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8話
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深夜、喉が渇いた地球は、台所へ行こうとして、ふと、夜空を見上げてたたずんでいる月に気付いた。
普段のように髪を後ろでまとめておらず、重力に忠実に背中の半ばまで覆っている。それに、服も簡単な浴衣を着ており、ルミナス辺りの呼び出しを受けて外に出たわけではないようだ。
何かするわけでもなく、ただ空を見上げてたたずんでいるだけだった月は、何故かとても恐ろしく見えた。どこか、魂でも抜かれているかのように見える。
「うわっ、不吉っ」
後ろで聞こえてきた声に振り向くと、金星がいた。庭にたたずんでいる月を見て顔をしかめさせている。
「なんで?」
不吉という金星を不思議に思って聞いた。直立不動で動く様子のない月は恐ろしいが、不吉かと言われれば、そのようなことはない気がする。
地球の質問に、金星はまず小馬鹿にした表情を作ってから、どこか偉そうな口調で言った。
「あいつが意味もなく空見てるときに限って何かしら悪いことが起きるんだ。たいていは悪いことがな」
「そうですか?私が空を見ることと、その後に怒ることは、関係ないことが多いですよ?」
珍しく丁寧に説明してくれた金星の言葉を頭ごなしに否定する声に、地球と金星の2人が身を固くして声の聞こえてきた方を見ると、どこか不服そうな顔をした月が立っていた。
「こんな真夜中に何をしているのでしか?」
自分も真夜中に起きて、しかも外に出ていたことを棚に上げて、月が言った。
地球は言い返せなかったが、ふと、いつもなら反発する金星が何も言わないことに気付き、そちらを向くと、いつの間に逃げたのか、金星の姿はなかった。
ぽかんとする地球に月が何かを言って自室に帰っていたようだが、地球はたいして意識していなかった。
先程の、月の様子が脳裏に焼き付いて離れなかった。
――あの様子はまるで……――そこまで思い至ってハッと気付いた。あの様子はまるで、昨日、夕方に見た冥王星のようだったのだ。
でも、あれは見間違いだったはず……。そう勝手に納得した。冥王星も、先程の月も、どちらも見間違いだったのだ。
そう思いながらも、わき起こる不安は打ち消せなかった。
普段のように髪を後ろでまとめておらず、重力に忠実に背中の半ばまで覆っている。それに、服も簡単な浴衣を着ており、ルミナス辺りの呼び出しを受けて外に出たわけではないようだ。
何かするわけでもなく、ただ空を見上げてたたずんでいるだけだった月は、何故かとても恐ろしく見えた。どこか、魂でも抜かれているかのように見える。
「うわっ、不吉っ」
後ろで聞こえてきた声に振り向くと、金星がいた。庭にたたずんでいる月を見て顔をしかめさせている。
「なんで?」
不吉という金星を不思議に思って聞いた。直立不動で動く様子のない月は恐ろしいが、不吉かと言われれば、そのようなことはない気がする。
地球の質問に、金星はまず小馬鹿にした表情を作ってから、どこか偉そうな口調で言った。
「あいつが意味もなく空見てるときに限って何かしら悪いことが起きるんだ。たいていは悪いことがな」
「そうですか?私が空を見ることと、その後に怒ることは、関係ないことが多いですよ?」
珍しく丁寧に説明してくれた金星の言葉を頭ごなしに否定する声に、地球と金星の2人が身を固くして声の聞こえてきた方を見ると、どこか不服そうな顔をした月が立っていた。
「こんな真夜中に何をしているのでしか?」
自分も真夜中に起きて、しかも外に出ていたことを棚に上げて、月が言った。
地球は言い返せなかったが、ふと、いつもなら反発する金星が何も言わないことに気付き、そちらを向くと、いつの間に逃げたのか、金星の姿はなかった。
ぽかんとする地球に月が何かを言って自室に帰っていたようだが、地球はたいして意識していなかった。
先程の、月の様子が脳裏に焼き付いて離れなかった。
――あの様子はまるで……――そこまで思い至ってハッと気付いた。あの様子はまるで、昨日、夕方に見た冥王星のようだったのだ。
でも、あれは見間違いだったはず……。そう勝手に納得した。冥王星も、先程の月も、どちらも見間違いだったのだ。
そう思いながらも、わき起こる不安は打ち消せなかった。
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