、ランディは少しムッとしたものの、顔には出さずに答えた。

「うん、正解。で、質問なんだけど、正直に答えるように。でないと、シルフィアに離婚させられちゃうからね♪」

「は?シルフィア様に、でございますか?」

ギョッとするも思い当たる事が合ったのか黙り込む。

「……君。夫人と床を共にするまで、女性経験は?」

「はあっ!?」

突然の言葉に、真っ赤になったランディ。

「あ、あ、あ、兄上ぇ?」

ユエインは首まで真っ赤になっている。彼は今日、娼館ここにランディを連れてくるようにとしか聞かされてなかった。

「……答えは、グリオール伯爵?」

有無を言わさぬ笑みを浮かべて、答えを問うカイエンに、ランディは息を吐き出した。

「………ございません…」

俯きながら答える彼に、エイデンが驚いている。

「え?伯爵って二十二だよね?その年まで、全然?」

「……物心ついた時には、ロゼッタが婚約者としておりましたので…。その…、不誠実かと思いましたので、その手の誘いは全て断らせていただいておりました……」

「なるほど。そこに付け込まれたんだな…」

「ですね…。誠実さが仇になりましたね…」

呟くカイエンにエイデンが同意する。
ユエインは既に容量を越えて、背もたれに倒れ込んでいる。

「ランディ。最近、君達夫婦のある噂が流れてるのは知っているかい?」

カイエンの言葉に、ランディの眉間にシワが寄った。

「…存じております…。ロゼッタには自分ではない想い人がいたと……」

「で?君はそれを信じてる?」

「信じてはおりません!」

カイエンの言葉に顔を上げて、ランディはそう言いきった。

「ロゼッタには自分しかいない。そのはずなんです。他に想う者がいるというなら…。他の男に心を寄せながら、自分の妻となるような女性ではありません…。ですが……」

顔を隠すように両手で覆い、ランディは言葉を続けた。

「ですが、嫁いでからの彼女は、塞ぎ込んで部屋に篭もることが多くなりました。身を任せてはくれますが、その瞳には自分を写してくれてはいない……。ならば!ならば、後継を産んでもらった後は、彼女を自由にしようかと……」

「……いや。聞けばいいだろ」

「認められたら、その瞬間、相手を殺しに行きそうです……」

返された言葉に、うわぁと天を仰ぎ見るエイデン。

「だから、事が済んだら、さっさと部屋を出てくのかい?」

「…自分がいてはロゼッタが落ち着いて休めないでしょうから…」

「……別に好きな女性がいるからではないのですか?」

「自分はロゼッタしか女性として見たことはな……い……」

突然、女性の声で問いかけられ、ランディは反射的に答えながら、顔を上げるなり真っ赤になったーーーー。
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