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【高校編】分岐・山ノ内瑛
八つ当たりすんなよな(side???)
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山ノ内が設楽先輩の腕をとって連れて行ったから、オレは「お、頑張れ!」なんて思ってちょっとニヤニヤした。
(だって山ノ内、あいつ、設楽先輩のこと好きなんだもんな~)
超意外だけど、夏に教えてもらった山ノ内の「超ド級」の秘密。山ノ内は設楽先輩に恋してる。
ニヤニヤを隠してへんな顔になってるのを誤魔化すようにスマホなんていじぅてると、さっき設楽先輩とすれ違ったやつにこっそり囁かれた。
「なあ、設楽先輩って、もしかして普段は結構フツーっていうか、柔らかい感じの人だったりすんのかな」
「は?」
思わずそいつを見ると、そいつは慌てたように言った。
「や、先輩が山ノ内に色々言ったりしてんのは知ってんだけどさ!? 鉄の女だとか、氷の女王だとか、なんかそういうアダ名が似合わないような、気がして」
「なんで?」
「いや、さっきなんか、素っぽい表情が、なんか」
柔らかかったから、とかそいつが言うから、オレは後で山ノ内に教えてやろうと思う。オイオイ山ノ内、さっさとモノにしないとライバルできるかもだぞ?
「鹿王院さんの前だと、いつもあんな感じなのかな」
そいつの声で、ふと気がつく。そっか、設楽先輩、許婚いるんだ。それも鹿王院樹。山ノ内でも、敵うかどうか。
「いいなぁ、普段ツンで2人だとデレてくれるの」
「そーいう子が好きなの?」
「そういう訳じゃないけど、なんかオレだけ知ってる顔~! って感じしない?」
言われて、ちょっと考える。例えば、あくまで例えばだけど、あの設楽先輩が2人きりだと甘えたり優しく触れたりしてくれたら……うん、あ、好きってなるかも。そもそも超絶美人だし。
「もしかして、」
なんて想像する。もしかして、設楽先輩、山ノ内の前ではデレだったりして?
「……ないか」
「さっきからブツブツどうしたんだよ」
「なんでも」
オレはさっさと歩き出す。どっちにしろ、山ノ内は色々大変そうだ。
しばらくしての風紀週間、山ノ内はやっぱり設楽先輩に捕まっていた。
「……」
「何も言わへんの?」
「もう言葉が……尽きました……」
はあ、と眉間を揉む設楽先輩。オレは苦笑いしながら、山ノ内の背中を軽くぽん、と叩く。
「はよ」
「おう」
にかり、と笑う山ノ内は相変わらずキレーな顔で朝から羨ましい。
「染め直したら?」
「は!? なんでお前までそんなんっ」
裏切るんか、なんて言う山ノ内の耳元で、こっそり言う。
「言うこと聞いた方がイメージいいかもだよ?」
「……それは分かってんねんけどさぁ」
ヒソヒソ話すオレたちを、設楽先輩は不思議そうに見ていた。
「……」
思わず、その顔を見てしまう。いつもみたいな「キリッ」とした顔じゃなくて、「ほへー」とか「へにょん」みたいな擬音が似合う顔で、なんなら少し口角も上がっていた。笑うのを我慢してるような。
(表情筋あるんだー)
あるに決まってるだろ、とは思うけれど、そんな風に考えてしまう。この人、笑ったらどんな感じなんだろう?
