スコウキャッタ・ターミナル

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第16章 派手な幕引き

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 翌日から三人はこれまでと真逆のことをしました。つまりケーニヒがいないときにその部屋を見て回るのではなく、ケーニヒ本人を調べることにしたのです。しかしケーニヒがいてもいなくても、特に変わったことは見つかりません。
 仕事をフラッフィ任せにしているとはいえ、ケーニヒはいたって普通の、規則正しい生活を送っていました。どこかに出歩くこともなければ、誰かが尋ねてくることもありません。朝起きたらシャワーを浴び、新聞を読みながら朝ご飯を食べ、それが終わるとフラッフィの仕事ぶりをチェックします。これは進捗状況を確認するマネージャー的仕事ではなく、ただ単にフラッフィがさぼっていないか、もしくは逃げていないかを確かめるだけのものでしたが、とにかくそれが済むとフラッフィに一日分のケチャップ落とし剤を渡し、町へ出ます。朝のマーケットで食材を買いがてら、町でケチャップ銃が流行っているかを見るのです。そして帰ってくると買ってきたもので簡単に昼食を済ませ、掃除をし、あとは趣味のフィギュアの手入れに没頭します。ケーニヒはミニチュアの自動車やオートバイのコレクターなのです。そんなこんなで夜になるとご飯を食べ、歯磨きをして夜早く寝る。これがケーニヒの一日でした。もちろん合間合間にフラッフィに茶々を入れ、ほくろ毛を確認してはいましたが、それ以外はとりたてることのない生活です。


 双眼鏡を改造した覗きスコープから目を外したエレンは、代わり映えのないケーニヒに溜息をつきました。これは地下の倉庫にいながら二階のケーニヒの部屋を見ることができる便利なスコープなのですが、なんとこれを開発したのはリンでした。リンは電気のない島で生まれ育ったのに、その反動なのか、この町に来て以来近代的発明品にいたく感動し、いまでは見よう見まねでこんなものを作れるようにまでなっていました。
「こんなに何もないなんて誰が想像した?」
「知っているよ、僕も交代で見ているんだから。しかしこんなにびったり張りついて監視しているのに、ケチャップ落とし剤を作っている様子がないなんて変じゃないか?」
言われてみればケーニヒが洗剤を調合する様子はありません。外に出かけるときも注意深く尾行していますが、変わったものを買うことも、どこかで作っている気配もありません。これはどういうことでしょう。
「でも僕たちが見ていないのはシャワールームくらいだよ。もしかしてあの洗剤がシャンプーでできているとでも言うの」
「いや、シャンプーで落ちるならみんなの家の洗剤でとっくに落ちているよ。でもそうでないということは、ケーニヒはシャワールームで調合しているんじゃないかな」
リンは顎をぽりぽりしながら、自分に言い聞かせるように言いました。エレンはさすがにシャワールームを見るのは気が引けましたが、洗面台までだからというリンのことばを信じて、好きにさせることにしました。


 翌朝、二階の蛇口がひねられて、地下の倉庫でも水道管の軋む音が聞こえはじめた頃、スコープを覗いていたリンは大きな声を上げました。駆けつけたエレンが二個あるスコープのひとつから覗くと、目の前にケーニヒの顔が大写しになっていたので、エレンは思わずうっと小さな声を上げました。二階の鏡の上に覗きスコープをつないだので、ちょうど洗顔中のケーニヒと向き合うアングルになっていたのです。

