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トイレの怪
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トイレって本当、居心地いいよね!
会社のトイレは、最近リニューアルしたところだからめっちゃ綺麗。
手洗い場があって、その先に個室が3つ横並びのシンプルな形状。
私はいつも一番手前の個室使ってる。
暖房便座でポカポカで、ちょっと長居してスマホ見たりしてサボったって、誰にも何も言われないの。
私は従業員も少ない小さな会社で働いていて、当時の女性従業員は私(25歳)とAさん(32歳)の2人だけ。
Aさんはとっても快活で優しい、お姉さんみたいな先輩。
その日は13時から電気設備の工事の日で、ちょうどひどくお腹壊して長いことトイレにいる時に停電になっちゃった。
手洗い場の窓から入ってくる日光だけだと本当頼りない、停電になるとすごく暗くなるんだ、って思ったよね。
まぁ、誰もいないし、スマホで動画見ながら気張ってたんだけど、人が通った気配がして慌ててスマホ閉じた。
Aさんが窓のところを通ったのか、一瞬暗くなったの。
いつも、「もう~また動画みて~早く戻りなよ!」とかって言ってくれるんだけど、今日は無言だったから、良かった!バレてない!と思って、スマホの音切って動画の続き見てた。
動画も見終わって、トイレも終わって、出ようかなって思った時、一番奥の個室からかな?すすり泣きと爪で壁を引っ掻くような音が聞こえてきた。
Aさんどうしたんだろ、隠れて泣くなんて、嫌なことでもあったのかな?
私がトイレに入ってるのも分かってるだろうし、声かけようかな……と色々考えたけど、トイレで立ち話もなんだしデスクに戻ろうと思って手洗い場へ。
私の個室でも暗かったんだから、一番奥の個室めっちゃ暗いだろうな、とAさんをちょっと心配しながらトイレから出た。
Aさんがいた。
「えっ?」
「おっ!お疲れ様~、今日もなんか動画見てたの?」
いつもと変わらない明るいAさん。
というか物理的にも明るい、いつの間にか停電終わってたみたい。
あれ?Aさんトイレにいるんじゃないの?
「ど、動画なんて見てませんよ!
お腹壊しててちょっと長居はしてましたけど。」
慌てて誤魔化した。
するとAさんは不思議そうに首を傾げて少し真剣な表情になった。
「いつも10分くらいで戻ってくるのに、今日は全然戻ってこないから何かあったのかな~って思って様子見に来たのよ~。仕事で悩んでることがあるならいつでも話してね。」
動画1本だけだから、そんなに時間は経ってないはずだけどと思って時計を見るといつの間にか14時を過ぎている。
13時から停電だったから、1時間以上もトイレにいたってこと?
というか、私にとってはトイレに今いるであろう誰かの方が気になる。
「私そんな長居してましたかね。すみません。ちなみに、今トイレに誰か入ってるみたいなんですけど、てっきりAさんかと思ってたんですけど。」
Aさんの表情が目に見えて曇る。
「その人と喋った?」
「喋ってはないですけど、泣いてる声が聞こえて。」
「そうなんだ。気のせいじゃない?それか、その人も気張ってたとか!」
2人で笑い合う。
そして、またAさんが真剣な顔をして暗いトーンで言う。
「これからはトイレ、30分以上も長居しちゃダメよ。」
「え、どうしてですか?」
「その人が近づいてくるから。
今回は無事でよかった。」
「それって……」
おばけってことですか?と聞こうとした時、Aさんの姿が雲のように薄くなって消えた。
私はもう何が何だか分からず、デスクに戻って近くにいた人に事情を話した。
「長い事トイレ行ってると思ったら何言ってるの、夢でも見た?
