20 / 30
誘拐…からの
しおりを挟む
「んんーーっ!!」
坊っちゃまに突然腕を引っ張られたと思ったら、口を塞がれたような悲鳴が隣から聞こえた。見ると付いてきたいかつい男に抱えられハンカチっぽいもので口を押さえられた姿が。
「っな!?何してるの!!止めてっ」
「騒ぐな。坊っちゃん殺すぞ」
飛び掛かろうとした私を男は低い声で脅す。びくりと体が動かなくなった。
「人質は丁重に扱えって言わなかった?お前が死ぬよ?」
聞いたことのないルイ君の冷たい声とカチリとした音はもしかしなくとも拳銃だろう。
「坊っちゃまのことを思うなら騒がないでね?」
ニコリと笑うルイ君。薬を嗅がされたのか眠った坊っちゃまを抱えた男と一緒に車に乗せられる。
扉を閉めたルイ君は、運転席に乗り込んでそのまま車を発進させた。
ぐったりとする坊っちゃまの顔を見つめながら、握り締めた拳にぐっと力を込めることしか出来なかった。
▪️▪️▪️
アルバートは困惑していた。
なんとか主人であるエリザベスを説得し、せめて謝罪だけでもとマナに会いに行こうと屋敷を出て、すぐに不審な車を発見。
様子から見て明らかに無人であるのと、回りにも不審人物がいないことを確認し、リサに連絡するまでは冷静な対処だった。
助手席に見覚えのあるスマホが置いてある。まさかと自身のケータイから発信すると車内のスマホが鳴り始め、画面に「アルバートさん」の文字が。
「なんで、マナのが? ……っ!」
車内を見回し、後部座席に女性ものの洋服があることに心臓がどくりと嫌な音を立てた。
躊躇わず運転席の窓ガラスをぶち破って乗り込む。車内には丁寧に畳まれた洋服とメイク道具一式だけしかないことを確認して、ゆっくりと車の後ろへ向かったアルバートは、一瞬躊躇した後トランクを開けた。
中に何もないことに、知らず詰めていた息を吐く。
再度リサへ連絡をと、手に取ったケータイに着信が入った。
ピッ
「アルバート!聞いて、今──……」
「……そうか、分かった。更にあいつも一緒の可能性が高い。ああ……ああ……、すぐに準備を。俺も一緒に向かう」
後悔やら自責の念やらをぐっと押し込めたアルバートは、冷静になるよう自分を叱咤した。
後悔なら後でいくらでも出来る。こうならない為に遠ざけたつもりだったとか。結局危険に晒してしまったとか。
(だが、まだ間に合う。まだ手の届く所にいる)
ならば、今出来る最善を。
アルバートは守るべき笑顔を思い浮かべ、駆けていった。
坊っちゃまに突然腕を引っ張られたと思ったら、口を塞がれたような悲鳴が隣から聞こえた。見ると付いてきたいかつい男に抱えられハンカチっぽいもので口を押さえられた姿が。
「っな!?何してるの!!止めてっ」
「騒ぐな。坊っちゃん殺すぞ」
飛び掛かろうとした私を男は低い声で脅す。びくりと体が動かなくなった。
「人質は丁重に扱えって言わなかった?お前が死ぬよ?」
聞いたことのないルイ君の冷たい声とカチリとした音はもしかしなくとも拳銃だろう。
「坊っちゃまのことを思うなら騒がないでね?」
ニコリと笑うルイ君。薬を嗅がされたのか眠った坊っちゃまを抱えた男と一緒に車に乗せられる。
扉を閉めたルイ君は、運転席に乗り込んでそのまま車を発進させた。
ぐったりとする坊っちゃまの顔を見つめながら、握り締めた拳にぐっと力を込めることしか出来なかった。
▪️▪️▪️
アルバートは困惑していた。
なんとか主人であるエリザベスを説得し、せめて謝罪だけでもとマナに会いに行こうと屋敷を出て、すぐに不審な車を発見。
様子から見て明らかに無人であるのと、回りにも不審人物がいないことを確認し、リサに連絡するまでは冷静な対処だった。
助手席に見覚えのあるスマホが置いてある。まさかと自身のケータイから発信すると車内のスマホが鳴り始め、画面に「アルバートさん」の文字が。
「なんで、マナのが? ……っ!」
車内を見回し、後部座席に女性ものの洋服があることに心臓がどくりと嫌な音を立てた。
躊躇わず運転席の窓ガラスをぶち破って乗り込む。車内には丁寧に畳まれた洋服とメイク道具一式だけしかないことを確認して、ゆっくりと車の後ろへ向かったアルバートは、一瞬躊躇した後トランクを開けた。
中に何もないことに、知らず詰めていた息を吐く。
再度リサへ連絡をと、手に取ったケータイに着信が入った。
ピッ
「アルバート!聞いて、今──……」
「……そうか、分かった。更にあいつも一緒の可能性が高い。ああ……ああ……、すぐに準備を。俺も一緒に向かう」
後悔やら自責の念やらをぐっと押し込めたアルバートは、冷静になるよう自分を叱咤した。
後悔なら後でいくらでも出来る。こうならない為に遠ざけたつもりだったとか。結局危険に晒してしまったとか。
(だが、まだ間に合う。まだ手の届く所にいる)
ならば、今出来る最善を。
アルバートは守るべき笑顔を思い浮かべ、駆けていった。
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる