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四話 アップデート後に備えハンマーの熟練度を鍛え上げます
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来たる日に備えるジョニーの朝は早い。
まずは日の出と共に起床し、価値の跳ね上がる風華満月草を大量確保するべく西へ東へ群生地を駆け巡る。
……満月草なのに早朝が一番採れることにツッコんではいけない。
その際ジョニーはちょくちょくエミリアと遭遇。
今じゃすっかり打ち解け友人といった間柄だ。
「またお会いしましたねエミリアさん」
「あら、奇遇ですねジョニーさん」
「奇遇というかほぼ毎日あっている気がしますが――」
――なんだか自分の行く場所に先回りされている気がしなくもない。
そう言おうとしたジョニーを遮るようにエミリアはしゃべり出す。
「ところでジョニーさん、満月草の採取を頑張っておられますが何か夢でもあるんですか?」
「夢? いや……夢とかはありませんけど。何も考えていなかったなあ……」
「ごめんなさい悩ませちゃって。ちなみに私はいつか商人になって大陸をまたにかける貿易商会を立ち上げたいですね」
「いいですねそれ、夢あるなぁ」
とりあえず生き伸びるため、あとは自分を追い出したギルド連中の鼻を空かすことしか考えていなかったジョニーは採取の手を止めて真剣に考え込む。
「ギルド追い出されたあと、生き残るために満月草採取していたんだもんなぁ」
「ギルド……ならご自身の冒険者ギルドを立ち上げるとかいかがです? 私の貿易商会とジョニーさんの冒険者ギルドなら世界を掌握できるかも知れませんよ」
ちょっぴりマジな顔の彼女に「エミリアさんは冗談が上手い」とジョニーは微笑む。彼女の表情の裏にある真意に気がつかず。
「あはは、何か壮大ですね。でも、アリですねそれ」
ジョニーは真剣に自分の冒険者ギルド設立について考え出す。
(天啓とかいう設定で大変な思いをしているエミリアさんみたいな人を救うため、ゲームの制作者として救済施設を作るのは間違いではないよな)
自分のような不遇職が転職まで働けるようなサポートギルドはあり、いや絶対必要だとジョニーは考えて始めていた。
「シナリオライターやディレクターの尻拭いしている感があるけど、前世で慣れたもんさ」
「ん? なんでしょうか?」
「あ、ゴメンナサイ……独り言です」
またついプロデューサー時代の悪い癖が出たなと頭を小突くジョニー。
この仕草に慣れているのかエミリアは子供を見守る母親のように微笑むのだった。
明確な目的ができたジョニーは軍資金以外の準備にも着手する。
それは「実力」。
具体的にはハンマーの熟練度上げである。
ハンマーという武器種はアップデート後は実に有能な武器種に変貌する。
単純な攻撃力の上方修正だけでなくモーションのスピードも強化。
大技後の隙も解消されるなどあらゆる面でパワーアップされるのだ。
昼過ぎには宿舎の前の空き地で練習用のハンマーを振るうのが日課となっていた。
ブンッ……ブンッ……
モーションを一つ一つ確認しながら汗を掻くジョニー。
前世を思い出す前は気にしていなかったが武器を持ちかえると微妙に感覚が変わることに気が付いた。
特にハンマーは持った途端、体が重くなるのを実感する。
「剣とは明らかに違うな、確かに重くて動きにくい……そりゃ「最弱武器種」と呼ばれるよな」
半年たったらこの重さがガラリと変わるのだろうか? そんなことを考えながら鍛錬を続けていると――
「お」
「あ」
偶然通りかかったアッシュらギルドの連中と遭遇する。
ナタリーはバツの悪い顔をしているがアッシュは面白い物を見たような顔でバカにし始めた。
「おいおい、こいつとうとう頭おかしくなりやがったぜ! 剣の練習じゃなくてよりによってハンマー振るってやがる! 最弱武器の呼び声が高いハンマーをよぉ」
イズナとウオトルも追随して笑う。
「修行? 雑魚のくせに殊勝じゃん。努力の方向間違っているけどさぁ……てかハンマーとかウケるんですケド」
「ほっほ、噂では安値でしか売れない風華満月草を大量に採取しているとか。武才も商才も無いようで……クビにして正解でしたな」
とまぁ散々の言われようである。
だがアップデートされることを知っているジョニーは彼らを無視し、黙々と鉄槌を振るい熟練度を高めていく。
「なんだ、つまんね」
「ほんと、おかしくなってしまわれましたなぁ……おっとそれよりヤシロオオトカゲの素材ですぞ」
「やったぁ! そうそう! ガルディア帝国のワンオフ装備が売りに出されるんだって、素材売ったお金で買おうよ!」
「……無理しないでねジョニー」ボソリ
そんなことを言い残してこの場を去って行く昔の同僚たち。
嫌な奴と遭遇して気分が萎えるジョニーだが、彼らの会話で気になるところがあった。
「ヤシロオオトカゲ? 帝国の装備? それって――アップデートの情報通りじゃないか」
特殊スキル「ロードマップ」が本物だと確信を得たジョニー。
鉄槌を振るう手にも力が入るというものである。
「よし、このまま半年頑張れば立場は逆転する。見ていろアッシュ」
おそらく唯一無二であろう「ハンマー使いの魔物使い」という最強ビルド完成を夢見て研鑽を積むジョニー。
そして半年の月日が流れる――
ブクマ・評価などをいただけますととっても嬉しいです。励みになります。
皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。
次回は6/6の17:00に投稿予定です
まずは日の出と共に起床し、価値の跳ね上がる風華満月草を大量確保するべく西へ東へ群生地を駆け巡る。
……満月草なのに早朝が一番採れることにツッコんではいけない。
その際ジョニーはちょくちょくエミリアと遭遇。
今じゃすっかり打ち解け友人といった間柄だ。
「またお会いしましたねエミリアさん」
「あら、奇遇ですねジョニーさん」
「奇遇というかほぼ毎日あっている気がしますが――」
――なんだか自分の行く場所に先回りされている気がしなくもない。
そう言おうとしたジョニーを遮るようにエミリアはしゃべり出す。
「ところでジョニーさん、満月草の採取を頑張っておられますが何か夢でもあるんですか?」
「夢? いや……夢とかはありませんけど。何も考えていなかったなあ……」
「ごめんなさい悩ませちゃって。ちなみに私はいつか商人になって大陸をまたにかける貿易商会を立ち上げたいですね」
「いいですねそれ、夢あるなぁ」
とりあえず生き伸びるため、あとは自分を追い出したギルド連中の鼻を空かすことしか考えていなかったジョニーは採取の手を止めて真剣に考え込む。
「ギルド追い出されたあと、生き残るために満月草採取していたんだもんなぁ」
「ギルド……ならご自身の冒険者ギルドを立ち上げるとかいかがです? 私の貿易商会とジョニーさんの冒険者ギルドなら世界を掌握できるかも知れませんよ」
ちょっぴりマジな顔の彼女に「エミリアさんは冗談が上手い」とジョニーは微笑む。彼女の表情の裏にある真意に気がつかず。
「あはは、何か壮大ですね。でも、アリですねそれ」
ジョニーは真剣に自分の冒険者ギルド設立について考え出す。
(天啓とかいう設定で大変な思いをしているエミリアさんみたいな人を救うため、ゲームの制作者として救済施設を作るのは間違いではないよな)
自分のような不遇職が転職まで働けるようなサポートギルドはあり、いや絶対必要だとジョニーは考えて始めていた。
「シナリオライターやディレクターの尻拭いしている感があるけど、前世で慣れたもんさ」
「ん? なんでしょうか?」
「あ、ゴメンナサイ……独り言です」
またついプロデューサー時代の悪い癖が出たなと頭を小突くジョニー。
この仕草に慣れているのかエミリアは子供を見守る母親のように微笑むのだった。
明確な目的ができたジョニーは軍資金以外の準備にも着手する。
それは「実力」。
具体的にはハンマーの熟練度上げである。
ハンマーという武器種はアップデート後は実に有能な武器種に変貌する。
単純な攻撃力の上方修正だけでなくモーションのスピードも強化。
大技後の隙も解消されるなどあらゆる面でパワーアップされるのだ。
昼過ぎには宿舎の前の空き地で練習用のハンマーを振るうのが日課となっていた。
ブンッ……ブンッ……
モーションを一つ一つ確認しながら汗を掻くジョニー。
前世を思い出す前は気にしていなかったが武器を持ちかえると微妙に感覚が変わることに気が付いた。
特にハンマーは持った途端、体が重くなるのを実感する。
「剣とは明らかに違うな、確かに重くて動きにくい……そりゃ「最弱武器種」と呼ばれるよな」
半年たったらこの重さがガラリと変わるのだろうか? そんなことを考えながら鍛錬を続けていると――
「お」
「あ」
偶然通りかかったアッシュらギルドの連中と遭遇する。
ナタリーはバツの悪い顔をしているがアッシュは面白い物を見たような顔でバカにし始めた。
「おいおい、こいつとうとう頭おかしくなりやがったぜ! 剣の練習じゃなくてよりによってハンマー振るってやがる! 最弱武器の呼び声が高いハンマーをよぉ」
イズナとウオトルも追随して笑う。
「修行? 雑魚のくせに殊勝じゃん。努力の方向間違っているけどさぁ……てかハンマーとかウケるんですケド」
「ほっほ、噂では安値でしか売れない風華満月草を大量に採取しているとか。武才も商才も無いようで……クビにして正解でしたな」
とまぁ散々の言われようである。
だがアップデートされることを知っているジョニーは彼らを無視し、黙々と鉄槌を振るい熟練度を高めていく。
「なんだ、つまんね」
「ほんと、おかしくなってしまわれましたなぁ……おっとそれよりヤシロオオトカゲの素材ですぞ」
「やったぁ! そうそう! ガルディア帝国のワンオフ装備が売りに出されるんだって、素材売ったお金で買おうよ!」
「……無理しないでねジョニー」ボソリ
そんなことを言い残してこの場を去って行く昔の同僚たち。
嫌な奴と遭遇して気分が萎えるジョニーだが、彼らの会話で気になるところがあった。
「ヤシロオオトカゲ? 帝国の装備? それって――アップデートの情報通りじゃないか」
特殊スキル「ロードマップ」が本物だと確信を得たジョニー。
鉄槌を振るう手にも力が入るというものである。
「よし、このまま半年頑張れば立場は逆転する。見ていろアッシュ」
おそらく唯一無二であろう「ハンマー使いの魔物使い」という最強ビルド完成を夢見て研鑽を積むジョニー。
そして半年の月日が流れる――
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次回は6/6の17:00に投稿予定です
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