466 / 702
【高校編】分岐・黒田健
男子高の文化祭
しおりを挟む
「えっもう休憩なの!? メイド服はっ!?」
設楽が残念そうに言うから、俺はさっき撮った(正確には撮られた)写真を設楽に見せる。設楽は珍しく大爆笑して、「コレちょーだい!」とねだってくる。
「ヤダよ、お前さ、ひよりに送るつもりだろ」
「あは、バレた」
いたずらっぽく笑う設楽はメチャクチャ可愛い。可愛いけどひよりに送るのだけは止めろ。親戚中に回るじゃねーかその画像。
俺の学校の文化祭当日。設楽は本当に大村サンと松井サンとやってきて(それもやけに可愛らしいワンピースで! 丈が短い!)俺の教室に顔を出した。ざわつく室内。
「設楽さんたち遊んできなよー」
大村サンが楽しげに言う。
「あたしたち、根岸くんたちと待ち合わせしてるから」
くすくすと楽しそうなのは松井サン。……根岸と付き合い出したらしいのは聞いたけれど。
「あっおまたせぇ~~じゃないわ、いらっしゃいませぇっ」
低い声を無理やりに高くしてシナ作って言ってるのは根岸。ゴリゴリにメイド服だ。全然似合ってない。ミニスカで、トランクスの端が見えてる。
それを見て松井サンは爆笑してたから、まぁ2人がそれでいいならいいのかもしんない。
「いらっしゃいませじゃないでしょ、根岸くん」
「あ、そーだ。お帰りなさいませぇ」
「そっちそっち」
やっぱり大爆笑。
「仲良いね」
設楽は微笑ましそうに見ている。俺はそれより、クラスの奴の視線が気になって仕方ない。なんでこんな服なんだ。いや、可愛いけど、クソみたいな視線を設楽の足に送るな……。
ぎろりと周りを見渡すと、次々に逸らされる視線。
「? どうしたの?」
「なんでもねー」
設楽の手を引いて歩き出す。その手には俺からの(選んだのは実質、ひよりと秋月だけど)ブレスレットが揺れていて、なんていうか、ちょっと満たされた気分になる……。
ぼけっと歩いてたら、部活棟の方にきていた。部室が並ぶ、いまの時間帯にはほぼ無人の、そこ。
「? お祭りから離れてない?」
「あー」
設楽を人の目線に晒したくない一心で歩いていたら、こんなとこに出てしまった。
「いや、……そんな服持ってたっけ」
「これ? あー、シュリちゃんセレクト。着ていけって」
「……」
常盤か。何考えてんだ。
「その、黒田くんには自分がいるんだって見せつけてこいとのお達しで」
「……あいつ、俺が男子高なの知らないんじゃねーの」
「あ」
設楽は気がついたように笑った。
「そーかも」
「無防備だ」
俺は少し、ぶすっとした顔になってることを自覚しつつ指摘する。
「普段女子見てねぇヤローばっかのとこにそんな服で」
胸元もかなりあいてる。設楽は割と胸があるほうなので、角度によっては谷間も見える。これ、ほかのヤツも見てると思うとメチャクチャ腹が立った。
(あー、)
自分で自分が情けなくなる。強い独占欲、嫉妬心、そんなもので設楽を縛りたくないのに。
「あのな」
「? うん」
きょとんと俺を見上げる設楽。なんの疑いも、疑問も、抱いてない瞳。
「ごめんな」
「なにが?」
色んな感情をこめた「ごめんな」を伝えたあと、俺は勝手知ったる空手部の部室に設楽を連れ込んだ。
「わぁ部室~」
ちょっと感動してキョロキョロしてる設楽を、無言でベンチに押し倒す。
「?」
不思議そうに俺を見つめる目。
「ごめんな」
もう一度だけ謝って、その唇にキスを落とす。
「ん、」
甘えるような設楽の声。
「なにがごめんなの?」
「色々」
「ふうん」
ゆるゆる、と俺の頭を撫でる設楽の手。
「なにもないのに?」
「色々あんだよ」
そう言いながら、俺は設楽の広くあいた襟ぐり、その鎖骨のほんの少し下に口づけた。
「や、」
思った以上に設楽から甘い声が出て、俺は自制心を総動員する。できてない気もするけど。
「く、黒田くん?」
「誰のもんなんか、」
じっと設楽の目を見る。
「印つけといたほうがいい」
「しるし、」
ぽうっとした目で設楽は俺を見た。胸元に咲く赤い花。
「あのね黒田くん」
呼ばれて、視線を合わせる。
「ごめんなことは一個もないよ」
「設楽」
「私、私は」
設楽は俺に真摯なカオで言う。
「黒田くんになら、なにされたっていいのに」
「……あのな」
俺はぐっと言葉に詰まって起き上がる。このままだと色々ダメだ。設楽は少し寂しそうな顔をする。
(……その顔は)
反則だ。絶対に反則だ。
俺は設楽を抱き上げて、自分の膝の間に挟んで座らせる。後ろから抱きしめる形で。目の前に設楽の後頭部、俺は耳元に口を寄せて、普段あんま言わないことを全部言う。
どんだけ俺が設楽を好きか。独占欲の塊なのか、嫉妬してんのか。
カオは見えないけど、その白い耳が少しずつ朱に染まる。
「あの、なんで、急に」
戸惑ったように言う設楽に、俺は正直に答える。
「わかんねー」
「そ、そっか」
もぞもぞ、と設楽は身体を動かして振り返り、俺を見上げる。
「あのね、……嬉しかったり、するの」
軽く首をかしげると、設楽は甘えるように俺にしなだれかかって、ぎゅうと俺の服を握る。
「なんか、いっつも余裕っぽいから。その、なんていうか、感情見せてくれるの」
嬉しいんだよ、と設楽が消え入りそうな声で言うから、俺は設楽をぎゅっと抱きしめる。ほんとに、いちいち可愛いから俺は毎日困ってる。
設楽が残念そうに言うから、俺はさっき撮った(正確には撮られた)写真を設楽に見せる。設楽は珍しく大爆笑して、「コレちょーだい!」とねだってくる。
「ヤダよ、お前さ、ひよりに送るつもりだろ」
「あは、バレた」
いたずらっぽく笑う設楽はメチャクチャ可愛い。可愛いけどひよりに送るのだけは止めろ。親戚中に回るじゃねーかその画像。
俺の学校の文化祭当日。設楽は本当に大村サンと松井サンとやってきて(それもやけに可愛らしいワンピースで! 丈が短い!)俺の教室に顔を出した。ざわつく室内。
「設楽さんたち遊んできなよー」
大村サンが楽しげに言う。
「あたしたち、根岸くんたちと待ち合わせしてるから」
くすくすと楽しそうなのは松井サン。……根岸と付き合い出したらしいのは聞いたけれど。
「あっおまたせぇ~~じゃないわ、いらっしゃいませぇっ」
低い声を無理やりに高くしてシナ作って言ってるのは根岸。ゴリゴリにメイド服だ。全然似合ってない。ミニスカで、トランクスの端が見えてる。
それを見て松井サンは爆笑してたから、まぁ2人がそれでいいならいいのかもしんない。
「いらっしゃいませじゃないでしょ、根岸くん」
「あ、そーだ。お帰りなさいませぇ」
「そっちそっち」
やっぱり大爆笑。
「仲良いね」
設楽は微笑ましそうに見ている。俺はそれより、クラスの奴の視線が気になって仕方ない。なんでこんな服なんだ。いや、可愛いけど、クソみたいな視線を設楽の足に送るな……。
ぎろりと周りを見渡すと、次々に逸らされる視線。
「? どうしたの?」
「なんでもねー」
設楽の手を引いて歩き出す。その手には俺からの(選んだのは実質、ひよりと秋月だけど)ブレスレットが揺れていて、なんていうか、ちょっと満たされた気分になる……。
ぼけっと歩いてたら、部活棟の方にきていた。部室が並ぶ、いまの時間帯にはほぼ無人の、そこ。
「? お祭りから離れてない?」
「あー」
設楽を人の目線に晒したくない一心で歩いていたら、こんなとこに出てしまった。
「いや、……そんな服持ってたっけ」
「これ? あー、シュリちゃんセレクト。着ていけって」
