売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果

カイシャイン36

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売れない作家、変な奴らに慕われる

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「おぉ、戻ってきましたぞ」


 入り口に戻った俺を松尾さんの暑苦しい声が出迎えた。その周りにはバクテリアの面々もいる。

 俺はお姫様抱っこされているハルルさんに声を掛けた。


「お疲れ様」
「もう着いたのですか?」


 なんか名残惜しそうに降りるハルルさん……なんだこの子、甘えモードに突入しっぱなしじゃないか。

 そんな俺たちに美波が駆け寄ってきた。


「大丈夫ハルル!? まぁカイ兄は大丈夫か」
「扱い!? 俺も心配しろよ」
「丈夫さが売りの男が何を言うのさ、まぁ一安心だね。さぁ外に出よう、みんな待っているよ」
「みんな?」


 手を引っ張ってくる美波、おいおい何だ何だ……

 帰ってきた俺たちがダンジョンの外へ出ると――

 ワァァァァァ!


「な、なんだ」


 結構な数の人が俺たちを歓声で出迎えてくれる。これはいったい?

 俺の疑問に松尾さんがニッコリどや顔で答えた。


「ふふん、二人が川に落ちた後も拙者がしっかり配信を繋ぎましたからな。噂の盾ニキとハルル、二人は無事か否か! 勝負の行方は!? ちょっぴり煽ってたら近場の冒険者やら駆けつけてきましたぞ」


 しっかり仕事をしたと胸を張る松尾さん……いや、煽るのはアシスタントの仕事なのか?

 だが再生数に取り憑かれた美波は実に満足そうだった。


「カイ兄が奇声上げてホルスを引き寄せて、そんでもって羽根を譲ったシーン、ここにいる人全部知っているから、ものすごい再生数だよ……やはり配信は適度なハプニングと応援したくなる要素なんだねぇ。ネットに書いてあるとおりだったよ」
「お前か、松尾さんに煽らせるとかいう変な仕事させたのは」


 美波は悪びれることなく「テヘヘ」と笑っていた。姪っ子が金に汚くなっていく様子をマジマジと見せつけられると……なんかなぁ。

 そんな事を考えていると坊田君率いる「バクテリア」が俺を囲ってきた。

 ザザッ――

 そして、一斉に跪く……おい、なんだなんだ!?


「えっと?」
「カイ兄……いや、カイ兄貴! ご無事で何よりです!」
「カイ……兄貴?」


 俺の戸惑いなど気にも留めず、坊田君はまくし立ててくる。


「兄貴のおかげで! 俺たち日高さんの研究所で働かせてもらえるようです!」
「あ、あぁ良かったね」
「勝負は俺たちの完敗です! 実力を示し、羽根を譲っていただき、さらに男気も……俺ら全員兄貴の舎弟です!」
「いや、日高円佳の研究所に就職できたのならソイツを慕いなって」


「それとコレとは――」
「「「別ッス!!」」」



 おぉ、素敵なチームワークですこと。面倒な連中だなぁ。

 そんな彼らが盛り上がる様子を円佳が呆れた目で見ている。


「やれやれ、アナタって人は」


 手を叩きこっちを祝福するように現れる……まるでゲームの黒幕だよな。まぁ腹の中は真っ黒なんだが。


「まど……日高さんの所の社員さんですよね。面倒見てあげて下さいよぉ」
「まさか譲るとは思いませんでしたよ……これが狙いですか」


 お、やっぱバレたか。ダンジョンのお使いをアイツらに押しつける作戦。

 ただまぁ、ちょっと情が移っちゃった俺は責任を感じ円佳に頭を下げた。


「悪そうだけど根は素直だったんで、よろしく頼む。思ったより有能だぞ彼ら」
「そういう所、卑怯ですね。ま、彼らが有用がどうかは配信で見せていただきましたので、無碍にはしませんよ」
(よしよし、これで当分は円佳も絡んでは来ないだろう)


 だが彼女は悪い事を思いついたのか口の端を吊り上げニッコリと笑いだす。


「見るところ彼らは君のことをずいぶん慕っているようですがね。ではこういうのはどうでしょう」


 大概こういう時は悪知恵を働かせたときなんだよな……

 警戒する俺に彼女はこう提案した。


「彼らのことが気になるのなら、兄貴分である盾男さんも一緒にウチの研究員になるのはいかがでしょう?」
「は?」
「いいっすね兄貴!」


 オイちょっと待て、面倒ごとを押しつけようとしたら坊田君ごと俺に面倒見させる気かよ!?

 だが円佳はグイグイ来る。ていうかちょっと怒り気味だ、なんだよコイツ。


「どうやら仕事もしていないようですし、あの有名配信者ハルルさんを颯爽と助ける実力の持ち主、川に飛びこんで助けるなんて……是非ともウチの研究所に」
「しているっての!」


 このやり取りの横で松尾さんが余計なコメント拾いを始めている。 


「ふむ、「カイ兄の仕事気になる」とか「成り上がりじゃん」というコメントで埋め尽くされておりますぞ。あと姪っ子さんを僕に下さい、ハルルさんと仲良くなりすぎるな……あぁ、これは拙者も同感です、ほどほどでおなしゃっす」


 なんか面倒ごとになりそうだと感じた俺は……


「じゃ、帰るわ」


 その場から逃げるように去って行く。


「ちょっとカイ兄!」
「カイ兄様!?」
「……ほう、様付け? 相変わらずのたらしですねカイト」


 後日、盾男が日高円佳の研究所に就職か? なんてニュースになったそうだが、本当に勘弁してくれ。


※次回は12/29 18:00投稿予定です

 ブクマ・評価などをいただけますととっても嬉しいです。励みになります。

 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 

 また、他の投稿作品も読んでいただけると幸いです。


 この作品の他にも多数エッセイや


・追放されし老学園長の若返り再教育譚 ~元学園長ですが一生徒として自分が創立した魔法学園に入学します~

・売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果

・「俺ごとやれ!」魔王と共に封印された騎士ですが、1000年経つ頃にはすっかり仲良くなりまして今では最高の相棒です

 という作品も投稿しております。

 興味がございましたらぜひ!
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