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ざまぁされちゃったヒロインの走馬灯
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芝居としては「めでたし、めでたし」なんだろうけど、私は全然めでたくない。
しかも、とんでもない悪女に仕立て上げられてるし。
だいたいこの芝居の筋書きって、いろいろ不自然じゃない?
だってまず、私が狂言を仕組む理由がない。
何もしなくても私はジョルジュに好かれてるし、侯爵家のご令嬢は嫌われている。わざわざ手間暇とお金をかけてまで、余計なことをする必要なんてどこにもないのだ。
それに第二王子の登場がタイミングよすぎて、まるで待ち構えていたとしか思えない。
何より、この場面で司法取引ってあり得ない。実際やったのは司法取引なんかじゃなくて、口裏合わせのための裏取引でしょ。
要するにジョルジュは、はめられたのだ。
そして私はその巻き添えをくらった、ということだ。
なぜジョルジュが実の弟である第二王子から陥れられたかというと、ジョルジュと第二王子は母親が違うからだ。ジョルジュのお母さまは他国から嫁いできた王女で、彼を産んだときに亡くなってしまった。その後すぐにあてがわれたお妃さまが、第二王子の母親だ。
国王陛下は最初のお妃さまと深く愛し合っていて、いつでもどこでも一緒にいらしたと聞く。今のお妃さまとの間に何人ものお子をもうけた後でも変わらず、最初のお妃さまのことを大事に思っていらっしゃるそうだ。
そのたったひとりの忘れ形見が、ジョルジュだ。
彼はお母さまゆずりの甘く整った顔立ちをしているから、国王陛下からはとりわけかわいがられていたらしい。勉学にも優れ、教師陣の評価は高かった。お妃さまやその子どもたちにしてみたら、それが面白くなかったのだろう。
きっと、ずっと陥れる機会をうかがっていたに違いない。
そんなわけで私は、都落ちした負け犬のジョルジュと結婚することになった。
ロマンスなんてかけらもない。出会いはそう悪くなかったはずなのに。
ジョルジュに与えられたのは、本当に小さな領地だった。ただ私にとって幸いなことに、その領地は養父の男爵領と隣接していた。
結婚当初、私とジョルジュは喧嘩してばかりだった。
いや、うそだ。私がジョルジュに対して癇癪を起こしていただけ。彼が私に怒ることなんて、まったくなかった。
私はつまらないことですぐに癇癪玉を破裂させた。
そもそもジョルジュと結婚させられたことが気に入らなかったのだ。
別にジョルジュが嫌いだったわけではない。でも、かといって愛していたわけでもなかった。恋だの愛だのを味わう前に、政争に巻き込まれた挙げ句に強制的に結婚させられたのだから。
「守るって言ったくせに! うそつき!」
ジョルジュにひどい言葉を投げつけるたびに、彼は身体を物理的に傷つけられたかのようにこわばらせ、痛みをこらえる顔をして「ごめん」と繰り返した。何を言っても彼は決して言い返さないものだから、私の怒りは行き場を失って、さらに激しく燃え上がる。
私が激高するあまり涙をこぼすと、ジョルジュは自分も泣きそうな顔をして私を抱きしめ、背中をさすりながら私が落ち着くまでいつまででも「ごめん」と繰り返した。
こうして思い返すと、愛想を尽かされなかったのが不思議でならない。
でもあのときから一貫してずっと、ジョルジュにはこの世で何よりも私のご機嫌が大事だった。
しかも、とんでもない悪女に仕立て上げられてるし。
だいたいこの芝居の筋書きって、いろいろ不自然じゃない?
だってまず、私が狂言を仕組む理由がない。
何もしなくても私はジョルジュに好かれてるし、侯爵家のご令嬢は嫌われている。わざわざ手間暇とお金をかけてまで、余計なことをする必要なんてどこにもないのだ。
それに第二王子の登場がタイミングよすぎて、まるで待ち構えていたとしか思えない。
何より、この場面で司法取引ってあり得ない。実際やったのは司法取引なんかじゃなくて、口裏合わせのための裏取引でしょ。
要するにジョルジュは、はめられたのだ。
そして私はその巻き添えをくらった、ということだ。
なぜジョルジュが実の弟である第二王子から陥れられたかというと、ジョルジュと第二王子は母親が違うからだ。ジョルジュのお母さまは他国から嫁いできた王女で、彼を産んだときに亡くなってしまった。その後すぐにあてがわれたお妃さまが、第二王子の母親だ。
国王陛下は最初のお妃さまと深く愛し合っていて、いつでもどこでも一緒にいらしたと聞く。今のお妃さまとの間に何人ものお子をもうけた後でも変わらず、最初のお妃さまのことを大事に思っていらっしゃるそうだ。
そのたったひとりの忘れ形見が、ジョルジュだ。
彼はお母さまゆずりの甘く整った顔立ちをしているから、国王陛下からはとりわけかわいがられていたらしい。勉学にも優れ、教師陣の評価は高かった。お妃さまやその子どもたちにしてみたら、それが面白くなかったのだろう。
きっと、ずっと陥れる機会をうかがっていたに違いない。
そんなわけで私は、都落ちした負け犬のジョルジュと結婚することになった。
ロマンスなんてかけらもない。出会いはそう悪くなかったはずなのに。
ジョルジュに与えられたのは、本当に小さな領地だった。ただ私にとって幸いなことに、その領地は養父の男爵領と隣接していた。
結婚当初、私とジョルジュは喧嘩してばかりだった。
いや、うそだ。私がジョルジュに対して癇癪を起こしていただけ。彼が私に怒ることなんて、まったくなかった。
私はつまらないことですぐに癇癪玉を破裂させた。
そもそもジョルジュと結婚させられたことが気に入らなかったのだ。
別にジョルジュが嫌いだったわけではない。でも、かといって愛していたわけでもなかった。恋だの愛だのを味わう前に、政争に巻き込まれた挙げ句に強制的に結婚させられたのだから。
「守るって言ったくせに! うそつき!」
ジョルジュにひどい言葉を投げつけるたびに、彼は身体を物理的に傷つけられたかのようにこわばらせ、痛みをこらえる顔をして「ごめん」と繰り返した。何を言っても彼は決して言い返さないものだから、私の怒りは行き場を失って、さらに激しく燃え上がる。
私が激高するあまり涙をこぼすと、ジョルジュは自分も泣きそうな顔をして私を抱きしめ、背中をさすりながら私が落ち着くまでいつまででも「ごめん」と繰り返した。
こうして思い返すと、愛想を尽かされなかったのが不思議でならない。
でもあのときから一貫してずっと、ジョルジュにはこの世で何よりも私のご機嫌が大事だった。
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