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第一章 『供物』の姫は食べられない
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異界への門のある『供物』を捧げられる場所で、私は拐われないようにという最もらしい理由の元、足首を鎖で繋がれたまま檻の中に閉じ込められました。
本音は逃亡防止というところでしょう。そんなつもりも気力もないというのに、ご苦労なことです。
「はて?これはまた面妖な……」
そして、その日の夜。ゆっくりと開かれた門の向こうから現れたその方は、私を見るなりそう仰いました。
「娘子よ。そこで何をしておるのかね?」
目の前には絵物語で見た事のあるドラゴンがいます。
巨大な黄金のドラゴンが私に話しかけているのです。
「……私は『供物』の一つでございます」
檻の中からそう答えると、ドラゴンは不思議そうに首を傾げました。
「はて。儂の目には人の子に見えるのだが?お前さん、実は豚か牛なのかね?」
「いいえ。私はこの国の第六王女で、エリシアと申します。異形のお方……」
「…第六王…女?王女が何故『供物』になどなっておる?しかも家畜ですら紐で繋がれているだけだと言うのに、何故檻に入って鎖で繋がれているのだ?」
杭に結ばれた家畜達に目を向け、問いかけられた私は、ありのままに答えた。
母の身分も低く、後ろ盾もない私は何の役にも立たないので、『供物』として国のためになるしかないのだ、と。
「………『供物』は七日の間、毎日運び込まれるのは知っておるかの?」
「伺っております…」
「ふむ。ではその『供物』は七日の間、それぞれ別のモノ達が持ち帰ることは存じておるかの?」
「……そうなのですか?」
私が聞いているのは、『供物』は翌日には無くなっているので、次々と毎日運び込まれていくということだけで、どうやって門の向こうへ運ばれていくのかは聞いたことがなかった。
「左様。今回は儂が初日であっての。さてさて。それにしてもどうしたものか……。我らは人を好んで食らう種族ではなくての…。いやそもそも、娘子のような…んむ?これは……」
話している途中で、ドラゴン様はジーッと私を見つめ始めた。
身綺麗にされ、それなりに良い品を身につけているが、私自身は骨と皮だけの貧相な小娘だ。きっと、どうやって食そうかと悩まれているのだろう。
「…ほうほう。これはこれは、意外な所で見つかるものよな……」
愉しそうな声でそう言うと、ドラゴン様は優しい瞳で私を見ていた。
「娘子よ。儂は娘子を受け取る訳には行かぬ故、此度は遠慮しておく。…しかし、もしかしたら他のモノが娘子を貰うて行くと言うやもしれん…。済まぬがこのままここに居ておくれ?」
「私は『供物』です。ここに置かれた以上、私にはここ以外に行く場所はありません…」
戻れたとしても、あの離宮には帰れない。戻れば一位の側室様が、私を育てた老夫婦を処分すると言っていたのだから。
「……王女として生まれたと言うのに、不憫なことよの……。どれ、また儂に会うこともあるやもしれぬ。それまで娘子にはこれを貸してやろうかの」
ドラゴン様がそう言うと、目の前に光る玉が現れた。
「……これ、は?」
「これは儂の鱗の一つじゃ。誰にも渡さずに持っているのじゃぞ!」
受け取ると、ゆっくりと小さくなっていき、小さな小さな真珠に変わった。
「儂は竜王のガルゼじゃ。娘子よ、次に会うた時には、ガルゼ爺と呼んでおくれ♪」
そう言って、ドラゴン様ーガルゼ爺様は、私以外の『供物』を全て持って帰られていったのだった。
本音は逃亡防止というところでしょう。そんなつもりも気力もないというのに、ご苦労なことです。
「はて?これはまた面妖な……」
そして、その日の夜。ゆっくりと開かれた門の向こうから現れたその方は、私を見るなりそう仰いました。
「娘子よ。そこで何をしておるのかね?」
目の前には絵物語で見た事のあるドラゴンがいます。
巨大な黄金のドラゴンが私に話しかけているのです。
「……私は『供物』の一つでございます」
檻の中からそう答えると、ドラゴンは不思議そうに首を傾げました。
「はて。儂の目には人の子に見えるのだが?お前さん、実は豚か牛なのかね?」
「いいえ。私はこの国の第六王女で、エリシアと申します。異形のお方……」
「…第六王…女?王女が何故『供物』になどなっておる?しかも家畜ですら紐で繋がれているだけだと言うのに、何故檻に入って鎖で繋がれているのだ?」
杭に結ばれた家畜達に目を向け、問いかけられた私は、ありのままに答えた。
母の身分も低く、後ろ盾もない私は何の役にも立たないので、『供物』として国のためになるしかないのだ、と。
「………『供物』は七日の間、毎日運び込まれるのは知っておるかの?」
「伺っております…」
「ふむ。ではその『供物』は七日の間、それぞれ別のモノ達が持ち帰ることは存じておるかの?」
「……そうなのですか?」
私が聞いているのは、『供物』は翌日には無くなっているので、次々と毎日運び込まれていくということだけで、どうやって門の向こうへ運ばれていくのかは聞いたことがなかった。
「左様。今回は儂が初日であっての。さてさて。それにしてもどうしたものか……。我らは人を好んで食らう種族ではなくての…。いやそもそも、娘子のような…んむ?これは……」
話している途中で、ドラゴン様はジーッと私を見つめ始めた。
身綺麗にされ、それなりに良い品を身につけているが、私自身は骨と皮だけの貧相な小娘だ。きっと、どうやって食そうかと悩まれているのだろう。
「…ほうほう。これはこれは、意外な所で見つかるものよな……」
愉しそうな声でそう言うと、ドラゴン様は優しい瞳で私を見ていた。
「娘子よ。儂は娘子を受け取る訳には行かぬ故、此度は遠慮しておく。…しかし、もしかしたら他のモノが娘子を貰うて行くと言うやもしれん…。済まぬがこのままここに居ておくれ?」
「私は『供物』です。ここに置かれた以上、私にはここ以外に行く場所はありません…」
戻れたとしても、あの離宮には帰れない。戻れば一位の側室様が、私を育てた老夫婦を処分すると言っていたのだから。
「……王女として生まれたと言うのに、不憫なことよの……。どれ、また儂に会うこともあるやもしれぬ。それまで娘子にはこれを貸してやろうかの」
ドラゴン様がそう言うと、目の前に光る玉が現れた。
「……これ、は?」
「これは儂の鱗の一つじゃ。誰にも渡さずに持っているのじゃぞ!」
受け取ると、ゆっくりと小さくなっていき、小さな小さな真珠に変わった。
「儂は竜王のガルゼじゃ。娘子よ、次に会うた時には、ガルゼ爺と呼んでおくれ♪」
そう言って、ドラゴン様ーガルゼ爺様は、私以外の『供物』を全て持って帰られていったのだった。
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