 ケーニヒは鼻歌まじりにほくろ毛を撫でると、マッチを擦って、トルコの香水瓶のような美しいアルコールランプに青い三角の炎を点しました。そして棚から真鍮のコンパスのようなものを取り出すと、軽快にくるりと回しました。それは変わったコンパスで、一方の、紙に刺す針の部分には手で持つ「つまみ」がついていて、もう片方の、エレンが学校で鉛筆を入れる部分にはメスのような細い刃がついています。
 ケーニヒはこのコンパスの持ち手を右手でつまむと、コンパスの刃がオレンジ色になるまでアルコールランプの炎であぶりました。そしてぴんと張るようにほくろ毛を左手でつまむと、コンパスの軸を毛の先端に当てて、コンパスの半径の分だけほくろ毛を切りました。
 切口から紫色の細い煙を上がている毛を手早く真鍮の皿に乗せると、ケーニヒは息をかけて燃焼を促進しました。すると毛はぱっと燃え尽きて、ねずみ色の灰だけが残りました。ケーニヒはその灰を丁寧に集めると、小瓶に入れ、そこに市販の液体洗剤を注ぎました。すると中身は薄い紫に光り、ケーニヒは満足そうに瓶の蓋をきっちり閉めました。続いてこの男が取り出したのは、例の毛生え薬。しかし彼が薬を塗ったのは焼き切った切口ではなく、毛穴というかほくろでした。薬をよほど大事にしているらしく、彼は薬を手に広げてなじませたりはせず、スパチュラでちょんちょんとしみ込ませるだけにしました。


 スコープから目を離したエレンは胃がムカムカしていました。洗剤はケーニヒのほくろ毛を原料に作られていたのです! エレンはこの店でオレグの服を洗ったことを後悔しました。
「なんであんな気持ちの悪いもので洗わなきゃならないの」
しかしリンは、エレンが込み上げるものを必死に抑えていることに気がつきもしません。むしろ明らかになった事実を反芻するのに忙しそうです。
「やはり洗剤は浴室で作られていた。たしかに呪いを解けば汚れを落とせるけれど、まさかそれを逆手にとって商売をやるなんて。ケーニヒというのはまったく頭の切れる奴だ。もっともそのせいで自らの身を滅ぼすことになるけれど」

 リンのこのことばからして、フラッフィが仕事から帰ってくる夜にも、これからの作戦を聞くものだとエレンは思っていました。しかし夜になっても、リンはまったく話をしないどころか、一人で何かをやっている様子もありません。エレンは耐えかねて、ビデオカメラいじりをしていたリンに尋ねました。しかしリンは、今まで通りでいいよとしか言いません。さらに彼は、その日以降、覗きスコープでケーニヒを監視することすら辞めてしまったのです。
 エレンはがっかりしました。しかし前にリンに裏切られたことを思い出して、逆にリンを信頼しはじめていた自分をなじりました。そして、せめて自分だけでもフラッフィをたすけるために、店頭の仕事をやることにしました。洗濯を手伝いたい気持ちは山々でしたが、それは契約違反になってしまいますからね。


 そんな日が何日か続いたある日、依頼を受けた洗濯物を洗い場に持っていこうとエレンが中庭に向かっていると、洗濯物のひとつに、リンがケチャップ銃を向けているところに出くわしました。
「フラッフィがあんなに頑張っているのに、君はとうとう邪魔をするようになったんだね? 頭が狂ってしまったとしか思えない。もう君とは絶交さ!」
エレンに糾弾されているのに、リンはへらへらしています。
「エレンはのぼせやすいんだから。まぁこれを見てよ」
ケチャップのついた服を拾い上げると、リンはたらいに入った液体に、二、三回シャツをくぐらせました。そして軽く絞って、エレンの前に広げてみせました。シャツには一点の汚れもありません。しかもそれは首もとのタグに「リン」と書かれたシャツでした。
「これは僕の個人的なシャツだし、実験だったんだ」
「でもフラッフィの洗剤を盗んだでしょ。だから汚れが落ちたんだ」
エレンはリンへの不信感を露にしました。
「違うよ! これは市販の洗剤だ。ケチャップ銃はもちろんナツィオン・ケチャップ社のものだけれど」

