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・SIDE:貴族派
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皇太子一派が窮地を逆手に取った人身掌握に成功した一方で、第三皇子フリントゥスを傀儡とした貴族派は焦っていた。
「忌々しい男じゃ! なぜあんな売国奴の理想主義者が皇帝家の長男に生まれてしまったのじゃ!」
「ひひひ、まったくだえ、オリオール公爵。選ばれし朕たちが、奴隷どもを搾取して何が悪いえ……?」
「うむ、無論、何も悪くない!!」
貴族派の首魁はオリオール公爵。ヒキガエルのような顔と体躯を持つ肥満男で、権謀術に長けている。
それに次ぐ男クレスピンもまた公爵。こちらも丸くて血色のいい40代前の男性だ。皇帝家との縁戚関係が深く、己は皇族だと勘違いしている。
「愚痴はいい!! このままでは内戦にすら持ち込めないぞ!!」
有力貴族だけが入れる帝都のサロンの特別室にて、傀儡フリントゥス皇子は両氏に激昂した。
「まだ手はある、そう焦るでない、我らの皇帝陛下」
「金は潤沢にあるえ。成功するまで暗殺者を差し向ければいいだけのことだえ」
「その兄上の暗殺に、100も失敗し続けているのはどこの誰だっ!!」
「朕は87回しか殺せと命じてないえ。残りはそこのオリオール公爵だえ」
ベルナディオ皇太子は幼少より暗殺と隣り合わせの人生を生きてきた。先日も妹の危機に外遊先から飛び出すと、暗殺者の軍勢に囲まれることになった。
「忌々しきはあのゴルドーとかいう男。いったい、あのオヤジは、どこから現れたのじゃ……」
その陰謀は元傭兵ゴルドーの機転により破られた。またもや暗殺者は返り討ちにされ、高い前金が払い損となった。
「20年前もそうだったえ。オラフとかいう若造が現れ、消すことも叶わなかった」
「そして今度は、その息子アルヴェイグまでワシらの邪魔をする。ヤツはよっぽど、蛮族の神に愛されているようじゃな」
「ならば考えろっっ、この我を皇帝にする約束だろうがっっ!! うっ!?」
大貴族オリオールは腰の宝剣を抜き、他力本願の愚か者の首に刃を押し付けた。
「いいじゃろう。そこまで言うならば、身体を張ってもらおうかの」
「勘違いもはなはだしい男だえ。フリントゥス、お前の代わりなどいくらでもいるえ」
「な、なんだと……!!」
「お前はたまたま我ら二公の目に適った、ただそれだけの男じゃ。……さて、では話の続きじゃが」
オリオール公爵は刃を腰に戻さず、鋭いそれで皇族の喉元を撫でながら冷たく言った。
「命乞いをしろ」
「我を侮辱するか、オリオールッッ!!」
「違う、皇后にじゃよ。お前の邸宅に誘え。和解したいと涙ながらに訴えろ」
オリオール公爵は確信していた。母親は息子の命乞いに必ず応じる。我が子と我が子の殺し合いを避けられるならば必ずやってくる、と。
「ひっひっひっひっ、それでそれで、そしてどうするえ?」
「次にソーミャ皇女を呼び出すのじゃ。喋れば母親を殺す。こなければ母親を殺す。と脅し、これも人質にする」
「そうか、兄上はソーミャを演説に利用した。もしここでソーミャを見捨てれば、あの演説を無効化できる……!」
二公の狙いはそれだけではなかった。最終的に彼らは荘園への課税、現状の奴隷制度さえ維持できれば皇帝など誰でもよかった。
「やってみる価値はあるえ。しょせんは女、しょせんは子供。感情で動いて罠にかかるのが見えるえ」
「いいだろう……。元よりこれは兄上の傲慢さが招いた事態。皇太子ベルナディオが我らをここまで軽んじなければ、起きなかった争いだ……」
プライドを捨てれば玉座が手に入る。高慢な兄に一杯食わせることだってできる。フリントゥスは口元をひきつらせ、狂気の笑い声を上げた。
「左様。先に我らの荘園に課税をすると言ったのは、ヤツじゃ! 皇族ごときが!」
「豚を愛でる養豚家がどこにいるえっ!! 豚はどこまでいっても豚っ、豚の事情など知ったことないえっ!!」
行き過ぎた奴隷制と荘園制が経済を混乱させようと、ひとたび既得権益を得た者たちがそれを手放すはずがない。
それが民、奴隷、小貴族、諸王の反乱を招く破滅の道であろうとも、老い先短い彼らの知ったことではなかった。
「ソーミャを拷問して兄上に見せてやるか。あのガキ、我をゴミクズを見るような目で見やがって……女のくせに!!」
フリントゥスはソーミャへの虐待を想像するだけで、小刻みに身が震えた。兄に愛されるあの妹を、兄に愛されない自分が虐め殺してやりたい。アルヴェイグ王子を絶望させてやりたい。
