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葬儀
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さくらが亡くなった2日後、葬儀が行われた。祭壇にはウェルナー症候群の症状が出る前の中学時代の写真が飾られていた。
葬儀場には高校の関係者、中学時代に仲が良かった友達、病院の関係者、両親の知人、近所の人などが参列した。
静かな斎場に参列者のすすり泣きが聞こえている。会話する者はない。無言でたたずんでいるだけだ。
時間になった。司会者の人が通常通りに進行していく。
読経の際、すすり泣きの声は先ほどよりも大きくなっていた。さくらの死をより実感しているのであろう。両親の心境も極に達し、それは坂本も同様だった。その表情は生気が抜けている。
この日、坂本の父も参列していた。そして小さな声で話しかけた。
「敦、残念だったな。私はさくらさんの主治医ではないが、同じ医者として救えなかったことを残念に思う」
「お父さん、医者って厳しいね。僕、なれるかな?」
その言葉に坂本の父は無言だった。
父子の会話は短く、クラス代表ということで敦が弔辞を述べることになった。
「さくらさん、頑張ったね。僕はよく知っている。人に言えない胸の内があったと思う。何もできなかった僕を許してください。あなたから人の優しさや強さをたくさん教えてもらった。そういうあなたが好きでした。この言葉を生きている間にはっきり言いたかった。こういう場でしか言えない勇気の無さを許してください。・・・天国でゆっくり過ごしてください。僕は生涯忘れません」
坂本は声を震わせ、時折嗚咽で言葉を詰まらせながら言った。いろいろ言いたいことはあったが、これ以上は話せない自分を知っていたから、話せる範囲内でまとめた。
お焼香の後、さくらの両親のところに天田がやってきた。目には涙をいっぱい溜めている。
「さくらさんのお父さん、お母さん、天田美津子と言います。私、入学の時、さくらさんをたくさん傷付けてしまいまた。それをしっかり謝ることができず、すみませんでした。お見舞いの時が最後になりましたが、中途半端なままでここに来てしまいました。さくらさんの代わりにご両親にしっかり謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした」
「天田さん、さくらからあなたからきちんと謝ってもらったと聞いています。大丈夫ですよ。さくらは恨んでなんかいません。あの子は優しいし、思いやりがあります。2学期、登校することができたら、きっといいお友達になったんじゃないかしら。今日はありがとうございます」
母が答えた。
両親のもとに主治医の佐々木も訪れた。
「力及ばす、申し訳ありませんでした。こういう席ではなく、退院の際、きちんとお見送りしたかったです」
「先生、お力を尽くしていただいたことは私どもも十分理解しております。今日はお忙しい中、わざわざ参列していただき、さくらも喜んでいると思います。本当にお世話になりました。ありがとうございます」
父が答えた。隣で母が静かに頷いている。
その後、坂本とその父がやってきた。
「敦君、弔辞、ありがとう。きっとさくらの耳にも届いていると思うよ。本当にいろいろお世話になったね。さくらも幸せだったと思うよ」
父が言った。その後、母も続けて言った。
「私も女だからさくらの気持ち、よく分かる。さっき弔辞で好きでしたという言葉、とっても心に響いた。さくらにとっては最初で最後の恋。それを経験させていただいたことは母親として感謝します。でも敦君、まだこれからあなたにふさわしいステキな人と出会うでしょうから、これからを大切にしてね」
坂本はその言葉を聞き、大粒の涙をこぼした。
「・・・ありがとうございます」
その後、坂本の父も口を開いた。
「敦の父です。この度はご愁傷さまでした。こういう時の定型句ですが、今はこの言葉しか出てきません。さくらさんのこと、本当に残念でした。息子から娘さんのこと、いろいろ聞いていました。今となっては叶わないことですが、私どもの家にも遊びに来ていただき、家族として歓迎できなかったことが残念です」
坂本の父とさくらの両親は初対面になる。息子から話しを聞いていたとしても、この言葉には言いようのない感情が込み上げていた。
「実はさくら、日記を残していました。そこには病気に対する不安や、敦君に対する思いなど私たちに見せなかった心の声が綴られていました。敦君、良ければ落ち着いた時にウチに来て、読んでもらえないだろうか? さくらの思い出話もしたいし・・・」
「僕で良いんですか?」
「ぜひ、お願いします」
「敦、お邪魔させていただきなさい」
「ありがとうございます。お待ちしています」
落ち着いたところで、喪主からのお礼の言葉が述べられた。
「本日はお忙しい中、さくらの葬儀に参列いただき、ありがとうござました。たった16年の短い生涯でしたが、亡くなる前、凝縮した時間を過ごしたことと思います。皆さまの中にさくらとの思い出が残れば、これからもたくさんの人の中で生き続けることができると思います。どうぞ忘れないでいてやってください」
