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第二章 アーディル十歳
リコリスの花言葉
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[フィルディア視点]
今日からは王宮住まいになって、宮の案内をアーディ様にしていただいた。
真っ先に案内されたのは、色とりどりのリコリスの花畑。
「フィルが好きだと言っていたので、リコリスの花畑を作ってもらいました♪」
そう言って、にっこり笑ったアーディ様に、ワタクシは言葉を無くしました。
だって、ワタクシがリコリスを好きだと言ったのは一度っきり。初めて会った顔合わせの日だけなのです。
驚きのあまり、その後に案内された場所のことなど、ほとんど頭に入りませんでした。
「それでは、晩餐の時に会いましょうね♪」
護衛を連れて立ち去るアーディ様に頭を下げ、そのまま固まっていたワタクシに声をかけたのはステリナでした。
「お嬢様?何かありました?」
「……ステリナ。この部屋からどんな景色が見れますの?」
「バルコニーからリコリス畑が見えますね…。お嬢様、御要望を出されていたのですか?」
ゆるゆると頭を上げてそう問うと、首を傾げながらも彼女は答えました。こう言ってきたなら、ステリナの助言ではなく、本当にアーディ様自身の考えなのでしょう。
「~~~っ!!」
ボフッと音が出そうなくらいに真っ赤な顔を隠そうと、両手で顔を覆って下を向きました。
何なんですか、あの方はっ!!ワタクシの事、好きすぎませんかっ!?
初めて焼いたクッキーも、とても食べ物の固さでないと言うのに、一人で半月もかけて平らげた挙句、
『《身体強化》のレベルが一気に上がりました!フィルのおかげですね♪』
味見もせずに渡してしまったワタクシが言えた義理ではありませんが、前向きすぎではありませんか?
アルから話を聞いたものの、もう一度欲しいとアーディ様に頼まれ、作って味見した瞬間、死にたくなるほどの衝撃でしたもの。
ワタクシ、クッキーではなく岩石を作ってしまったのです……。
だって、《鑑定》してもらった結果。
【岩石クッキー】
岩のように固いクッキー。
日持ちがする。
味と栄養分は普通のクッキーと変わらない。
食べる時に《身体強化》が必要。食べ切ればレベルが激上がりする。
マリアお祖母様に、エイデル商会の中だけで、レベル上げ専用品として取り扱いとまで言われたのです。
ええ。落ち込みましたわ。《不器用》というスキルの本気に……。
そんな【不憫スキル】持ちのワタクシだと言うのに、アーディ様からの婚約破棄は不可能なのです。
あまりの申し訳なさに、自分から言い出そうとしても、何故か言いたくないのです。
とりあえず晩餐の前に、お礼の手紙を書いて、白のリコリスを添えてもらってアーディ様へと言付けました。
「……そう言えば、お嬢様の好きなリコリスの色は白でしたね♪」
一息つくと、ステリナがそう声をかけてきました。
「…ええ。赤のリコリスの中に時々、白があるでしょう。それを見てからかしら…」
その言葉に、ステリナがにんまりと笑いました。
ステリナがこんな顔をする時は、ワタクシにはたいてい宜しくない発言が出てくるので、思わず身構えました。
「赤のリコリスの花言葉は『情熱』、『諦め』、『独立』だそうですが、白のリコリスの花言葉は『また会う日まで』…」
「………」
身構える必要のなかった言葉に、体の力を抜いた瞬間でした。
「…そして、『思うはあなた一人』だそうですよ♪」
「っ!?」
なんで今、それを言うのですかっ!
アーディ様に白のリコリスを贈った後ではありませんかっ!!
