お母さん、私、恋したよ!

藤堂慎人

文字の大きさ
74 / 92

病状変化 1

しおりを挟む
 主治医が病室に入ると、看護師に私の容態を尋ねた。
「出血量は?」
「1回目の咳で出血したようですが、その後は落ち着いています。でも呼吸が少し荒くなっています」
「酸素マスク」
「はい」
 病室の中が慌ただしくなった。同室の人たちも心配した表情で見守っている。口には出さないが、いつも明るく話している私の容態が急変したことに戸惑いを隠せない様子だ。
「可哀そうに・・・」
 誰からともなくそういう言葉が出た。
 私の口元に看護師が用意していた酸素マスクが着用される。
 病室から出ていた母や坂本は廊下で心配そうな表情になっている。
「大丈夫かな」
 母が弱々しい声で囁いた。
「佐々木先生が一生懸命やってくれます。信じましょう」
 坂本が言った。その言葉には力があり、佐々木を信じる気持ちが感じられた。もちろん、そこに確たるものがあるわけではないが、自分まで弱気になったら、母がもっと心理的なダメージを受けるだろう、という気持ちからのものだった。家族では無いものの、その様子は他人とは思えない雰囲気だった。
「少し落ち着いたようなので、検査室へ。出血場所や進行の様子を確認する」
 廊下にいても主治医の声が聞こえた。そのすぐ後、ストレッシャーが病室に運び込まれ、私はそれで検査室に移動した。
「私、大丈夫だからね」
 病室から移動する際、母と坂本の顔を見た私は声をかけた。呼吸の関係からその声は弱々しかったが、少しでも心配を和らげようという配慮だった。
「・・・先生」
 母が主治医に声をかけた。
「これから検査します。それによって治療のプログラムが変わるかもしれません。詳しいことは検査の後でお話しします」
 主治医はそう云って足早に検査室に向かった。母と坂本は顔を見合わせた。
「主人に連絡しないと・・・」
 母はそう言うと父に電話した。
 電話の様子から父の方も慌てている様子が伺えた。母はできるだけ伝えようとしているが、自分自身も落ち着かないので、会話も暗い。
「・・・ということなの。でも、坂本君がいてくれて、心強いわ。今日、検査の結果とか先生からのお話を伺えるかどうかは分からないけど、お話しできたら帰るのは遅くなるかもしれない。申し訳ないけれど、夕食は外で済ませて」
 母はそう言って電話を切った。その表情はとても心配気な状態だった。
「僕も残ります。佐々木先生がお話しして下さるのなら、一緒にお聞きします。良いですか?」
「・・・そうしていただける? 心強いわ。ありがとう」
 坂本はその言葉を聞いた後、自宅に電話し、この後のことを伝えた。私のことは既に自分の両親には話してあるので、力になってあげるようにと言われた。会話の様子から坂本の両親の許可が出たことが分かった母は、改めてお礼を言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなパン屋の恋物語

あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。 毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。 一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。 いつもの日常。 いつものルーチンワーク。 ◆小さなパン屋minamiのオーナー◆ 南部琴葉(ナンブコトハ) 25 早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。 自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。 この先もずっと仕事人間なんだろう。 別にそれで構わない。 そんな風に思っていた。 ◆早瀬設計事務所 副社長◆ 早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27 二人の出会いはたったひとつのパンだった。 ********** 作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

処理中です...