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4章
35話:呪詛
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――しかし、ヤクルがその認識に追い付かなかったのは、単に彼が追い付こうとしていなかっただけであった。
「……フン!」
全くの無傷、それでいて全く痛みを覚えていない彼の身体は、橙色の斬撃を受けながらもそれをすり抜け、回し蹴りを思い切り振り抜く。ゴーレムの身体は蹴りが直撃するや否や、火を付けられたロケット花火かのように吹き飛んだ。
さらにヤクルは足に備え着いたジェット噴射で自ら吹き飛ばしたゴーレムの勢いに追い付き、真上から回し蹴りを喰らわせた。ゴーレムは蹴りをきっかけに吹き飛ばされる角度を直角に変え、大きな土埃を立てて地面に激突した。
「ど……どうだ!」
『すごいヤクルさん……あのスケルトンたちを統べるゴーレムを一撃で……!』
『のゐるちゃんまだだよ……ヤクル! なにか来る!』
その瞬間――塔がほどけた。
それまで塔だと思っていたものは骸骨たちの骨の体躯ひとつひとつであったのだ。それらすべてが塔であることをやめ、まるで餌に群がる蟻のように無我夢中で、蹴り飛ばされたゴーレムへ向けて駆けていく。
それだけではい、地面に蔓延るスケルトンたちも一斉に駆け出し、一ヶ所を目掛けて集まりはじめた。目に見えるすべてのスケルトンたちが、ひとつの集合体になっていく。
その集合体はかつて大柄な男と伺えたその姿を、大きく変貌させた。
機龍だ。
首から先に小さな面影を残して、黒い機龍は飛んだ。あまりにも複雑に絡み合ったその龍には、最早ゴーレムであった原型がない。個々としての境界線は消え、ただ目的のための手段としてひとつの物体になり得た。
その姿は、一年前ヤクルたちが飛行船からショッキングピンクのパラシュートで降下した直後に見た、巨大な龍のそれによく似ていた。
『ひ、皮膜のない羽根で空を飛ぶなんて……』
『のゐるちゃん、羽根から微かに展開したバリアを操ってるんだよ。いま奴はそのなかにいる』
『バ、バリアを纏っているんですか……!? そんな、それではこちらの攻撃が通らないんじゃ……!』
『熱やレーザー系の攻撃は一切通じないね。それに、視認できないからあれを武器に戦われたら厄介かも』
機龍はヤクルを飛び越し、見下しながら言葉にならない咆哮を放った。
『繝、繧ッ繝ォ繧オ繝ウ繝九ワ繝ッ繧ォ繝ゥ繝翫う繝弱ョ繧ケ繝偵ざ繧ヲ繝ェ繝、繧ォ繝ウ繧ク繝ァ繧ヲ繧ャ繧ス繝弱Β繧ォ繧キ繧「繝ゥ繧ス繧、繝、繧オ繝吶ヤ繝イ繧ヲ繝溘ム繧キ繧ソ繧ウ繝医ぎ!!!』
その咆哮は呪詛のような響きを持ちながらも、ゴーレムが持つすべての主張を込めた発狂のようであった。
『ヤクル! スケルトンたちの動力が集中してる! さっきまでのゴーレムとは違うよ! 大きいのが来る!』
機龍が一体となったことで、その力もまたひとつになった。
黒い骨格の裏側でオレンジ色の光が漏れ出し、次第にそれは力強く集約していく……。
そしてついにひときわ大きな怪光を放ったとき、不可視の壁がヤクルを襲った。
『ヤクルさ……っ!!?』
ヤクルは見えない壁に思い切り吹き飛ばされた。今度は彼が機龍によって、地面に強く叩きつけられた。
そして、更にその見えない障壁でもって、更に圧し潰され、圧し潰され、圧し潰され、圧し潰される。
地割れが起きても、大地が形を変えても、勢いは止まらない。止まらない止まらない止まらない。
機龍が更に出力を上げると、ヤクルはなおも地面に叩きつけられた。あっという間に数十メートルもの大きな穴に沈められるが、機龍の攻撃は留まることを知らない。
『ヤクル先生! なんという強さでしょう! 感服させられるほどです。この一年であなたがどんな経験を積んできたか存じ上げませんが、相手に不足ありません!』
『#死んで貰います! 我々の為にもどうか死んでくださいませ! 私のようなゴーレムにはやはり貴方の命が非合理的なものに思えてやまないのです! 癪に障ります! 嗚呼どうして貴方は我々に逆らおうとするのですか!』
『我々ゴーレムが貴方たちを管理して差し上げようと申し上げているのです! 貴方たちは些か考えなしに増え過ぎました! 貴方たちの私利私欲のためにどれほどの戦争が起き、どれだけの同胞たちが死んでいったとお思いですか!』
『貴方たちは自らの欲望のままに世界を滅ぼそうとした癖に、道具への感謝は忘れて自分たちの命は尊いと主張する! なんという厚顔無恥でしょうか! 万死に値する!』