 まだ信じないエレンに、リンは密かに進行していた作戦について語りました。それによると、あのほくろ毛の秘密について知った日、リンはケーニヒがいないのを見計らって、魔法の毛生え薬の中身を盗みました。持ってきた容器に魔法の薬を移し、薬の入っていた瓶には水道の水を入れたのです。そしてリンは、魔法の薬の秘密を解明することに成功しました。
「ケーニヒが毛生え薬を根元に塗るのは、新しく生える毛に魔力を宿すためで、毛が伸びる間に作られたケチャップには呪いがかかって汚れが落ちなくなる。しかし僕がその魔法の薬をただの水に取り替えたから、あの日以降に製造されたケチャップには呪いがかかっていない。僕のシャツはそのことを証明している」
「でも呪いにかかったケチャップはまだいっぱい残っている。これじゃフラッフィが店を出られるのはずっとずっと先だよ」
エレンはがっくりと肩を落としました。
「エレン、まだ諦めるのは早い。ケーニヒはどうやって洗剤を作っていた?」
「どうって。ほくろ毛を切って燃やす・・・あ!」
リンは嬉しそうに頷きました。
「そう。ケーニヒは洗剤を作るために毎日毎日毛を切って、呪いを少しずつ解いているんだ。魔法の毛生え薬があった頃は、その分新しい呪いが生まれていたけれど、すり替わったいまは呪いが解かれるばかり。あと二、三日もしたら呪いは完全に消滅するよ」
エレンは思わず、リンに飛びつきました。
「どうしたらいいの、リン」
「君はいま店頭に立っているから、注文を受けるべきか、受けなくてもいいかジャッジするんだ。普通の洗剤をたらして、ケチャップが落ちたら家で洗うように言って、落ちなかったら引き受ける。これだけでもずっと仕事量は減るし、そうなれば累積分にも手が回る。僕の方はこの事件をリークするための準備があるから、あまり手伝えそうにないけど、二人でやれるかい?」
「フラッフィの引退セレモニー、派手にやってあげてよね」
エレンがこう言うと、リンは小さく二回頷きました。


 トマト祭までの一週間、フラッフィとエレンはほとんど記憶がなくなるくらい猛烈に働きました。祭が近づいてきたので、店を訪れる人数自体は増えていましたが、例のパッチテストのおかげで大半の洗い物はそれぞれの家庭に持って帰られていました。しかも受ける注文が減った分、それまではフラッフィに余力があっても、魔法の洗剤不足で後回しになっていた累積分をどんどん洗うことができました。加えて、お天気がずっとよかったこともあり、洗濯物はみるみる減っていきました。

 トマト祭の前夜、あんなにあった洗濯物はきれいさっぱりなくなりました。真っ白に洗いあげられた洗濯物の一枚一枚にアイロンをかけながら、フラッフィは涙が止まりませんでした。しかし最後のシャツをハンガーにかけてしまうと、フラッフィはばたんと床に倒れて、もう二度と洗濯はしないと言いました。
 長年使った部屋を掃除して、わずかばかりの荷物をリュックサックに詰めると、フラッフィは部屋に一礼して、二階のケーニヒの部屋のドアをノックしました。ケーニヒはテレビでトマト祭の特集を見ているところでした。
「どうした。もう一年世話になるという挨拶なら要らんぞ」
ケーニヒは食べていたクラッカーを飛ばしながら、意地悪く笑いました。
「いいえ、ケーニヒさん。お別れの挨拶に来たんです。なにせ洗濯物は洗い終わりましたから」
「はん! 寝ぼけたことは寝てからいいな」
ケーニヒは端から信じていないようでしたが、フラッフィがまったく怯まないので、やがてどたどたと洗濯部屋へ走りました。

