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【高校編】分岐・鍋島真
暗号なのかなんなのか(side???)
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「ねー、先輩、鍋島やっぱ行かない言い出してますよ」
試合終わってすぐ、オレがそう言うと、秋田先輩は「まじで?」と半目になった。
「あいつ、絶対自分の誕生日パーティーだって勘付いてるよな?」
「だから来ないんじゃないですかね」
オレは肩をすくめる。鍋島って、なんか時々、そういう奴。いや仲良くはしてるんだけど、変な一線を引いてくるっていうかさ。
(女にも興味なさそうだし)
何せあの顔面だ。キャアキャア言われてる。他大学からも応援がくるくらいに。クソ羨ましい。
特にあれだ、面を外したときの悲鳴に似た歓声がすごい。面を外したときの「ふう、」って顔、それがまたセクシーだというのはファンの女の子から聞いた意見。
「んー……じゃあ、手立てを考えなきゃな」
「拉致ります?」
「あいつ静かにキレてそうでヤダ。やめとこう」
「あ、いいこと考えた」
横にいた、岩手先輩はぽん、と手を叩きながら言った。
「あたし達に任せといて」
上機嫌に言う岩手先輩だけど、オレはちょっと嫌な予感がした。あのひと、ちょっとなんていうか、エキセントリックなところがあるから……。
その予感は的中してると思う。
ロッカールームでシャワーを浴びて、着替え終わった時、スマホに岩手先輩からメッセージが届いた。
『この動画と写真、真くんに見せてね。華ちゃんをさがせ! 無事助け出してみせてね』とハートマーク付きで送られてきた動画と画像は、なんていうか、うん、拉致監禁してる。女の子を。誰!? 華ちゃんて誰!?
涙目の画像。かなり美人なひとだと思う。何才くらいだろう? 少し年下だろうか。くっきりした目鼻立ち、ちょっと猫目なのがなんていうか、コケティッシュな感じで可愛い。
動画を見てみる。
「……」
思わず無言になった。え、これ大丈夫なの?
(ていうか、)
オレは唾を飲んだ。そんな趣味はないはずなのに、なんていうか、グッときてしまった。うわー。
ソファに座って目隠しされてる美少女? 美女? うわー。なんか、うわー。
割とシンプルな紺のワンピースからすらりと伸びた手足も同じように縛られてて、少し白い太ももがちらりと見えてる。
(……これ、鍋島に見せて大丈夫なのかね)
"え、え、え、なんですかなんですか、やだやだ、怖いです、助けて、真さん"
身をよじらせながら言う彼女。え、ほんとに犯罪に手を染めてないですよね……ないですよね!? 岩手先輩!?
ひとり焦っていると、ガッと手首を掴まれた。
「なにそれ」
目が座っている。鍋島だ。まだ着替えてなかったのか、袴のまま。
「いやー……」
「貸して」
有無を言わさず、スマホを奪い取られた。食い入るように、鍋島は見ている。
「……いい度胸してるね」
ふ、と笑う。めちゃくちゃ冷たい顔で。
オレは息を飲んだ。こんな鍋島見るの初めてだし、こんな声聞くの初めてだし、色々初めて尽くしで……いやいやいや!
「落ち着け鍋島、これ、岩手先輩のイタズラだから」
「だとしても僕のに手を出したことに違いはないでしょう?」
地を這うような声、ってこんな声なんだろうなぁ……なんて思ってしまう。
「いやだから、」
その時、ぴろん、とメッセージが追加で送られてきた。
『ヒント:11,637.52(13ー6ー9ー3)解錠はキング牧師(π)、部屋はFair is foul,and foul is fair』
「なんだこれ」
「舐められてるね」
鍋島はふ、とオレにスマホを投げてよこす。
「先に行ってる」
「え、なに? 場所知ってんの?」
「書いてあった」
鍋島は、カバンをひっつかむように持ってロッカールームから出て行く。
「えー……」
オレはそのヒントとやらを眺める。解錠はなんとなくわかる。
数字の羅列は暗号なんだか、知識問題なんだか。部屋番号は候補がありすぎて。
「つか、あいつ、バイクに袴で乗んの?」
超目立つと思うんだけど、とオレはひとりごちた。鍋島の、黒と水色の中型、つっても結構でかい、イタリアだか何だかからの輸入バイク。
「……てか、オレも暗号解かなきゃ参加できないパターンなのこれ?」
オレは数字の羅列を眺めるーー結局、ずるいけど開催場所の予測をたてて、逆算して正解にたどり着いた。てか、あいつあんなん暗記してるの? なんのために?