「……なに見てんねん」
山ノ内の少し、不機嫌そうな声。オレははっとして手を振った。
「いや、違う。そのー、設楽先輩、笑ったらどんな顔なのかなって」
そう言った瞬間、設楽先輩は吹き出した。綺麗なアーモンド型の、猫みたいな大きな目を細めて、きれいに笑った。
「あっは、私、笑わないとでも思われてるの?」
あんまり楽しげに笑うので、しかもその表情が「きれい」というより「可愛い」類に分類される系の顔で、オレは思わずぽかん、と設楽先輩を見た。
「はあ、……あの、思ってました」
「やだなぁもう。ほら、山ノ内くんのせいだからね?」
怖い人だと思われちゃってるじゃん、なんて山ノ内の腕を軽く叩いた設楽先輩に、山ノ内は「むっ」て顔をして眉間のシワを深くした。
「や、……俺のせいちゃいますし? 行こか」
「……いい加減、ちゃんと検討してください」
設楽先輩はまた「きりっ」とした顔で言ったし、山ノ内は今度は視線すら向けずにさくさく歩いた。
「?」
好きな人相手に、あんな感じで大丈夫なのか……?
と、思ってたら靴箱の前で山ノ内は「やってもた」と頭を抱えて座り込んだ。
「俺、完璧にイヤな奴やったな?」
「は?」
「せっかく腕触ってくれたのに、むって顔してもたやん?」
「まぁそれは印象悪いと思うよ」
正直に答えると、山ノ内は「お前のせーやでっ!?」と八つ当たりをかましてきた。
「は!? なんでオレ」
「や、なんか、……キレーとか可愛いとか思ってたやろ、あの人のこと」
「あ、それは、うん」
「それでイライラしてしもーたんやっ」
「えぇー!?」
オレは呆れてへんな声が出てしまう。知らんがな! ってオレは関西人じゃないけれど。
「あー、あかん、弁明したい。つか、しよ」
「なんか知らないけど、頑張って」
「おう、頑張るわ……譲らへんで?」
「なにが」
「あの人に惚れたって、」
山ノ内は立ち上がり、オレを軽く睨んだ。
「あの人のこと、俺は絶対に譲らへんで」
「……はいはい」
そんなつもりない、とか言っても聞きそうになかったので、テキトーに返事をする。
「ハイは一回!」
「ハァイ」
「伸ばしたらあかん!」
山ノ内のよく分からない主張にまたもや「はいはい」と頷きつつ、オレたちは教室へ向かった。なんか知らないけど、山ノ内頑張れよ。
(だって山ノ内、あいつ、設楽先輩のこと好きなんだもんな~)
超意外だけど、夏に教えてもらった山ノ内の「超ド級」の秘密。山ノ内は設楽先輩に恋してる。
ニヤニヤを隠してへんな顔になってるのを誤魔化すようにスマホなんていじぅてると、さっき設楽先輩とすれ違ったやつにこっそり囁かれた。
「なあ、設楽先輩って、もしかして普段は結構フツーっていうか、柔らかい感じの人だったりすんのかな」
「は?」
思わずそいつを見ると、そいつは慌てたように言った。
「や、先輩が山ノ内に色々言ったりしてんのは知ってんだけどさ!? 鉄の女だとか、氷の女王だとか、なんかそういうアダ名が似合わないような、気がして」
「なんで?」
「いや、さっきなんか、素っぽい表情が、なんか」
柔らかかったから、とかそいつが言うから、オレは後で山ノ内に教えてやろうと思う。オイオイ山ノ内、さっさとモノにしないとライバルできるかもだぞ?
「鹿王院さんの前だと、いつもあんな感じなのかな」
そいつの声で、ふと気がつく。そっか、設楽先輩、許婚いるんだ。それも鹿王院樹。山ノ内でも、敵うかどうか。
「いいなぁ、普段ツンで2人だとデレてくれるの」
「そーいう子が好きなの?」
「そういう訳じゃないけど、なんかオレだけ知ってる顔~! って感じしない?」
言われて、ちょっと考える。例えば、あくまで例えばだけど、あの設楽先輩が2人きりだと甘えたり優しく触れたりしてくれたら……うん、あ、好きってなるかも。そもそも超絶美人だし。
「もしかして、」
なんて想像する。もしかして、設楽先輩、山ノ内の前ではデレだったりして?
「……ないか」
「さっきからブツブツどうしたんだよ」
「なんでも」
オレはさっさと歩き出す。どっちにしろ、山ノ内は色々大変そうだ。
しばらくしての風紀週間、山ノ内はやっぱり設楽先輩に捕まっていた。
「……」
「何も言わへんの?」
「もう言葉が……尽きました……」
はあ、と眉間を揉む設楽先輩。オレは苦笑いしながら、山ノ内の背中を軽くぽん、と叩く。
「はよ」
「おう」
にかり、と笑う山ノ内は相変わらずキレーな顔で朝から羨ましい。
「染め直したら?」
「は!? なんでお前までそんなんっ」
裏切るんか、なんて言う山ノ内の耳元で、こっそり言う。
「言うこと聞いた方がイメージいいかもだよ?」
「……それは分かってんねんけどさぁ」
ヒソヒソ話すオレたちを、設楽先輩は不思議そうに見ていた。
「……」
思わず、その顔を見てしまう。いつもみたいな「キリッ」とした顔じゃなくて、「ほへー」とか「へにょん」みたいな擬音が似合う顔で、なんなら少し口角も上がっていた。笑うのを我慢してるような。
(表情筋あるんだー)
あるに決まってるだろ、とは思うけれど、そんな風に考えてしまう。この人、笑ったらどんな感じなんだろう?
「……なに見てんねん」
山ノ内の少し、不機嫌そうな声。オレははっとして手を振った。
「いや、違う。そのー、設楽先輩、笑ったらどんな顔なのかなって」
そう言った瞬間、設楽先輩は吹き出した。綺麗なアーモンド型の、猫みたいな大きな目を細めて、きれいに笑った。
「あっは、私、笑わないとでも思われてるの?」
あんまり楽しげに笑うので、しかもその表情が「きれい」というより「可愛い」類に分類される系の顔で、オレは思わずぽかん、と設楽先輩を見た。
「はあ、……あの、思ってました」
「やだなぁもう。ほら、山ノ内くんのせいだからね?」
怖い人だと思われちゃってるじゃん、なんて山ノ内の腕を軽く叩いた設楽先輩に、山ノ内は「むっ」て顔をして眉間のシワを深くした。
「や、……俺のせいちゃいますし? 行こか」
「……いい加減、ちゃんと検討してください」
設楽先輩はまた「きりっ」とした顔で言ったし、山ノ内は今度は視線すら向けずにさくさく歩いた。
「?」
好きな人相手に、あんな感じで大丈夫なのか……?
と、思ってたら靴箱の前で山ノ内は「やってもた」と頭を抱えて座り込んだ。
「俺、完璧にイヤな奴やったな?」
「は?」
「せっかく腕触ってくれたのに、むって顔してもたやん?」
「まぁそれは印象悪いと思うよ」
正直に答えると、山ノ内は「お前のせーやでっ!?」と八つ当たりをかましてきた。
「は!? なんでオレ」
「や、なんか、……キレーとか可愛いとか思ってたやろ、あの人のこと」
「あ、それは、うん」
「それでイライラしてしもーたんやっ」
「えぇー!?」
オレは呆れてへんな声が出てしまう。知らんがな! ってオレは関西人じゃないけれど。
「あー、あかん、弁明したい。つか、しよ」
「なんか知らないけど、頑張って」
「おう、頑張るわ……譲らへんで?」
「なにが」
「あの人に惚れたって、」
山ノ内は立ち上がり、オレを軽く睨んだ。
「あの人のこと、俺は絶対に譲らへんで」
「……はいはい」
そんなつもりない、とか言っても聞きそうになかったので、テキトーに返事をする。
「ハイは一回!」
「ハァイ」
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山ノ内のよく分からない主張にまたもや「はいはい」と頷きつつ、オレたちは教室へ向かった。なんか知らないけど、山ノ内頑張れよ。
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