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35話
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「邪魔を、するなあ‼」
崩れ始めた天井から落ちる岩の隙間から見えたのは、声を荒げて右手を挙げた冥王星と、その手の動きと同時に立ち上がったツタに串刺しにされる月の姿だった。
月を串刺しにしたツタはすぐに消えた。
ツタが消えるのと同時に、まるで支えがなくなったかのように、天井や、壁の崩壊の速度が上がった。
崩れる岩によって、冥王星と、血まみれになって横たわる月の姿が見えなくなる。
しばらくして、天井の崩壊が止まった。そして、カラン、と軽い音を立てて金色に光を反射する何かが落ちてきた。
拾い上げてみると、金箔の貼られた柄に、真珠が一粒ついている、地味なかんざしだった。祭りの時の屋台で地球が月に買ったものだった。
「助けないと」
地球はそう言うと、立ち上がってこの中で地の力を持つ唯一の人である金星のほうを見た。
「無理だ」
とても冷たい声で言われる。意地悪をしている時の声のほうがまだ温かいのではないだろうか。金星本人も、自分の声が冷たくなってしまったことに驚いていた。
「なんで?ねぇ、なんでなの?助けないと!月があんな大けがしたんだよ!助けゲホッゴホッ」
まくしたて、そしてすぐにせき込んだ地球を、慌てて金星が支えた。いきなりせき込む地球の様子に周りは青ざめた。
当の地球はといえば、フッと、溶けるように意識をなくした。
◇◇◇――――◇◇◇
チャプッと音を立てて、冥王星は血だまりの中に足を踏み入れた。冥王星の周りの眼球は、血だまりの中に横たわる月を冷たく見下ろしている。
「まあ、あの方の命令は達成できたから良しとするよ」
感情の一切こもらない声で言った冥王星の向いている先にいるのは、その特徴的な白い髪を血で赤く濡らした月だった。その白い服も血を吸って赤く染まっている。
天井に、いつの間にかできて穴からは、夜を照らす白い光が、徐々に赤く染まっていっていた。
崩れ始めた天井から落ちる岩の隙間から見えたのは、声を荒げて右手を挙げた冥王星と、その手の動きと同時に立ち上がったツタに串刺しにされる月の姿だった。
月を串刺しにしたツタはすぐに消えた。
ツタが消えるのと同時に、まるで支えがなくなったかのように、天井や、壁の崩壊の速度が上がった。
崩れる岩によって、冥王星と、血まみれになって横たわる月の姿が見えなくなる。
しばらくして、天井の崩壊が止まった。そして、カラン、と軽い音を立てて金色に光を反射する何かが落ちてきた。
拾い上げてみると、金箔の貼られた柄に、真珠が一粒ついている、地味なかんざしだった。祭りの時の屋台で地球が月に買ったものだった。
「助けないと」
地球はそう言うと、立ち上がってこの中で地の力を持つ唯一の人である金星のほうを見た。
「無理だ」
とても冷たい声で言われる。意地悪をしている時の声のほうがまだ温かいのではないだろうか。金星本人も、自分の声が冷たくなってしまったことに驚いていた。
「なんで?ねぇ、なんでなの?助けないと!月があんな大けがしたんだよ!助けゲホッゴホッ」
まくしたて、そしてすぐにせき込んだ地球を、慌てて金星が支えた。いきなりせき込む地球の様子に周りは青ざめた。
当の地球はといえば、フッと、溶けるように意識をなくした。
◇◇◇――――◇◇◇
チャプッと音を立てて、冥王星は血だまりの中に足を踏み入れた。冥王星の周りの眼球は、血だまりの中に横たわる月を冷たく見下ろしている。
「まあ、あの方の命令は達成できたから良しとするよ」
感情の一切こもらない声で言った冥王星の向いている先にいるのは、その特徴的な白い髪を血で赤く濡らした月だった。その白い服も血を吸って赤く染まっている。
天井に、いつの間にかできて穴からは、夜を照らす白い光が、徐々に赤く染まっていっていた。
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