[完結]飲食店のオーナーはかく戦えり! そして下した決断は?

藤堂慎人

文字の大きさ
138 / 182

相談 4

しおりを挟む
「そう、それがあなたの考えだったのね。まだ理解できていないこともあるけれど、仮にそのような方向に進むとして、みんなのことはどうするつもりなの? あなたが考えたことだからそのこと自体はどうこう言うつもりはない。でも、私たちは小さいけれどスタッフがいるお店を持つ身よ。責任もあるわ。あなたは体調を壊し、休んでいる間に考えたことかもしれないけれど、私を含めてお店のスタッフからすれば、身勝手と言われるかもしれないわね。新型感染症の問題で経営が厳しくなったからそこから逃避した、と思われるかもしれないわ。そうなったらこれまでみんなに言ってきたことと矛盾するんじゃないかしら?」
 美津子は私の話に潜む問題点をしっかり衝いてきた。私自身、この点については悩んだところの一つだったからだ。
 だが、この話をする以上、この点を自分の中でクリアにし、その上できちんと話すことが必要と理解していた。だから私は続けて言った。
「今、そのことについて話をしようとしていた。俺も単純に考えたわけじゃない。もしそうするとなればいろいろやらなくてはならないことがあるが、そういったことも今回、一生懸命考えた。一時的な感情ではないんだ」
この時、私は持っていたビールを少し強く握りしめ、しかも少し動かしたものだから少しこぼれてしまった。その様子を見て美津子は苦笑したが、ちょっと場が張り詰めた感じになっていたので、その雰囲気を好転させるきっかけになった。
「俺、ちょっと興奮したみたいだな。ごめんごめん」
「私も少し興奮して話したからね。今度はもう少し気持ちを落ち着かせて聞くわ。私が予想していなかった展開になってきたから、ちょっと言葉が強くなっていたかもしれないわ」
「それで話の続きだけど、さっきも言ったけど、居酒屋の仕事に対するやりがいを感じなくなったわけじゃない。むしろ最近のみんな意識の変化やお客様の声を耳にするようになって、その意義を強く感じるようになっている。でも、それはさっき言ったように身体の調子が良い時のことだ。そういったことから奥田先生のような仕事と居酒屋の仕事を並べて考えるのではなく、別々のものとして考えた。改めて言うほどのことじゃないと言われるかもしれないが、こういうとこは頭だけで考えるのではなく、心からそう思ってのことだし、結果的には同じようなことでもその裏側にはいろいろあると思っている。だからこの話はそういうことでの考えと理解してくれ。だから、俺が考えているのは今の店を畳んで仕事を変えるということじゃないんだ。もっとはっきり言えば、居酒屋もやる、そして整体の仕事もやる、ということなんだ。だけど俺は一人しかいない。一人の人間が2つの仕事を同時にやることはできない。そこで考えたのが1号店は完全に矢島君に任せる、ということだ。そして会社の社長職は美津子に継いでもらい、俺は会長といった感じで関わり、矢島君たちのフォローをしたいと思った。俺が体調を壊した間、彼はよくやってくれだ。そしてその時生き生きしていた。以前話しただろう、3号店を出す時は彼に店長になってもらうアイデアを。今回の俺の穴埋めを十分すぎる以上に頑張ってくれたことから任せても大丈夫と確信したんだ。もちろん、直接本人に確認したわけでもないし、まだ俺の頭の中だけのことだ。でも、こういうことまで想定しておかなければ、今話したようなことで言えない。もちろん、思った通りすんなりいくかどうかは分からないけれど、以前矢島君と話した時、居酒屋に対する気持ちをしっかり持っていた。その気持ちをしっかり活かせれば、ということも期待している。もちろん、そういうことには美津子の気持ちや考えも必要だけど、まずは考えをまとめる叩き台として話してみた」
 私は美津子の目を見て、真剣に話した。美津子も今度は落ち着いて聞いてくれた様子が伺えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

僕らの10パーセントは無限大

華子
青春
 10%の確率でしか未来を生きられない少女と  過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと  やたらとポジティブなホームレス 「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」 「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」    もし、あたなら。  10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と  90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。  そのどちらを信じますか。 ***  心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。  追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。  幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...