「……」
常盤か。何考えてんだ。
「その、黒田くんには自分がいるんだって見せつけてこいとのお達しで」
「……あいつ、俺が男子高なの知らないんじゃねーの」
「あ」
設楽は気がついたように笑った。
「そーかも」
「無防備だ」
俺は少し、ぶすっとした顔になってることを自覚しつつ指摘する。
「普段女子見てねぇヤローばっかのとこにそんな服で」
胸元もかなりあいてる。設楽は割と胸があるほうなので、角度によっては谷間も見える。これ、ほかのヤツも見てると思うとメチャクチャ腹が立った。
(あー、)
自分で自分が情けなくなる。強い独占欲、嫉妬心、そんなもので設楽を縛りたくないのに。
「あのな」
「? うん」
きょとんと俺を見上げる設楽。なんの疑いも、疑問も、抱いてない瞳。
「ごめんな」
「なにが?」
色んな感情をこめた「ごめんな」を伝えたあと、俺は勝手知ったる空手部の部室に設楽を連れ込んだ。
「わぁ部室~」
ちょっと感動してキョロキョロしてる設楽を、無言でベンチに押し倒す。
「?」
不思議そうに俺を見つめる目。
「ごめんな」
もう一度だけ謝って、その唇にキスを落とす。
「ん、」
甘えるような設楽の声。
「なにがごめんなの?」
「色々」
「ふうん」
ゆるゆる、と俺の頭を撫でる設楽の手。
「なにもないのに?」
「色々あんだよ」
そう言いながら、俺は設楽の広くあいた襟ぐり、その鎖骨のほんの少し下に口づけた。
「や、」
思った以上に設楽から甘い声が出て、俺は自制心を総動員する。できてない気もするけど。
「く、黒田くん?」
「誰のもんなんか、」
じっと設楽の目を見る。
「印つけといたほうがいい」
「しるし、」
ぽうっとした目で設楽は俺を見た。胸元に咲く赤い花。
「あのね黒田くん」
呼ばれて、視線を合わせる。
「ごめんなことは一個もないよ」
「設楽」
「私、私は」
設楽は俺に真摯なカオで言う。
「黒田くんになら、なにされたっていいのに」
「……あのな」
俺はぐっと言葉に詰まって起き上がる。このままだと色々ダメだ。設楽は少し寂しそうな顔をする。
(……その顔は)
反則だ。絶対に反則だ。
俺は設楽を抱き上げて、自分の膝の間に挟んで座らせる。後ろから抱きしめる形で。目の前に設楽の後頭部、俺は耳元に口を寄せて、普段あんま言わないことを全部言う。
どんだけ俺が設楽を好きか。独占欲の塊なのか、嫉妬してんのか。
カオは見えないけど、その白い耳が少しずつ朱に染まる。
「あの、なんで、急に」
戸惑ったように言う設楽に、俺は正直に答える。
「わかんねー」
「そ、そっか」
もぞもぞ、と設楽は身体を動かして振り返り、俺を見上げる。
「あのね、……嬉しかったり、するの」
軽く首をかしげると、設楽は甘えるように俺にしなだれかかって、ぎゅうと俺の服を握る。
「なんか、いっつも余裕っぽいから。その、なんていうか、感情見せてくれるの」
嬉しいんだよ、と設楽が消え入りそうな声で言うから、俺は設楽をぎゅっと抱きしめる。ほんとに、いちいち可愛いから俺は毎日困ってる。
0
あなたにおすすめの小説
傷物令嬢は魔法使いの力を借りて婚約者を幸せにしたい
棗
恋愛
ローゼライト=シーラデンの額には傷がある。幼い頃、幼馴染のラルスに負わされた傷で責任を取る為に婚約が結ばれた。
しかしローゼライトは知っている。ラルスには他に愛する人がいると。この婚約はローゼライトの額に傷を負わせてしまったが為の婚約で、ラルスの気持ちが自分にはないと。
そこで、子供の時から交流のある魔法使いダヴィデにラルスとの婚約解消をしたいと依頼をするのであった。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる