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第2章
第18話 王子の秘める想い side:山崎
しおりを挟む俺、山崎 理玖は、クラスで「イケメン」と呼ばれている。
別に自分でそう思ってるわけじゃない。ただ、周りがそう言うから、そういうことになっている。
身長は178センチ。運動部に所属していて、まあまあモテる方だ。
でも、綾瀬遙真には敵わない。
あいつは、別次元だ。
入学式の日、初めて綾瀬を見た時、息を呑んだ。
透き通るような肌。長い睫毛。整った顔立ち。
女子よりも綺麗な男子なんて、現実にいるんだと思った。
それから、俺は綾瀬のことが気になっていた。
でも、話しかけることはできなかった。
綾瀬の周りには、いつも見えない壁があった。
親衛隊──そんなものが存在していることを知ったのは、最近だ。
綾瀬に近づこうとする男子を、親衛隊が遠ざけていた。
俺も、何度か親衛隊のメンバーに「綾瀬に近づくな」と言われた。
でも、今回は違った。
文化祭の演劇で、俺は綾瀬と共演することになったのだ。
しかも、役どころは王子様。
綾瀬が演じる白雪姫に──キスをする役だった。
正直、最初は文化祭なんて面倒だと思っていた。けれど、この配役を聞いた瞬間、そんな気持ちはどこかへ吹き飛んだ。
まさか、あの綾瀬に堂々と近づける日が来るなんて。
照明の下で、みんなの前で、彼女──いや、“彼”に触れることが許されるなんて。
その日、俺は初めて自分の顔に感謝した。
鏡の中の自分が、少しだけ頼もしく見えた気がした。
親衛隊は反対していたが、クラス全体の雰囲気に押されて、何も言えなかった。
台本の読み合わせが始まった日。
綾瀬が台詞を読み始めた瞬間、教室が静まった。
「私は、白雪。継母に嫌われて、この街に来た。でも、ここで新しい人生が始まるんだ」
その声は、柔らかくて、でもどこか強さがあった。
綾瀬は、本当に白雪姫みたいだ。
美しくて、儚げで、でも芯が強い。
「綾瀬、山崎とのシーン、やってみようか」
クラス委員の鈴木が言った。
俺と綾瀬が、教室の前に立つ。
目覚めのシーン。
眠っている白雪姫に、王子様がキスをして目覚めさせる場面だ。
綾瀬が机に座って、目を閉じる。
その横顔を見て、俺の心臓が高鳴った。
こんなに近くで、綾瀬を見るのは初めてだ。
長い睫毛。すべすべの肌。小さな唇。
全部、完璧だ。
「……美しい」
台詞を言いながら、本心から思った。
綾瀬は、本当に美しい。
俺は、ゆっくりと顔を近づける。
キスシーンだ。
実際には、角度をつけてキスしているように見せるだけ。
でも、綾瀬の顔が近づいてくると、心臓が爆発しそうになった。
《綾瀬、近くで見るとやっぱり可愛いな……キスシーンの演技、ドキドキするだろうな》
頬に添えた手に、綾瀬の白くて柔らかい肌の感触が伝わってくる。本当は、演技じゃなくて、本物のキスがしたい。
でも、そんなこと言えるわけがない。
「……ん」
綾瀬が目を開ける。
その瞳が、俺を見つめる。絶妙な上目遣いに少しドキッとした。
「目が覚めたか」
俺は、優しく微笑む。
「あなたは……?」
綾瀬が台詞を言う。
その声は、少し震えていた。
綾瀬も、緊張してるんだろうか。
「僕は、この国の王子だ。君を助けに来た」
俺が台詞を続ける。
その瞬間、教室がざわついた。
「やばい、山崎と綾瀬、カップルみたい」
「絵になりすぎ」
「これ、絶対人気出るって」
クラスメイトたちの声が聞こえる。
綾瀬は、顔を赤くしていた。
可愛い。
読み合わせが終わった後、俺は綾瀬に話しかけた。
「綾瀬、演技うまいな」
「そ、そんなことないよ」
綾瀬が照れたような顔をする。
その表情が、たまらなく可愛い。
「本番、楽しみにしてる」
「うん。山崎も、頑張ってね」
綾瀬が小さく笑った。
その笑顔を見て、俺の心は完全に落ちた。
綾瀬遙真。
この子のことが、好きだ。
放課後、演技の練習が始まった。
「綾瀬、もう一回、目覚めのシーンやってみようか」
鈴木が言う。
俺と綾瀬が、再び教室の前に立った。
綾瀬が机に座って、眠っているふりをする。
俺は、綾瀬の顔を見下ろす。
「……美しい」
台詞を言いながら、本当にそう思った。
綾瀬は、眠っているふりをしているだけなのに、本当に眠っているみたいだ。
無防備な表情。
その顔を見ていると、守ってあげたくなる。
俺は、ゆっくりと顔を近づける。
綾瀬の顔が、どんどん近づいてくる。
心臓が、バクバクと鳴っている。
《綾瀬、本当に綺麗だな……演技なのに、ドキドキする》
角度をつけて、キスしているように見せる。
でも、綾瀬の顔がこんなに近いと、理性が飛びそうになる。
「……ん」
綾瀬が目を開ける。
その瞬間、俺たちの目が合った。
綾瀬の瞳は、琥珀色で、透き通っていた。
「目が覚めたか」
俺は、優しく微笑む。
その瞬間、綾瀬が少し顔を赤くした。
可愛すぎる。
練習が終わると、クラスメイトたちが拍手をした。
「綾瀬と山崎、最高!」
「本番が楽しみだね」
俺は、綾瀬の方を見た。
綾瀬は、少し照れたような顔をしていた。
(綾瀬と、本番までにもっと仲良くなりたいな)
でも、親衛隊が邪魔をしてくる。
放課後、俺が綾瀬に話しかけようとすると、親衛隊のメンバーが割って入ってきた。
「山崎、ちょっといいか」
3年生の佐藤先輩だ。
「何ですか?」
「綾瀬様に、あまり近づかない方がいい」
その声には、警告が込められていた。
「演劇の練習ですけど」
「それはわかってる。でも、必要以上に近づくな」
佐藤の目は、冷たかった。
俺は、少しイラッとした。
「綾瀬は、あなたたちのものじゃないですよ」
「何?」
「綾瀬は、自分で決める権利があります。あなたたちが支配することじゃない」
俺の言葉に、佐藤は何も言えなくなった。
そして、俺は綾瀬のところへ向かった。
綾瀬は、千隼と奏多と一緒にいた。
「綾瀬」
「あ、山崎」
「明日も練習、頑張ろうな」
「うん」
綾瀬が笑った。
その笑顔を見て、俺は思った。
綾瀬を、親衛隊から守りたい。
綾瀬が、自由に笑えるようにしたい。
そして、できれば──
綾瀬と、もっと仲良くなりたい。
その夜、ベッドに横になりながら、俺は思った。
文化祭まで、あと三週間。
その間に、綾瀬ともっと話せるかもしれない。
親衛隊が邪魔をしても、俺は諦めない。
綾瀬遙真。
この子のことが、本当に好きだ。
その気持ちを胸に、俺は眠りについた。
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