父はそう言うと、深々とお辞儀をし、参列の礼を述べた。
一通り終わると、さくらの棺は厳かに葬儀場から運び出された。
(完)
葬儀場には高校の関係者、中学時代に仲が良かった友達、病院の関係者、両親の知人、近所の人などが参列した。
静かな斎場に参列者のすすり泣きが聞こえている。会話する者はない。無言でたたずんでいるだけだ。
時間になった。司会者の人が通常通りに進行していく。
読経の際、すすり泣きの声は先ほどよりも大きくなっていた。さくらの死をより実感しているのであろう。両親の心境も極に達し、それは坂本も同様だった。その表情は生気が抜けている。
この日、坂本の父も参列していた。そして小さな声で話しかけた。
「敦、残念だったな。私はさくらさんの主治医ではないが、同じ医者として救えなかったことを残念に思う」
「お父さん、医者って厳しいね。僕、なれるかな?」
その言葉に坂本の父は無言だった。
父子の会話は短く、クラス代表ということで敦が弔辞を述べることになった。
「さくらさん、頑張ったね。僕はよく知っている。人に言えない胸の内があったと思う。何もできなかった僕を許してください。あなたから人の優しさや強さをたくさん教えてもらった。そういうあなたが好きでした。この言葉を生きている間にはっきり言いたかった。こういう場でしか言えない勇気の無さを許してください。・・・天国でゆっくり過ごしてください。僕は生涯忘れません」
坂本は声を震わせ、時折嗚咽で言葉を詰まらせながら言った。いろいろ言いたいことはあったが、これ以上は話せない自分を知っていたから、話せる範囲内でまとめた。
お焼香の後、さくらの両親のところに天田がやってきた。目には涙をいっぱい溜めている。
「さくらさんのお父さん、お母さん、天田美津子と言います。私、入学の時、さくらさんをたくさん傷付けてしまいまた。それをしっかり謝ることができず、すみませんでした。お見舞いの時が最後になりましたが、中途半端なままでここに来てしまいました。さくらさんの代わりにご両親にしっかり謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした」
「天田さん、さくらからあなたからきちんと謝ってもらったと聞いています。大丈夫ですよ。さくらは恨んでなんかいません。あの子は優しいし、思いやりがあります。2学期、登校することができたら、きっといいお友達になったんじゃないかしら。今日はありがとうございます」
母が答えた。
両親のもとに主治医の佐々木も訪れた。
「力及ばす、申し訳ありませんでした。こういう席ではなく、退院の際、きちんとお見送りしたかったです」
「先生、お力を尽くしていただいたことは私どもも十分理解しております。今日はお忙しい中、わざわざ参列していただき、さくらも喜んでいると思います。本当にお世話になりました。ありがとうございます」
父が答えた。隣で母が静かに頷いている。
その後、坂本とその父がやってきた。
「敦君、弔辞、ありがとう。きっとさくらの耳にも届いていると思うよ。本当にいろいろお世話になったね。さくらも幸せだったと思うよ」
父が言った。その後、母も続けて言った。
「私も女だからさくらの気持ち、よく分かる。さっき弔辞で好きでしたという言葉、とっても心に響いた。さくらにとっては最初で最後の恋。それを経験させていただいたことは母親として感謝します。でも敦君、まだこれからあなたにふさわしいステキな人と出会うでしょうから、これからを大切にしてね」
坂本はその言葉を聞き、大粒の涙をこぼした。
「・・・ありがとうございます」
その後、坂本の父も口を開いた。
「敦の父です。この度はご愁傷さまでした。こういう時の定型句ですが、今はこの言葉しか出てきません。さくらさんのこと、本当に残念でした。息子から娘さんのこと、いろいろ聞いていました。今となっては叶わないことですが、私どもの家にも遊びに来ていただき、家族として歓迎できなかったことが残念です」
坂本の父とさくらの両親は初対面になる。息子から話しを聞いていたとしても、この言葉には言いようのない感情が込み上げていた。
「実はさくら、日記を残していました。そこには病気に対する不安や、敦君に対する思いなど私たちに見せなかった心の声が綴られていました。敦君、良ければ落ち着いた時にウチに来て、読んでもらえないだろうか? さくらの思い出話もしたいし・・・」
「僕で良いんですか?」
「ぜひ、お願いします」
「敦、お邪魔させていただきなさい」
「ありがとうございます。お待ちしています」
落ち着いたところで、喪主からのお礼の言葉が述べられた。
「本日はお忙しい中、さくらの葬儀に参列いただき、ありがとうござました。たった16年の短い生涯でしたが、亡くなる前、凝縮した時間を過ごしたことと思います。皆さまの中にさくらとの思い出が残れば、これからもたくさんの人の中で生き続けることができると思います。どうぞ忘れないでいてやってください」
父はそう言うと、深々とお辞儀をし、参列の礼を述べた。
一通り終わると、さくらの棺は厳かに葬儀場から運び出された。
(完)
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