「ス、ステリナ…。あなた、わざと黙ってましたわね!」
「アーディ様が花言葉をご存知でないとよろしいですわね♪」
にっこり笑うワタクシ付きの『護衛メイド』は、ワタクシに仕えているわけではありません。
ステリナが仕えている主を、ワタクシもアルも知らないのです。
そもそもお母様やお父様が、アーディ様への手助けのような真似をさせるとも思えません。
ですが、そんなことより問題は時間が迫ってくる晩餐です。
ワタクシ、どんな顔で行けばいいのでしょうか…………。
今日からは王宮住まいになって、宮の案内をアーディ様にしていただいた。
真っ先に案内されたのは、色とりどりのリコリスの花畑。
「フィルが好きだと言っていたので、リコリスの花畑を作ってもらいました♪」
そう言って、にっこり笑ったアーディ様に、ワタクシは言葉を無くしました。
だって、ワタクシがリコリスを好きだと言ったのは一度っきり。初めて会った顔合わせの日だけなのです。
驚きのあまり、その後に案内された場所のことなど、ほとんど頭に入りませんでした。
「それでは、晩餐の時に会いましょうね♪」
護衛を連れて立ち去るアーディ様に頭を下げ、そのまま固まっていたワタクシに声をかけたのはステリナでした。
「お嬢様?何かありました?」
「……ステリナ。この部屋からどんな景色が見れますの?」
「バルコニーからリコリス畑が見えますね…。お嬢様、御要望を出されていたのですか?」
ゆるゆると頭を上げてそう問うと、首を傾げながらも彼女は答えました。こう言ってきたなら、ステリナの助言ではなく、本当にアーディ様自身の考えなのでしょう。
「~~~っ!!」
ボフッと音が出そうなくらいに真っ赤な顔を隠そうと、両手で顔を覆って下を向きました。
何なんですか、あの方はっ!!ワタクシの事、好きすぎませんかっ!?
初めて焼いたクッキーも、とても食べ物の固さでないと言うのに、一人で半月もかけて平らげた挙句、
『《身体強化》のレベルが一気に上がりました!フィルのおかげですね♪』
味見もせずに渡してしまったワタクシが言えた義理ではありませんが、前向きすぎではありませんか?
アルから話を聞いたものの、もう一度欲しいとアーディ様に頼まれ、作って味見した瞬間、死にたくなるほどの衝撃でしたもの。
ワタクシ、クッキーではなく岩石を作ってしまったのです……。
だって、《鑑定》してもらった結果。
【岩石クッキー】
岩のように固いクッキー。
日持ちがする。
味と栄養分は普通のクッキーと変わらない。
食べる時に《身体強化》が必要。食べ切ればレベルが激上がりする。
マリアお祖母様に、エイデル商会の中だけで、レベル上げ専用品として取り扱いとまで言われたのです。
ええ。落ち込みましたわ。《不器用》というスキルの本気に……。
そんな【不憫スキル】持ちのワタクシだと言うのに、アーディ様からの婚約破棄は不可能なのです。
あまりの申し訳なさに、自分から言い出そうとしても、何故か言いたくないのです。
とりあえず晩餐の前に、お礼の手紙を書いて、白のリコリスを添えてもらってアーディ様へと言付けました。
「……そう言えば、お嬢様の好きなリコリスの色は白でしたね♪」
一息つくと、ステリナがそう声をかけてきました。
「…ええ。赤のリコリスの中に時々、白があるでしょう。それを見てからかしら…」
その言葉に、ステリナがにんまりと笑いました。
ステリナがこんな顔をする時は、ワタクシにはたいてい宜しくない発言が出てくるので、思わず身構えました。
「赤のリコリスの花言葉は『情熱』、『諦め』、『独立』だそうですが、白のリコリスの花言葉は『また会う日まで』…」
「………」
身構える必要のなかった言葉に、体の力を抜いた瞬間でした。
「…そして、『思うはあなた一人』だそうですよ♪」
「っ!?」
なんで今、それを言うのですかっ!
アーディ様に白のリコリスを贈った後ではありませんかっ!!
「ス、ステリナ…。あなた、わざと黙ってましたわね!」
「アーディ様が花言葉をご存知でないとよろしいですわね♪」
にっこり笑うワタクシ付きの『護衛メイド』は、ワタクシに仕えているわけではありません。
ステリナが仕えている主を、ワタクシもアルも知らないのです。
そもそもお母様やお父様が、アーディ様への手助けのような真似をさせるとも思えません。
ですが、そんなことより問題は時間が迫ってくる晩餐です。
ワタクシ、どんな顔で行けばいいのでしょうか…………。
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