神スキル『イチャつくだけで最強バフ』 - 春の貞操観念逆転種族を添えて -

ふつうのにーちゃん

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mission 1 レギンの剣作戦

・宿屋コルヌコピアの美人三姉妹

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 宿が見えてくるとシルバは主人を置き去りにした。
 宿の窓から中へと飛び込むのを、中の人たちに申し訳ない気持ちで見送った。

 中の人からすれば、窓からいきなり狼が飛び込んできたことになる。
 驚かない方が異常だ。
 遅れて俺も宿屋コルヌコピアに入った。

「お帰りなさいませ、お館様」

 昨晩、ここの従業員を紹介された。
 1人は長女のクロトさん。
 若い母親のような雰囲気の女性で、眼鏡をかけている。

 第一印象は少し神経質そうな人。

「おっかー。ファフナがごめんねー、あの子産まれたばっかりだからさー」

 もう1人は次女のラケシスさん。
 ブロンドの髪を左右で縛った気の強い女の子だ。
 割とズケズケ言う。

「ミルディン様にお会いできましたか……? 素敵、ですよね、ミルディン様……」

 最後は三女のアトロさん。
 オシャレに興味がないのか、今日も寝癖があちこちに跳ねている。
 ちょっと暗そうな雰囲気があって、そこが俺と気が合いそうだった。

 彼女たちはミルディンさんと同じ神族で、白い肌と長い耳、メイド服と呼ばれるお仕着せが共通の特徴だった。

「うん、会えたよ、色々教わってきた」
「色々、ですか……色、色……」

「うん、色々」
「羨ましいです……。私もミルディン様に、色々、教わりたいです……」

「そうなんだ? アトロさんはミルディンさんのファンなんだね」
「そ、そんな……っ、ファンだなんてっ、そんな恐れ多い……っ」

「違うの?」

 アトロさんはコミュニケーションが下手なタイプだ。
 言葉を選びすぎて言葉が出てこないのか、今だって口を開けたり閉めたりしている。

「わ、私……っ! わ……私が吸った、空気を……ミルディン様が吸っているかと、思うと!! 私……っ、申し訳なくて……っっ!!」
「…………う、うん?」

「ああああっ?! えっと、その……っ、ごめんなさい! こんな私が生きててすみません……っ!!」

 よくわからないけど、上手く喋れなくて絶望するところに親近感を覚えた。

「そんなに自己評価を下げることないと思うけど……」
「いえっ、私クズのバカの消しパンのカスなんですぅっっ!」

 自分は筆記用具のカス以下だと、必死の形相で主張されてしまった。
 そっとしておこう。

 とにかく彼女たちと、お手伝いのスライムさんたちが、この宿を運営してくれている。
 というよりもこの宿の前身である大衆食堂が、彼女たちの元々の持ち場だった。

「ごめんねー、うちの妹、ガチでさー……」
「ラケシス、お館様におかしなことを教えるのではありません」

 クロトさんは格式にこだわる数少ない人だ。
 階級社会から平等社会のオルヴァールにやってきた俺のことを気にかけてくれていた。

「どっちにしろすぐに知ることじゃん。王子様もここで働くんだからさー」

 ラケシスさんがそう言うと、クロトさんの眉と口元が不機嫌に歪んだ。
 クロトさんはパルヴァス王子が下々の労働をすることに反対だった。

「一国の王子相手になんですか、その口はっ!」
「だって王子様はいいって言ってるしー。ねー、王子様ー♪」
「うん、普通にしてくれるのが一番助かる」

「ほらこう言ってるじゃん!」

 王子の肩を抱いてラケシスさんは姉を挑発した。
 その挑発に乗るのがバカらしくでもなったのか、クロトさんはため息を吐いて黙ってしまった。

「えっと、あの……私、ガチなところ以外は……無害のはずです……。ですからどうか、ご容赦下さいね、パルヴァス様……」
「うん、あらためてよろしくね、アトロさん」

 俺はここで労働者として働く。
 クロトさんの気苦労を増やすようで申し訳ないけど、これにはちゃんとした意味がある。

 父上が行わせた研究によると、幸運の加護は『対象を家族、あるいはお客様ゲストとして認識することで』発動する。
 その法則性に則って、これまで俺は雄羊宮の主として諸侯や英雄を歓待してきた。

 けれどもこの宿は64部屋もある。
 宿泊客も日々入れ替わる。
 飲食だけのお客様も、幸運のおこぼれを期待してこの宿にやってくるだろう。

 そうなるともう、主とかオーナーとか、そんなの面倒でやってられない。
 だから俺は労働者となって、全ての来客者をお客様ゲストにすることにした。

 上手く行くかはまだわからないけど、これがザナームへの助けになるはずだ。

 ちなみに、雄羊宮ではパルヴァス王子にやさしい言葉を投げかける行為は重罪だった。
 家族と認識させて、幸運をかすめ取る者が出てくると、父上たちはそう危惧した。
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