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【高校編】分岐・山ノ内瑛
指輪
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「すっごい安モンでな、申し訳ないねんけど」
アキラくんがそう言って渡してきてくれたのは、10代の子とかが割と気軽に買える(っていっても、これくらいの子にしたら高額だ)のブランドの紙袋。
首を傾げて開けてみる。私は変な声をあげそうになった。
だって、指輪だよ!? お揃いの! ペアリング! 前世では一回もしたことなかった……!
「うわわ、う、嬉しい」
ちょー嬉しい。どうしたらいいか分からないレベルです。
ひとりでワタワタしてる私を見て、アキラくんは嬉しそうに笑った。
「そんな喜んでくれるん?」
「だ、だってお揃いだよ、指輪だよ」
嬉しくないわけがないじゃん!
泣きそうだし(っていうか半分泣いてる)でも嬉しくてニコニコしてると、アキラくんは私の手をそっと取った。
「もう、ほんま華は可愛いな」
左手の薬指に、すうっと入るその銀の指輪。びっくりするくらいぴったりで、私は首を傾げた。
「……サイズ、知ってた?」
「カンやったけど、いけるもんやな」
俺の指と比べてこんくらいです、ってお店のヒトに聞いたんや、ってちょっと嬉しそうなアキラくん。
「つけといてなー」
「学校ではネックレスにしようかな」
チェーンにつけてシャツの下につけておいたら良い気がする。装飾品は禁止なのです、あの学校は。ただしおメダイとかは良い。ミッション系ですからね。
「俺も」
アキラくんは笑う。それから自分の指に指輪をつけようとしてたから、私は慌てて止めた。
「ま、待って待ってっ」
「ん?」
「わ、私がつけちゃ、ダメかな」
アキラくんは一瞬ぽかんとして、それからふわりと笑った。とても幸せそうにーー私はきゅう、と胸が甘く痛むのを感じた。なんでこの人、いちいち私の好きな表情するんだろ。
「ん、つけて」
渡される指輪。私はほんの少し緊張しながら、指輪をつける。当然ながらぴったりサイズ。
「華」
呼ばれて顔を上げる。重なる唇。キスは深くなって、私はうまく息ができない。
やがて離れていくアキラくんを、ぽうっと見つめる。
「……えっろ」
「?」
「いま、自分どんなカオしとるか分かっとる?」
アキラくんは私の頬を撫でる。指で、つうっと。
「わ、かんない」
「えっろい顔してるわ」
そう言ってアキラくんは私の首筋に舌を這わせた。
「ん、」
「なんで俺は子供なんやー」
ふう、とアキラくんはため息をつくけれど、首筋にかかるその息ですら、ひどく熱くて、私は体を揺らす。
……どうなっちゃってるんだろう、私。
「頭冷やそ」
アキラくんは名残惜しそうに私の耳を噛んだあと、立ち上がって掃き出し窓を開けた。からりからり。今度はベランダに、ふつうに立つ。
私も少しよろよろと(情けないな!?)立ち上がって、アキラくんに続いた。
ベランダに並んで、手を繋ぐ。
「寒っ」
「さっきはよおあんなできたで」
ケタケタとアキラくんは笑った。ほんとうに!
私は指輪が嬉しくて、いろんな角度から見てしまう。ストレートタイプの、銀の指輪。嬉しくて仕方ない。
にまにましてる私を、アキラくんはいったん手を離して、後ろから抱きしめた。それから私の左手を取る。
「華はちょーお嬢様やし、こんな安モン似合わへんかったらどないしよ思うてたけど、うん、似合うな」
「安モンって」
私は首を振る。
「そんなことないーーっていうか、どうやって買ったの?」
中学生にはそれなりのお値段だと思う。
「あー、お年玉の前借りや」
アキラくんは、私の手の隣に自分の手を並べてみせる。
「ふっふ、ラブラブーって感じやな?」
からかうように言われて、私は照れてしまう……っていうか!
「ご、ごめん、私ね、クリスマスって分かってたのに」
まさかプレゼントあるなんて、あんまり考えてなかったのだ。
「そんなんええって! 俺があげたかっただけやもーん」
アキラくんは私の指輪に触れた。
「つうか、ちゃうな。俺のやでって、少しでも示せるもんが欲しかっただけかも分からん」
「アキラくん」
「華の、」
アキラくんは私の肩口に顔を埋めた。あったかい。
「……イイナズケの件は、ちらっと聞いたんやけど」
私は頷く。樹くんとの婚約は、この間正式に破棄された。
実質、常盤の経営から大伯父様がいなくなった今、私と樹くんの意思を無視してまで「そうする」必要がないから。
「でもね、この間も言ったけれど。対外的に、いま破棄したのがバレるのは不味いらしいの」
いまこの破棄によって、敦子さんと鹿王院側の不仲が囁かれたりするのは、今足場を固めてる敦子さんにとってあまり喜ばしくないことだ。
「だから、多分高校卒業とか、それくらいまでは」
申し訳なくて頷く。
「そーかー」
あっけらかん、とアキラくんは言った。
「遊園地の制服デートとか、してみたかったけど」
「ご、ごめん」
「正式に発表? みたいになったら、そっこー行こか、制服で」
卒業してても、とアキラくんは明るく笑う。
「華やったら何歳なってても似合いそうやし、制服」
「そ、そうかなぁ」
さすがにそれはないと思うけれど、卒業してすぐ、とかなら大丈夫かな。
「絶対やで」
アキラくんは私の首に唇を寄せた。軽く軽く、触れるだけのキス。
(あ、足りない)
そう思ってしまうんだから、私はやっぱりどうかしちゃってるのかもしれないなぁ、なんて思う。
アキラくんがそう言って渡してきてくれたのは、10代の子とかが割と気軽に買える(っていっても、これくらいの子にしたら高額だ)のブランドの紙袋。
首を傾げて開けてみる。私は変な声をあげそうになった。
だって、指輪だよ!? お揃いの! ペアリング! 前世では一回もしたことなかった……!