「変なやつー……」
兎にも角にも、オレがたどり着いた頃には誕生日パーティーはすでに始まっていたのだった。
試合終わってすぐ、オレがそう言うと、秋田先輩は「まじで?」と半目になった。
「あいつ、絶対自分の誕生日パーティーだって勘付いてるよな?」
「だから来ないんじゃないですかね」
オレは肩をすくめる。鍋島って、なんか時々、そういう奴。いや仲良くはしてるんだけど、変な一線を引いてくるっていうかさ。
(女にも興味なさそうだし)
何せあの顔面だ。キャアキャア言われてる。他大学からも応援がくるくらいに。クソ羨ましい。
特にあれだ、面を外したときの悲鳴に似た歓声がすごい。面を外したときの「ふう、」って顔、それがまたセクシーだというのはファンの女の子から聞いた意見。
「んー……じゃあ、手立てを考えなきゃな」
「拉致ります?」
「あいつ静かにキレてそうでヤダ。やめとこう」
「あ、いいこと考えた」
横にいた、岩手先輩はぽん、と手を叩きながら言った。
「あたし達に任せといて」
上機嫌に言う岩手先輩だけど、オレはちょっと嫌な予感がした。あのひと、ちょっとなんていうか、エキセントリックなところがあるから……。
その予感は的中してると思う。
ロッカールームでシャワーを浴びて、着替え終わった時、スマホに岩手先輩からメッセージが届いた。
『この動画と写真、真くんに見せてね。華ちゃんをさがせ! 無事助け出してみせてね』とハートマーク付きで送られてきた動画と画像は、なんていうか、うん、拉致監禁してる。女の子を。誰!? 華ちゃんて誰!?
涙目の画像。かなり美人なひとだと思う。何才くらいだろう? 少し年下だろうか。くっきりした目鼻立ち、ちょっと猫目なのがなんていうか、コケティッシュな感じで可愛い。
動画を見てみる。
「……」
思わず無言になった。え、これ大丈夫なの?
(ていうか、)
オレは唾を飲んだ。そんな趣味はないはずなのに、なんていうか、グッときてしまった。うわー。
ソファに座って目隠しされてる美少女? 美女? うわー。なんか、うわー。
割とシンプルな紺のワンピースからすらりと伸びた手足も同じように縛られてて、少し白い太ももがちらりと見えてる。
(……これ、鍋島に見せて大丈夫なのかね)
"え、え、え、なんですかなんですか、やだやだ、怖いです、助けて、真さん"
身をよじらせながら言う彼女。え、ほんとに犯罪に手を染めてないですよね……ないですよね!? 岩手先輩!?
ひとり焦っていると、ガッと手首を掴まれた。
「なにそれ」
目が座っている。鍋島だ。まだ着替えてなかったのか、袴のまま。
「いやー……」
「貸して」
有無を言わさず、スマホを奪い取られた。食い入るように、鍋島は見ている。
「……いい度胸してるね」
ふ、と笑う。めちゃくちゃ冷たい顔で。
オレは息を飲んだ。こんな鍋島見るの初めてだし、こんな声聞くの初めてだし、色々初めて尽くしで……いやいやいや!
「落ち着け鍋島、これ、岩手先輩のイタズラだから」
「だとしても僕のに手を出したことに違いはないでしょう?」
地を這うような声、ってこんな声なんだろうなぁ……なんて思ってしまう。
「いやだから、」
その時、ぴろん、とメッセージが追加で送られてきた。
『ヒント:11,637.52(13ー6ー9ー3)解錠はキング牧師(π)、部屋はFair is foul,and foul is fair』
「なんだこれ」
「舐められてるね」
鍋島はふ、とオレにスマホを投げてよこす。
「先に行ってる」
「え、なに? 場所知ってんの?」
「書いてあった」
鍋島は、カバンをひっつかむように持ってロッカールームから出て行く。
「えー……」
オレはそのヒントとやらを眺める。解錠はなんとなくわかる。
数字の羅列は暗号なんだか、知識問題なんだか。部屋番号は候補がありすぎて。
「つか、あいつ、バイクに袴で乗んの?」
超目立つと思うんだけど、とオレはひとりごちた。鍋島の、黒と水色の中型、つっても結構でかい、イタリアだか何だかからの輸入バイク。
「……てか、オレも暗号解かなきゃ参加できないパターンなのこれ?」
オレは数字の羅列を眺めるーー結局、ずるいけど開催場所の予測をたてて、逆算して正解にたどり着いた。てか、あいつあんなん暗記してるの? なんのために?
「変なやつー……」
兎にも角にも、オレがたどり着いた頃には誕生日パーティーはすでに始まっていたのだった。
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