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第二章 アーディル十歳
……え?
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[ステリナ視点]
フィルディアお嬢様が、王宮で暮らしだして早数日が過ぎました。
「……素晴らしい!お見事ですわ、フィルディア様っ!」
本日は教養の一つとして、専門にする楽器を選ぶはずでした……。ええ、過去形。
数多ある楽器の中から、本日はお嬢様と相性の良い楽器を選ぶはずだったのですが、あのお二人のお子様であるお嬢様が普通なわけがありません。
初見の楽器も容易く使いこなされましたね……。さすが、《体さばき》と《音感》スキルです。いい仕事してます。
ですがさすがにおかしいと思い、こっそり《鑑定》使ってみましたら、生えてましたよ。
【職業スキル】《音楽家》。
担当の女教師様はそりゃもう興奮して止まりません。
次から次へとお嬢様に楽器を手渡し、その音色を楽しんでいらっしゃいます。……仕事しろ……。
王妃様にお知らせした所、楽器の授業が無くなりました。
「そんな……。そんなぁ……」
王妃様からのお言葉に、打ちひしがれていらっしゃいましたけど、仕方ないです。あきらめて……。
さて、授業科目が減ったわけですが、お嬢様の希望で《剣術》が加わりました。
これには反対意見がかなり出たそうなのですが……。うちのお嬢様ですよ?お持ちのスキルを説明した所、不在だったアーディル様以外は皆様納得されました。
「ダメですよ、フィル!ケガをしたらどうするのです!!」
「…問題ありませんわ。幼い頃からステリナ達に護身術を習ってましたから♪」
両手を握りしめて説得しようとするアーディル様ですが、お嬢様はバッサリと笑顔で切り捨てます。
護身術……。護身術かなぁ、あれ……。
確かにお嬢様は《剣術》スキルをお持ちです。お屋敷では暴漢役の私共相手に、意気揚々と剣を振り回して、追っかけ回しておいででした。護身とは………。
「ですが……」
「いや、そんなに心配なら、殿下がフィルと手合わせしてみればよくないですか?」
アーディル様のところに来ていた坊っちゃまの言葉に、喜んだのはお嬢様でした。
「そうですわ!ワタクシと手合わせをして頂ければ、ワタクシの剣の腕も分かりますわ!!」
「ええーっ!!」
哀れアーディル様は、お嬢様との手合わせが決定したのです。
アーディル様、不憫すぎる………。
※※※※※※※※※※
[アーディル視点]
現在、私は騎士団の訓練場に立っています。
どうして、こうなったのでしょうか?
「それでは、二人とも準備はよろしいですか?」
フィルの父君であり、騎士団長でもあるグランディバルカス侯爵がそう声をかけてきました。
「ワタクシはいつでも結構ですわ!」
アルの練習着を身につけ、髪を後ろで一つにまとめたフィルの姿は、いつもと違った可愛らしさがあります。
ですが、私はフィルにケガをして欲しくないのです。なのに、何で手合わせすることに……。
「フィル様、手合わせですよ!手合わせですからね!」
「相手は殿下です!殿下って忘れちゃダメですよ!!」
それよりもこの周りの騎士達からフィルにかけられる言葉はどういうことでしょう?
騎士団長の子だからか、アルもかなりの腕前でしたが、フィルもなのでしょうか?それにしても、彼らの言葉はあまりにも真剣です。
「……殿下。ご武運を……」
私の護衛騎士のアイオンは、悲痛な顔色でそう言ってます。
これはもしかして、私は大変なことをしているのでしょうか?
ですが、あんなにご機嫌なフィルにやめるとも言い出せず、息を整えて木剣を構えて頷きました。
「それでは……始めっ!」
侯爵のかけ声に、フィルの木剣を叩き落とそうと足を踏み込んだ瞬間でした。
「っ!」
目に映るのは青い空。そして、背中に走る軽い痛み。
「え?」
「スキあり!ですわ♪」
呆気に取られる私の顔を覗き込むフィル。
「………え?」
「勝者フィルディア!」
侯爵の声が聞こえます。私の負けです。
周囲からは「やっぱり…」とか、「気の毒すぎる…」とか聞こえます。
「ええーーっ!?」
誰か説明してくださいっ!!