機龍はヤクルを圧倒した。ゴーレムが集めた群衆は龍というひとつなって、個の機動力すべてを結集させている。その強さを見せつけた。
一方ヤクルは怒涛の攻撃をその身に受け、更には主張まで浴びせられたことで、無意識に自らが受けてきたいじめをフラッシュバックしていた……。
「……フン!」
全くの無傷、それでいて全く痛みを覚えていない彼の身体は、橙色の斬撃を受けながらもそれをすり抜け、回し蹴りを思い切り振り抜く。ゴーレムの身体は蹴りが直撃するや否や、火を付けられたロケット花火かのように吹き飛んだ。
さらにヤクルは足に備え着いたジェット噴射で自ら吹き飛ばしたゴーレムの勢いに追い付き、真上から回し蹴りを喰らわせた。ゴーレムは蹴りをきっかけに吹き飛ばされる角度を直角に変え、大きな土埃を立てて地面に激突した。
「ど……どうだ!」
『すごいヤクルさん……あのスケルトンたちを統べるゴーレムを一撃で……!』
『のゐるちゃんまだだよ……ヤクル! なにか来る!』
その瞬間――塔がほどけた。
それまで塔だと思っていたものは骸骨たちの骨の体躯ひとつひとつであったのだ。それらすべてが塔であることをやめ、まるで餌に群がる蟻のように無我夢中で、蹴り飛ばされたゴーレムへ向けて駆けていく。
それだけではい、地面に蔓延るスケルトンたちも一斉に駆け出し、一ヶ所を目掛けて集まりはじめた。目に見えるすべてのスケルトンたちが、ひとつの集合体になっていく。
その集合体はかつて大柄な男と伺えたその姿を、大きく変貌させた。
機龍だ。
首から先に小さな面影を残して、黒い機龍は飛んだ。あまりにも複雑に絡み合ったその龍には、最早ゴーレムであった原型がない。個々としての境界線は消え、ただ目的のための手段としてひとつの物体になり得た。
その姿は、一年前ヤクルたちが飛行船からショッキングピンクのパラシュートで降下した直後に見た、巨大な龍のそれによく似ていた。
『ひ、皮膜のない羽根で空を飛ぶなんて……』
『のゐるちゃん、羽根から微かに展開したバリアを操ってるんだよ。いま奴はそのなかにいる』
『バ、バリアを纏っているんですか……!? そんな、それではこちらの攻撃が通らないんじゃ……!』
『熱やレーザー系の攻撃は一切通じないね。それに、視認できないからあれを武器に戦われたら厄介かも』
機龍はヤクルを飛び越し、見下しながら言葉にならない咆哮を放った。
『繝、繧ッ繝ォ繧オ繝ウ繝九ワ繝ッ繧ォ繝ゥ繝翫う繝弱ョ繧ケ繝偵ざ繧ヲ繝ェ繝、繧ォ繝ウ繧ク繝ァ繧ヲ繧ャ繧ス繝弱Β繧ォ繧キ繧「繝ゥ繧ス繧、繝、繧オ繝吶ヤ繝イ繧ヲ繝溘ム繧キ繧ソ繧ウ繝医ぎ!!!』
その咆哮は呪詛のような響きを持ちながらも、ゴーレムが持つすべての主張を込めた発狂のようであった。
『ヤクル! スケルトンたちの動力が集中してる! さっきまでのゴーレムとは違うよ! 大きいのが来る!』
機龍が一体となったことで、その力もまたひとつになった。
黒い骨格の裏側でオレンジ色の光が漏れ出し、次第にそれは力強く集約していく……。
そしてついにひときわ大きな怪光を放ったとき、不可視の壁がヤクルを襲った。
『ヤクルさ……っ!!?』
ヤクルは見えない壁に思い切り吹き飛ばされた。今度は彼が機龍によって、地面に強く叩きつけられた。
そして、更にその見えない障壁でもって、更に圧し潰され、圧し潰され、圧し潰され、圧し潰される。
地割れが起きても、大地が形を変えても、勢いは止まらない。止まらない止まらない止まらない。
機龍が更に出力を上げると、ヤクルはなおも地面に叩きつけられた。あっという間に数十メートルもの大きな穴に沈められるが、機龍の攻撃は留まることを知らない。
『ヤクル先生! なんという強さでしょう! 感服させられるほどです。この一年であなたがどんな経験を積んできたか存じ上げませんが、相手に不足ありません!』
『#死んで貰います! 我々の為にもどうか死んでくださいませ! 私のようなゴーレムにはやはり貴方の命が非合理的なものに思えてやまないのです! 癪に障ります! 嗚呼どうして貴方は我々に逆らおうとするのですか!』
『我々ゴーレムが貴方たちを管理して差し上げようと申し上げているのです! 貴方たちは些か考えなしに増え過ぎました! 貴方たちの私利私欲のためにどれほどの戦争が起き、どれだけの同胞たちが死んでいったとお思いですか!』
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