お母さん、私、恋したよ!

藤堂慎人

文字の大きさ
80 / 92

病状変化 7

しおりを挟む
 坂本がやってきた。メールで連絡があったように、いつもより1時間遅れだ。
「ごめん。ちょっとクラスでトラブルがあって・・・」
「えっ? 何? 解決したの?」
 私は心配になり、坂本に尋ねた。
「うん、解決した。だからもう大丈夫」
「そう、良かった。それで何があったの?」
「騒ぎ出したのは天田さんなんだ。ご両親から高校入学に当たってプレゼントされたシャープペンシルだけど、高価なものなんだって。それが午前中にはあったけれど、午後に無くなったというんだ。もちろん、クラスの人が盗むなんてことはないと思っているけれど、誰かクラスに入ってきたことはないので、みんな疑心暗鬼になっていたんだ。すごく雰囲気が悪くなり、担任の先生も仲裁に入った。僕もクラス委員という立場上、そのまま帰るわけにはいかなくなり、いろいろ可能性を考え、お昼からの天田さんの行動を確認したんだ。とても書きやすいシャープペンシルということでクラスメートに見せていたけれど、その後に無くなったというんだ。話の流れから誰かが盗んだのでは、という感じになったので、クラスの中を探したんだ。すると部屋の隅の方に転がっているシャープペンシルがあったんだ。結局、落したことを気づかなかった、というわけだけど、そのことで天田さんがクラスのみんなに謝り、やっと落ち着いたんだ。それで遅れてしまった。申し訳ない」
「大変だったね。でも坂本君。そういう時でも冷静に対応したんだ。さすがだね」
 私は自分のことでは無いけれど、坂本のそういう行動を誇りに思っていた。感情移入をしている自分に気付き、少しクスッと笑う自分がいた。
 その様子を見て坂本が言った。
「どうしたの。僕、何か変なこと言ったのかな?」
「そうじゃないの。冷静に対処するなんてさすが敦君ね」
 私も最近では坂本のことをあなたと言ったり名前で呼んでいるが、こういうことがお互い自然に出てくるように心が近づいていることを実感していた。
 こういう時間は私が病気であることを忘れさせてくれる。だが、以前より坂本といる楽しいはずの時間に咳き込むことが増えているし、最近は気のせいかもしれないがお腹の張りを感じている。転移の可能性は私も知っている。主治医から私の今の病気がガンと知らされ、転移を防ぐために投薬も行なっている。だからまさかと思いつつも、もしかしてという気持ちもある。そういう話は主治医から聞いていないが、最近、検査が多い。もしかすると何か見つかったのか、そんな気持ちになっている。私の場合、ウェルナー症候群も患っているので、普通のガンの場合とは違うことがあるのかもしれない。最近はそういうことも考えている。しかし、坂本といる時間は全てを忘れさせてくれる。たとえ今日の話のようなことがあっても、対応の様子を聞いていると頼もしく思える。そんな坂本に支えられている私は幸せ者だと感じている。
「何か、嬉しそうだね」
 私が一人自分の思いに浸っていると、坂本がドキッとするようなことを言った。その言葉通りだったので、私の心が分かったのかと思い、それが表情に出たのだった。
≪日記≫
『体調が良くなってる実感はないが、敦と一緒の時は何もかも忘れられる。身体の不快感も消える。
 心の充実感は病気にも打ち勝てるのかな。
 そうであってほしい。いや、そうなんだ。
 だから敦のためにも絶対に治る。へこたれてなんかいられない。
 今感じでいることもきっと薬の副作用だ。投薬が終われば回復するはずだ。
 私は強い。強いんだ。
 退院して敦と一緒に出掛けたい。甘えたい。
 今、そんなことを思うくらいなら神様も許してくれるはずだ。
 この思い、実現させる!』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

小さなパン屋の恋物語

あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。 毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。 一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。 いつもの日常。 いつものルーチンワーク。 ◆小さなパン屋minamiのオーナー◆ 南部琴葉(ナンブコトハ) 25 早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。 自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。 この先もずっと仕事人間なんだろう。 別にそれで構わない。 そんな風に思っていた。 ◆早瀬設計事務所 副社長◆ 早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27 二人の出会いはたったひとつのパンだった。 ********** 作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...