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悪役令嬢、否定する
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「ああ、あの2人は仲良いよー。幼稚園から一緒だし」
転校から数日経った、とある日の下校中。「クラスの雰囲気どう?」という質問から、気がついたら秋月くんと黒田くんの話になっていた。
「あっそうなんだ、幼馴染ってやつ?」
「そうそう。ていうか、タケル、あっ黒田ね、あいつ、わたしのイトコ」
「えっそうなの!?」
ちょっとびっくりして、ひよりちゃんの顔をまじまじと眺めてしまった。似てない。まぁイトコだもんね、似てなくて当たり前なんだけど。
「あいつも固いけどいいやつだから。よろしくね」
「ううん! こちらこそ、ほんとよろしくだよ……面倒見いいよね」
「うーん、イトコとしては何かと兄貴ヅラされるのはちょっとムカつくけどね。同じ年だし」
とひよりちゃんが笑ったところで、ちょうど分かれ道の十字路に差し掛かった。
ひよりちゃんは直進で、私は左折。
「あ、じゃあまた明日ね」
私はひらりと手を振る。
「うん、また明日ね。あ、明日も一緒に学校行かない?」
「うん! ありがとう」
ここ数日、登下校をひよりちゃんと一緒にしている。
アラサー的精神年齢からすると、年の離れた妹のような感覚なのだが、波長が合うのか一緒にいてすごく楽しい。
「こっちこそありがとうだよー。こっち方面、あんま仲良い女子いなくて。華ちゃん来てくれて嬉しい」
にっこり、と笑うひよりちゃん。
(やーーーん、ひよりちゃん超可愛いんですけど)
私が1人でニヤニヤと悶絶していると、後ろから私を呼ぶ声がした。
「華」
振り向くと、ジャージ姿の樹くんだった。
「あれ、樹くん? なんで鎌倉に?」
「いや、今からこの近くのグラウンドで練習試合があってな。ついでだから寄ってみた」
「あ、そうなの? 上がっていく?」
「いや、いい。華の顔を見たらそれで満足だ」
「そうなの?」
相変わらずちょっと変わった子だ。
樹くんはふと、ひよりちゃんを見て「友達ができたんだな」と少し嬉しそうに言った。
(と、友達! なんか改めて言われると、アラサーには面映ゆいわよね、なんか)
少し照れつつ「うん」と返すと、樹くんは笑って私の頭を撫でた。
「ではな。また連絡する」
「うん。またね、練習試合頑張って」
「ああ」
樹くんはそう言って、ひよりちゃんに軽く頭を下げてさっさと行ってしまった。せっかく寄ったならお菓子くらい食べていけばいいのに。
「……ねっ、ねぇっ、華ちゃん」
「なぁに?」
なぜかちょっと興奮気味のひよりちゃんにやや気圧されつつ首をかしげる。
「あの人、華ちゃんのなに!? 彼氏!?」
食い気味に言われて、なるほどなと思う。
(この年頃の女の子なんか、コイバナで生きてるようなもんだもんね~)
しかし、と思う。
(友達、だけど。彼氏? ではないよね、勝手に決められた許婚、だし。うーん)
ちょっと迷って「おばあちゃんの友達の孫で、結構仲良い友達」という事実のみを伝えた。まぁ厳密には敦子さんは祖母ではないのだけれど、まぁいいか。
「えー。そうなの? でもあの人は華ちゃんのこと、絶対好きだよ」
「えっそれはない。それはないよ」
手を顔の前でブンブンと振って否定する。
確かに、ゲームに比べたら随分と距離は近いし、嫌われてもない……というか、むしろ好意的なんだろうけど。
何せ、頰にちゅーしたことだってあるくらいだ。
「むー。華ちゃんてどうやら鈍感さんみたいね」
「そんなこともないと思うけど……」
「てか、大人なかんじだー。中学生?」
「ううん同じ年」
「ほんと!? 中学生みたいだったなぁ」
「あー、大きいもんね背」
「それもあるけどー、あー、また今度詳しく聞かせてね! わたし今日は塾あるからさー」
残念そうに手を振るひよりちゃんに、私も苦笑しながら手を振り返す。
「約束だからねー」
「はーい」
「明日は50分にここねー」
