元アンティーク修復家の異世界転生 - 人質として帝国に差し出された俺がチート能力【アイテム転生】で、皇女と釣り合う男に成り上がるまで -

ふつうのにーちゃん

文字の大きさ
4 / 41

・人質として宗主国へ

しおりを挟む
 翌朝、馬車の前で家族との別れを済ませた。
 普段はしたたかな母上も今日ばかりは涙を流し、父上ほどではないが大げさに別れを嘆いた。

「では、王よ。ご子息アルヴェイク王子は確かに、我々アザゼリアがお預かりいたしますぞ」

「我らは帝国の忠実なるしもべ、忠誠の証を差し出すのは当然のこと。……ヴェイクよ、アザゼリアより多くを学びなさい」

 別れを済ますと、俺はアザゼリアの役人が駆る馬車に乗った。……シトリン姉さんと一緒に。
 馬車はすぐに出立し、遙か遠方の帝都へと俺たちを運んでいった。

「アル、寂しくなったらいつでも帰ってきてね……?」

「姉さん、それは外交問題に発展しますので、少し無理があるかと……」

 人質の帰省なんて聞いたこともない。
 姉さんは弟にもたれかかって、心配そうに顔をのぞき込んでいた。
 俺が12歳、5つ上の姉さんは17歳。姉さんは領地の誰もが憧れるプリンセスに成長していた。

「そうだわっ、お姉ちゃんが膝枕してあげるっ!」

「ありがたい申し出ですが姉さん、それは馬車に酔うのがオチかと」

「じゃあどうすればいいのーっ!? 言ってっ、お姉ちゃんがなんでもしてあげるからっ!」

「では普通にしていていただけると」

 シトリン姉さんは可憐な姫君に成長した。
 貴族出身の母に教育されたのもあって、淑女としての立ち振る舞いのできる立派な女性となった。

 ただし環境がそうさせたのか、超の付くブラコンだ……。

「私は弟を甘やかしたいのーっ!」

「お役人さんが御者席で聞いていますよ?」

「知らないわよっ、そんな誘拐魔のことっ!」

「落ち着いて下さい、姉さん。僕は家の助けになるためにアザゼリアに行くのです」

 家族との別れはとても寂しくて、捨てられた気持ちになるくらいに心細い。

 けれど反面、新しい生活に期待していた。
 転生した俺の新しい人生がここから始まるような、そんな予感を胸に抱えてこの馬車の旅を楽しんでいた。

「わかった……じゃあ、お姉ちゃんの膝にきて……?」

「話、繋がってませんよね、それ?」

 姉さんは唇を突き出して、だだっ子のように身を揺する。これではどっちが姉か弟かわからない。
 俺は姉さんの膝に頭を預けて、馬車酔いの警戒態勢に入った。

「ごめんなさいね、お役人さん。この子、本当は甘えん坊なの」

 御者席のお役人さんは愛想笑いをするだけだった。
 しかし姉さんがこうなるのも無理もない。
 12歳で引き離される運命の弟を持ったら、徹底的に甘やかそうともなる。

 皮肉なことに離別の運命が家族の絆を強く結び付けていた。

「よしよし、いい子いい子……」

「姉さん、恥ずかしいです」

「そうだわっ、昔歌った子守歌、歌ってあげるから目を閉じてっ♪」

「だから、酔いますってば……っ」

「ごめんなさいね、お役人さん。この子がどうしても、ってせがむから……」

「言ってないですってばっ、もう……っ!」

 姉さんに頭を撫でられながら歌声に耳を澄ますと、産まれたばかりのあの頃に戻ったかのように感じられた。

 帝都での生活で始まれば俺は独りぼっちだ。
 家族に甘えられるのは今だけだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...