フィルディアお嬢様が、王宮で暮らしだして早数日が過ぎました。
「……素晴らしい!お見事ですわ、フィルディア様っ!」
本日は教養の一つとして、専門にする楽器を選ぶはずでした……。ええ、過去形。
数多ある楽器の中から、本日はお嬢様と相性の良い楽器を選ぶはずだったのですが、あのお二人のお子様であるお嬢様が普通なわけがありません。
初見の楽器も容易く使いこなされましたね……。さすが、《体さばき》と《音感》スキルです。いい仕事してます。
ですがさすがにおかしいと思い、こっそり《鑑定》使ってみましたら、生えてましたよ。
【職業スキル】《音楽家》。
担当の女教師様はそりゃもう興奮して止まりません。
次から次へとお嬢様に楽器を手渡し、その音色を楽しんでいらっしゃいます。……仕事しろ……。
王妃様にお知らせした所、楽器の授業が無くなりました。
「そんな……。そんなぁ……」
王妃様からのお言葉に、打ちひしがれていらっしゃいましたけど、仕方ないです。あきらめて……。
さて、授業科目が減ったわけですが、お嬢様の希望で《剣術》が加わりました。
これには反対意見がかなり出たそうなのですが……。うちのお嬢様ですよ?お持ちのスキルを説明した所、不在だったアーディル様以外は皆様納得されました。
「ダメですよ、フィル!ケガをしたらどうするのです!!」
「…問題ありませんわ。幼い頃からステリナ達に護身術を習ってましたから♪」
両手を握りしめて説得しようとするアーディル様ですが、お嬢様はバッサリと笑顔で切り捨てます。
護身術……。護身術かなぁ、あれ……。
確かにお嬢様は《剣術》スキルをお持ちです。お屋敷では暴漢役の私共相手に、意気揚々と剣を振り回して、追っかけ回しておいででした。護身とは………。
「ですが……」
「いや、そんなに心配なら、殿下がフィルと手合わせしてみればよくないですか?」
アーディル様のところに来ていた坊っちゃまの言葉に、喜んだのはお嬢様でした。
「そうですわ!ワタクシと手合わせをして頂ければ、ワタクシの剣の腕も分かりますわ!!」
「ええーっ!!」
哀れアーディル様は、お嬢様との手合わせが決定したのです。
アーディル様、不憫すぎる………。
※※※※※※※※※※
[アーディル視点]
現在、私は騎士団の訓練場に立っています。
どうして、こうなったのでしょうか?
「それでは、二人とも準備はよろしいですか?」
フィルの父君であり、騎士団長でもあるグランディバルカス侯爵がそう声をかけてきました。
「ワタクシはいつでも結構ですわ!」
アルの練習着を身につけ、髪を後ろで一つにまとめたフィルの姿は、いつもと違った可愛らしさがあります。
ですが、私はフィルにケガをして欲しくないのです。なのに、何で手合わせすることに……。
「フィル様、手合わせですよ!手合わせですからね!」
「相手は殿下です!殿下って忘れちゃダメですよ!!」
それよりもこの周りの騎士達からフィルにかけられる言葉はどういうことでしょう?
騎士団長の子だからか、アルもかなりの腕前でしたが、フィルもなのでしょうか?それにしても、彼らの言葉はあまりにも真剣です。
「……殿下。ご武運を……」
私の護衛騎士のアイオンは、悲痛な顔色でそう言ってます。
これはもしかして、私は大変なことをしているのでしょうか?
ですが、あんなにご機嫌なフィルにやめるとも言い出せず、息を整えて木剣を構えて頷きました。
「それでは……始めっ!」
侯爵のかけ声に、フィルの木剣を叩き落とそうと足を踏み込んだ瞬間でした。
「っ!」
目に映るのは青い空。そして、背中に走る軽い痛み。
「え?」
「スキあり!ですわ♪」
呆気に取られる私の顔を覗き込むフィル。
「………え?」
「勝者フィルディア!」
侯爵の声が聞こえます。私の負けです。
周囲からは「やっぱり…」とか、「気の毒すぎる…」とか聞こえます。
「ええーーっ!?」
誰か説明してくださいっ!!
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