「うわわ、う、嬉しい」
ちょー嬉しい。どうしたらいいか分からないレベルです。
ひとりでワタワタしてる私を見て、アキラくんは嬉しそうに笑った。
「そんな喜んでくれるん?」
「だ、だってお揃いだよ、指輪だよ」
嬉しくないわけがないじゃん!
泣きそうだし(っていうか半分泣いてる)でも嬉しくてニコニコしてると、アキラくんは私の手をそっと取った。
「もう、ほんま華は可愛いな」
左手の薬指に、すうっと入るその銀の指輪。びっくりするくらいぴったりで、私は首を傾げた。
「……サイズ、知ってた?」
「カンやったけど、いけるもんやな」
俺の指と比べてこんくらいです、ってお店のヒトに聞いたんや、ってちょっと嬉しそうなアキラくん。
「つけといてなー」
「学校ではネックレスにしようかな」
チェーンにつけてシャツの下につけておいたら良い気がする。装飾品は禁止なのです、あの学校は。ただしおメダイとかは良い。ミッション系ですからね。
「俺も」
アキラくんは笑う。それから自分の指に指輪をつけようとしてたから、私は慌てて止めた。
「ま、待って待ってっ」
「ん?」
「わ、私がつけちゃ、ダメかな」
アキラくんは一瞬ぽかんとして、それからふわりと笑った。とても幸せそうにーー私はきゅう、と胸が甘く痛むのを感じた。なんでこの人、いちいち私の好きな表情するんだろ。
「ん、つけて」
渡される指輪。私はほんの少し緊張しながら、指輪をつける。当然ながらぴったりサイズ。
「華」
呼ばれて顔を上げる。重なる唇。キスは深くなって、私はうまく息ができない。
やがて離れていくアキラくんを、ぽうっと見つめる。
「……えっろ」
「?」
「いま、自分どんなカオしとるか分かっとる?」
アキラくんは私の頬を撫でる。指で、つうっと。
「わ、かんない」
「えっろい顔してるわ」
そう言ってアキラくんは私の首筋に舌を這わせた。
「ん、」
「なんで俺は子供なんやー」
ふう、とアキラくんはため息をつくけれど、首筋にかかるその息ですら、ひどく熱くて、私は体を揺らす。
……どうなっちゃってるんだろう、私。
「頭冷やそ」
アキラくんは名残惜しそうに私の耳を噛んだあと、立ち上がって掃き出し窓を開けた。からりからり。今度はベランダに、ふつうに立つ。
私も少しよろよろと(情けないな!?)立ち上がって、アキラくんに続いた。
ベランダに並んで、手を繋ぐ。
「寒っ」
「さっきはよおあんなできたで」
ケタケタとアキラくんは笑った。ほんとうに!
私は指輪が嬉しくて、いろんな角度から見てしまう。ストレートタイプの、銀の指輪。嬉しくて仕方ない。
にまにましてる私を、アキラくんはいったん手を離して、後ろから抱きしめた。それから私の左手を取る。
「華はちょーお嬢様やし、こんな安モン似合わへんかったらどないしよ思うてたけど、うん、似合うな」
「安モンって」
私は首を振る。
「そんなことないーーっていうか、どうやって買ったの?」
中学生にはそれなりのお値段だと思う。
「あー、お年玉の前借りや」
アキラくんは、私の手の隣に自分の手を並べてみせる。
「ふっふ、ラブラブーって感じやな?」
からかうように言われて、私は照れてしまう……っていうか!
「ご、ごめん、私ね、クリスマスって分かってたのに」
まさかプレゼントあるなんて、あんまり考えてなかったのだ。
「そんなんええって! 俺があげたかっただけやもーん」
アキラくんは私の指輪に触れた。
「つうか、ちゃうな。俺のやでって、少しでも示せるもんが欲しかっただけかも分からん」
「アキラくん」
「華の、」
アキラくんは私の肩口に顔を埋めた。あったかい。
「……イイナズケの件は、ちらっと聞いたんやけど」
私は頷く。樹くんとの婚約は、この間正式に破棄された。
実質、常盤の経営から大伯父様がいなくなった今、私と樹くんの意思を無視してまで「そうする」必要がないから。
「でもね、この間も言ったけれど。対外的に、いま破棄したのがバレるのは不味いらしいの」
いまこの破棄によって、敦子さんと鹿王院側の不仲が囁かれたりするのは、今足場を固めてる敦子さんにとってあまり喜ばしくないことだ。
「だから、多分高校卒業とか、それくらいまでは」
申し訳なくて頷く。
「そーかー」
あっけらかん、とアキラくんは言った。
「遊園地の制服デートとか、してみたかったけど」
「ご、ごめん」
「正式に発表? みたいになったら、そっこー行こか、制服で」
卒業してても、とアキラくんは明るく笑う。
「華やったら何歳なってても似合いそうやし、制服」
「そ、そうかなぁ」
さすがにそれはないと思うけれど、卒業してすぐ、とかなら大丈夫かな。
「絶対やで」
アキラくんは私の首に唇を寄せた。軽く軽く、触れるだけのキス。
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そう思ってしまうんだから、私はやっぱりどうかしちゃってるのかもしれないなぁ、なんて思う。
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