この男は悪意渦巻く宮廷の毒に冒され、とうに狂っていた。
「忌々しい男じゃ! なぜあんな売国奴の理想主義者が皇帝家の長男に生まれてしまったのじゃ!」
「ひひひ、まったくだえ、オリオール公爵。選ばれし朕たちが、奴隷どもを搾取して何が悪いえ……?」
「うむ、無論、何も悪くない!!」
貴族派の首魁はオリオール公爵。ヒキガエルのような顔と体躯を持つ肥満男で、権謀術に長けている。
それに次ぐ男クレスピンもまた公爵。こちらも丸くて血色のいい40代前の男性だ。皇帝家との縁戚関係が深く、己は皇族だと勘違いしている。
「愚痴はいい!! このままでは内戦にすら持ち込めないぞ!!」
有力貴族だけが入れる帝都のサロンの特別室にて、傀儡フリントゥス皇子は両氏に激昂した。
「まだ手はある、そう焦るでない、我らの皇帝陛下」
「金は潤沢にあるえ。成功するまで暗殺者を差し向ければいいだけのことだえ」
「その兄上の暗殺に、100も失敗し続けているのはどこの誰だっ!!」
「朕は87回しか殺せと命じてないえ。残りはそこのオリオール公爵だえ」
ベルナディオ皇太子は幼少より暗殺と隣り合わせの人生を生きてきた。先日も妹の危機に外遊先から飛び出すと、暗殺者の軍勢に囲まれることになった。
「忌々しきはあのゴルドーとかいう男。いったい、あのオヤジは、どこから現れたのじゃ……」
その陰謀は元傭兵ゴルドーの機転により破られた。またもや暗殺者は返り討ちにされ、高い前金が払い損となった。
「20年前もそうだったえ。オラフとかいう若造が現れ、消すことも叶わなかった」
「そして今度は、その息子アルヴェイグまでワシらの邪魔をする。ヤツはよっぽど、蛮族の神に愛されているようじゃな」
「ならば考えろっっ、この我を皇帝にする約束だろうがっっ!! うっ!?」
大貴族オリオールは腰の宝剣を抜き、他力本願の愚か者の首に刃を押し付けた。
「いいじゃろう。そこまで言うならば、身体を張ってもらおうかの」
「勘違いもはなはだしい男だえ。フリントゥス、お前の代わりなどいくらでもいるえ」
「な、なんだと……!!」
「お前はたまたま我ら二公の目に適った、ただそれだけの男じゃ。……さて、では話の続きじゃが」
オリオール公爵は刃を腰に戻さず、鋭いそれで皇族の喉元を撫でながら冷たく言った。
「命乞いをしろ」
「我を侮辱するか、オリオールッッ!!」
「違う、皇后にじゃよ。お前の邸宅に誘え。和解したいと涙ながらに訴えろ」
オリオール公爵は確信していた。母親は息子の命乞いに必ず応じる。我が子と我が子の殺し合いを避けられるならば必ずやってくる、と。
「ひっひっひっひっ、それでそれで、そしてどうするえ?」
「次にソーミャ皇女を呼び出すのじゃ。喋れば母親を殺す。こなければ母親を殺す。と脅し、これも人質にする」
「そうか、兄上はソーミャを演説に利用した。もしここでソーミャを見捨てれば、あの演説を無効化できる……!」
二公の狙いはそれだけではなかった。最終的に彼らは荘園への課税、現状の奴隷制度さえ維持できれば皇帝など誰でもよかった。
「やってみる価値はあるえ。しょせんは女、しょせんは子供。感情で動いて罠にかかるのが見えるえ」
「いいだろう……。元よりこれは兄上の傲慢さが招いた事態。皇太子ベルナディオが我らをここまで軽んじなければ、起きなかった争いだ……」
プライドを捨てれば玉座が手に入る。高慢な兄に一杯食わせることだってできる。フリントゥスは口元をひきつらせ、狂気の笑い声を上げた。
「左様。先に我らの荘園に課税をすると言ったのは、ヤツじゃ! 皇族ごときが!」
「豚を愛でる養豚家がどこにいるえっ!! 豚はどこまでいっても豚っ、豚の事情など知ったことないえっ!!」
行き過ぎた奴隷制と荘園制が経済を混乱させようと、ひとたび既得権益を得た者たちがそれを手放すはずがない。
それが民、奴隷、小貴族、諸王の反乱を招く破滅の道であろうとも、老い先短い彼らの知ったことではなかった。
「ソーミャを拷問して兄上に見せてやるか。あのガキ、我をゴミクズを見るような目で見やがって……女のくせに!!」
フリントゥスはソーミャへの虐待を想像するだけで、小刻みに身が震えた。兄に愛されるあの妹を、兄に愛されない自分が虐め殺してやりたい。アルヴェイグ王子を絶望させてやりたい。
この男は悪意渦巻く宮廷の毒に冒され、とうに狂っていた。
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