 真っ暗な部屋に裸電球が点ると、たしかに洗濯物は一枚もなく、道具も整然と整理されています。
「まさか! ずるをしたに違いない。フラッフィ、預かった洗濯物をどこに隠した? まさか燃やしたりしていないだろうな」
「そんなことはしていません。ちゃんと全部ひとりで洗いきったんです。そうでなければ僕の腕はとっくにとれてしまったでしょう」
フラッフィがこう言うと、ケーニヒはなるほどと呟きました。しかしやはり納得いかないようで、ついに本性を現しました。
「ええい! こうなったら契約など関係ない。お前は一生この店で働くんだ!」
鬼の形相でフラッフィに襲いかかろうとした瞬間、悪徳経営者はなにかにつまずいて派手に転びました。それはエレンがわざと突き出したモップの柄でした。
「このくそガキ! どこから入ってきた! 二人ともまとめて痛い目を見せてやるっ!」
しかしケーニヒがエレンの方に近づこうとしたとき、誰かがその前に立ちはだかりました。その人は大きなプロ用のテレビカメラを覗き込んでいます。
「ケーニヒさん! そんな怖い顔をドアップにしたら子どもたちが怖がりますよ」
レンズから目を離したリンは、落ちてきた前髪をかきあげました。
「な、なんだ。お前は。ここで何をしている」
「なにって取材ですよ。なにせウォーホランディで一番の人気者、フラッフィが町を出ると聞きましてね。トマト祭前日に相棒を送り出してやるなんてあなたも寛大ですよ、ケーニヒさん」
ケーニヒは顔を真っ赤にして怒りました。まるでナツィオン・ケチャップで塗りたくったように。
「俺はそんなことは許していない。そもそも勝手に入りこむなんて住居侵入罪で訴えるぞ!」
「あなたにそんな権利がありますか。フラッフィとの契約を反故にしようとしているのに」
「う、うるさい! お前には関係ない」
しどろもどろするケーニヒに、エレンは食ってかかりました。
「関係ないことあるもんか! フラッフィは大切な友達だ。友達がいじめられているのに見て見ぬ振りなんかできない」
「ケーニヒ。お前の悪事はいまこの瞬間も、町中に生放送されているんだ。大人しく観念しろ」

 リンが追い打ちをかけると、ケーニヒはもう何も言えず、ただテレビカメラを奪おうとしました。しかしその瞬間、警官隊がどっと流れ込んできて、ケーニヒはあっという間に羽交い締めにされてしまいました。
「ケーニヒ! これは立派な労働基準法違反だ」
若い警察官が咎めても、ケーニヒは認めません。
「これは俺とこいつの話だ。警察は口を出すな。それにあと何時間かしたらトマト祭なんだ。洗い終わったのが数時間後だと思えば、何も問題ないじゃないか」
するとケーニヒよりずっと大きな警察署長が現われて、ケーニヒのすぐ真上から忠告しました。
「これ以上罪を増やすんじゃない。ナツィオン・ケチャップの社長も町長も逮捕されているんだ」
さすがのケーニヒもこれを聞くとぐうの音もでなくなって、渋々手錠をされました。

 ケーニヒがお縄になると、フラッフィはふいに隣にいた警官になにやら耳打ちしました。すると警官はこくりと頷いて、フラッフィをケーニヒの顔の前まで持ち上げました。エレンは長年の恨みでビンタでもするのかしら、と思いましたが、フラッフィはケーニヒのほくろ毛をぐいっと引っこ抜いただけでした。
 ほくろまでとれてしまったのではないかと思われるほど大きくて黒々とした毛根がエレンにも見て取れたので、抜かれたケーニヒはかなり痛かったにちがいありません。案の定ケーニヒは反射的に頬を押さえようとしましたが、ケーニヒの腕をがっちり押さえていた両隣の警官はそれを許さず、同じく厳格な警察官のひとりにフラッフィがほくろ毛も託すと、その人はぴりっとした敬礼を返しました。


 さてケーニヒが店から連行されると、男性レポーターが人垣を割って店内に入ってきました。
「私はいまケーニヒ・クリーニング店の内部にいます。ケチャップを落とすこの場所でまさか呪いがかけられていたなんて一体誰が想像したでしょうか。しかもこの事件には町長やナツィオン・ケチャップ社も関わっていたというから、まったくおぞましいことです。あ、看板店員のフラッフィさんです。お話を伺いましょう」
男性リポーターに突然マイクを向けられ、フラッフィは戸惑いました。しかしリンが何かを耳打ちすると、ゆっくり一回深呼吸してマイクをとりました。
「ウォーホランディのみなさん、こんばんは。クリーニング屋のフラッフィです。僕は今夜、町を出ます。この町のことは大好きだけど、みんなが僕に対して間違ったイメージを持っていて、実際の僕との違いにみんなががっかりするのがこわいんです。だから僕のことを何も知らない人たちのところに行ってみようと思います。真っ白ふんわりおひさまのにおいのないところに。だからまた会う日までさようなら」