Aさん、トイレの改装工事中に行方不明になって、今も見つかってないじゃん。
現場監督だったからさ、いなくなってから色々大変だったでしょ、忘れたの?」
それから、かれこれ20年務めてる。
あの後もう一度、トイレに長居してしまったことがあって、隣の個室にすすり泣く人がいる体験をした。
爪で引っ掻く音が、すぐそばで聞こえた。
次は1番手前の個室、私のいる個室だと直感した。
Aさんに長居するなと言われたことを守れば良かったと激しく後悔した。
私は再度のトイレ改修を行った。
今度は私が現場監督として。
そこでAさんは見つかった。
トイレの改装工事中に何らかの事故で、トイレの床下に、ありえない形で巻き込まれるようにして亡くなってしまっていた。
あの日、Aさんは間違いなく私を助けてくれた。
すすり泣く人がAさんなのか、別人なのかは分からない。
Aさんを見つけて埋葬したことで、解決したのかもしれない。
でも今後も私は、トイレに長居できない。
すすり泣く人が私の個室に来るかもしれないから。
会社のトイレは、最近リニューアルしたところだからめっちゃ綺麗。
手洗い場があって、その先に個室が3つ横並びのシンプルな形状。
私はいつも一番手前の個室使ってる。
暖房便座でポカポカで、ちょっと長居してスマホ見たりしてサボったって、誰にも何も言われないの。
私は従業員も少ない小さな会社で働いていて、当時の女性従業員は私(25歳)とAさん(32歳)の2人だけ。
Aさんはとっても快活で優しい、お姉さんみたいな先輩。
その日は13時から電気設備の工事の日で、ちょうどひどくお腹壊して長いことトイレにいる時に停電になっちゃった。
手洗い場の窓から入ってくる日光だけだと本当頼りない、停電になるとすごく暗くなるんだ、って思ったよね。
まぁ、誰もいないし、スマホで動画見ながら気張ってたんだけど、人が通った気配がして慌ててスマホ閉じた。
Aさんが窓のところを通ったのか、一瞬暗くなったの。
いつも、「もう~また動画みて~早く戻りなよ!」とかって言ってくれるんだけど、今日は無言だったから、良かった!バレてない!と思って、スマホの音切って動画の続き見てた。
動画も見終わって、トイレも終わって、出ようかなって思った時、一番奥の個室からかな?すすり泣きと爪で壁を引っ掻くような音が聞こえてきた。
Aさんどうしたんだろ、隠れて泣くなんて、嫌なことでもあったのかな?
私がトイレに入ってるのも分かってるだろうし、声かけようかな……と色々考えたけど、トイレで立ち話もなんだしデスクに戻ろうと思って手洗い場へ。
私の個室でも暗かったんだから、一番奥の個室めっちゃ暗いだろうな、とAさんをちょっと心配しながらトイレから出た。
Aさんがいた。
「えっ?」
「おっ!お疲れ様~、今日もなんか動画見てたの?」
いつもと変わらない明るいAさん。
というか物理的にも明るい、いつの間にか停電終わってたみたい。
あれ?Aさんトイレにいるんじゃないの?
「ど、動画なんて見てませんよ!
お腹壊しててちょっと長居はしてましたけど。」
慌てて誤魔化した。
するとAさんは不思議そうに首を傾げて少し真剣な表情になった。
「いつも10分くらいで戻ってくるのに、今日は全然戻ってこないから何かあったのかな~って思って様子見に来たのよ~。仕事で悩んでることがあるならいつでも話してね。」
動画1本だけだから、そんなに時間は経ってないはずだけどと思って時計を見るといつの間にか14時を過ぎている。
13時から停電だったから、1時間以上もトイレにいたってこと?
というか、私にとってはトイレに今いるであろう誰かの方が気になる。
「私そんな長居してましたかね。すみません。ちなみに、今トイレに誰か入ってるみたいなんですけど、てっきりAさんかと思ってたんですけど。」
Aさんの表情が目に見えて曇る。
「その人と喋った?」
「喋ってはないですけど、泣いてる声が聞こえて。」
「そうなんだ。気のせいじゃない?それか、その人も気張ってたとか!」
2人で笑い合う。
そして、またAさんが真剣な顔をして暗いトーンで言う。
「これからはトイレ、30分以上も長居しちゃダメよ。」
「え、どうしてですか?」
「その人が近づいてくるから。
今回は無事でよかった。」
「それって……」
おばけってことですか?と聞こうとした時、Aさんの姿が雲のように薄くなって消えた。
私はもう何が何だか分からず、デスクに戻って近くにいた人に事情を話した。
「長い事トイレ行ってると思ったら何言ってるの、夢でも見た?
Aさん、トイレの改装工事中に行方不明になって、今も見つかってないじゃん。
現場監督だったからさ、いなくなってから色々大変だったでしょ、忘れたの?」
それから、かれこれ20年務めてる。
あの後もう一度、トイレに長居してしまったことがあって、隣の個室にすすり泣く人がいる体験をした。
爪で引っ掻く音が、すぐそばで聞こえた。
次は1番手前の個室、私のいる個室だと直感した。
Aさんに長居するなと言われたことを守れば良かったと激しく後悔した。
私は再度のトイレ改修を行った。
今度は私が現場監督として。
そこでAさんは見つかった。
トイレの改装工事中に何らかの事故で、トイレの床下に、ありえない形で巻き込まれるようにして亡くなってしまっていた。
あの日、Aさんは間違いなく私を助けてくれた。
すすり泣く人がAさんなのか、別人なのかは分からない。
Aさんを見つけて埋葬したことで、解決したのかもしれない。
でも今後も私は、トイレに長居できない。
すすり泣く人が私の個室に来るかもしれないから。
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