「分かった!」
明日の約束をして、るんるんと角を曲がる。
小学生って、結構楽しいかも。
転校から数日経った、とある日の下校中。「クラスの雰囲気どう?」という質問から、気がついたら秋月くんと黒田くんの話になっていた。
「あっそうなんだ、幼馴染ってやつ?」
「そうそう。ていうか、タケル、あっ黒田ね、あいつ、わたしのイトコ」
「えっそうなの!?」
ちょっとびっくりして、ひよりちゃんの顔をまじまじと眺めてしまった。似てない。まぁイトコだもんね、似てなくて当たり前なんだけど。
「あいつも固いけどいいやつだから。よろしくね」
「ううん! こちらこそ、ほんとよろしくだよ……面倒見いいよね」
「うーん、イトコとしては何かと兄貴ヅラされるのはちょっとムカつくけどね。同じ年だし」
とひよりちゃんが笑ったところで、ちょうど分かれ道の十字路に差し掛かった。
ひよりちゃんは直進で、私は左折。
「あ、じゃあまた明日ね」
私はひらりと手を振る。
「うん、また明日ね。あ、明日も一緒に学校行かない?」
「うん! ありがとう」
ここ数日、登下校をひよりちゃんと一緒にしている。
アラサー的精神年齢からすると、年の離れた妹のような感覚なのだが、波長が合うのか一緒にいてすごく楽しい。
「こっちこそありがとうだよー。こっち方面、あんま仲良い女子いなくて。華ちゃん来てくれて嬉しい」
にっこり、と笑うひよりちゃん。
(やーーーん、ひよりちゃん超可愛いんですけど)
私が1人でニヤニヤと悶絶していると、後ろから私を呼ぶ声がした。
「華」
振り向くと、ジャージ姿の樹くんだった。
「あれ、樹くん? なんで鎌倉に?」
「いや、今からこの近くのグラウンドで練習試合があってな。ついでだから寄ってみた」
「あ、そうなの? 上がっていく?」
「いや、いい。華の顔を見たらそれで満足だ」
「そうなの?」
相変わらずちょっと変わった子だ。
樹くんはふと、ひよりちゃんを見て「友達ができたんだな」と少し嬉しそうに言った。
(と、友達! なんか改めて言われると、アラサーには面映ゆいわよね、なんか)
少し照れつつ「うん」と返すと、樹くんは笑って私の頭を撫でた。
「ではな。また連絡する」
「うん。またね、練習試合頑張って」
「ああ」
樹くんはそう言って、ひよりちゃんに軽く頭を下げてさっさと行ってしまった。せっかく寄ったならお菓子くらい食べていけばいいのに。
「……ねっ、ねぇっ、華ちゃん」
「なぁに?」
なぜかちょっと興奮気味のひよりちゃんにやや気圧されつつ首をかしげる。
「あの人、華ちゃんのなに!? 彼氏!?」
食い気味に言われて、なるほどなと思う。
(この年頃の女の子なんか、コイバナで生きてるようなもんだもんね~)
しかし、と思う。
(友達、だけど。彼氏? ではないよね、勝手に決められた許婚、だし。うーん)
ちょっと迷って「おばあちゃんの友達の孫で、結構仲良い友達」という事実のみを伝えた。まぁ厳密には敦子さんは祖母ではないのだけれど、まぁいいか。
「えー。そうなの? でもあの人は華ちゃんのこと、絶対好きだよ」
「えっそれはない。それはないよ」
手を顔の前でブンブンと振って否定する。
確かに、ゲームに比べたら随分と距離は近いし、嫌われてもない……というか、むしろ好意的なんだろうけど。
何せ、頰にちゅーしたことだってあるくらいだ。
「むー。華ちゃんてどうやら鈍感さんみたいね」
「そんなこともないと思うけど……」
「てか、大人なかんじだー。中学生?」
「ううん同じ年」
「ほんと!? 中学生みたいだったなぁ」
「あー、大きいもんね背」
「それもあるけどー、あー、また今度詳しく聞かせてね! わたし今日は塾あるからさー」
残念そうに手を振るひよりちゃんに、私も苦笑しながら手を振り返す。
「約束だからねー」
「はーい」
「明日は50分にここねー」
「分かった!」
明日の約束をして、るんるんと角を曲がる。
小学生って、結構楽しいかも。
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