 フラッフィが一礼してリポーターにマイクを返すと、どこからともなく拍手が起こり、やがて店の前は大きな拍手とフラッフィ、ありがとうという歓声に包まれました。
 集まった人々の中には足しげく通ってくれた常連のお客さんも何人かいたので、フラッフィの目は画像加工していないのに、アイドルみたいにキラキラ光りました。きっと胸が熱くなったのでしょう。こみ上げてくるものはエレンも同じでしたが、リンがふと車に乗り込むように言ってきたので、二人は顔を見合わせました。
「車?」
「いまから?」
「こんな涙なみだの挨拶をして、出て行かないって方が変だよ」

 店の前にはフラッフィとの別れを惜しむ人たちの花道ができていて、用意されたミニバンに乗るのも一苦労でした。しかしそんな中でもダイナーのおかみさんは人垣をかき分けて挨拶に来てくれて、「次にくるのはこれよ」と塩とこしょうと秘伝のスパイスを調合した調味料をエレンの手に握らせました。どうやらおかみさんはケチャップ人気が急降下したいまに商機を見い出しているようです。
 おかみさんへのお礼もほどほどに、揉みくちゃにされたエレンとフラッフィがバンに乗り込むと、見送りに来たあのリポーターが同じく車に乗り込もうとしているリンに声をかけました。
「やはり気は変わらない? 今回ほど恵まれたデビューはないのに」
リンはその気がないのに、目をぱちくりさせました。しかしリポーターは間もなく、負けたよと言わんばかりに、肩をすくめてリンに握手を求めました。
「僕が先輩から譲り受けた車だ。古いけれど、大事にしてくれよ」
「もちろんさ。恩に着る!」
リンとの握手を終えると、気持ちのいいリポーターは景気付けにバンを軽く叩きました。

 全員が乗り込んだものの、人が多すぎて車を進められず困っていると、通りの向こうから長いクラクション音がして、人々はわらわらと道を空けはじめました。それはトマトを積んだトラックの一団でした。トマト祭用のトマトが各地の農場から運んで来られたのです。
「しめた。これでやっと出られるぞ」
リンがエンジンをかけてようやく、エレンはレネのことを思い出しました。この町に来た日にケーニヒ・クリーニング店で見かけて以来、見ていません。
「リン、レネを探せていない」
エレンがリンの腕を掴むと、リンは前の方を顎でしゃくってみせました。見れば、トマトのトラックに混じって流れてきた、レモン色の三輪自動車の荷台にレネが乗っています。
「大丈夫、ちゃんと追いつけるさ」
リンがバックミラーを調整した拍子に、エレンはそこに映った車後方の様子を目にしました。人ごみに阻まれてなかなか進めずにいるアルフォンスとガストンの自転車が見えます。
「早いとこ、出そう。あいつらが追ってきてる!」
「君の猫の被害者?」
猫を追っている二人組のことを、エレンはリンとフラッフィに話していました。しかしリンが二人を見るのはこれが初めてです。
「リン、早く車を出してよ。洗濯物をめちゃめちゃにした奴らの顔なんてできるだけ見たくない。それに僕、外に行くのが待ちきれないんだ」
フラッフィは興奮気味に言いました。
「オーケー。それじゃ全員シートベルトを忘れないで」
 空色のバンは静かに走り出しました。三人との別れを惜しむ人々の声は一段と大きくなって、色々な声が耳に届きます。しかし町の人々の笑顔が豆粒くらい小さくなるとそれは一つの声のようになり、やがて後ろに見えるのがバンの轍だけになった頃、フラッフィはあの聞こえなくなった声がウォーホランディの声だったのだと思いました。
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