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【高校編】分岐・相良仁
雪【side仁】
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季節というのは一瞬で過ぎ去っていくもので、それは前世でも現世でも変わらない。
そんなことを、俺は自宅の窓越しに銀鼠色の分厚い雲を眺めながら思う。そこからゆっくりと降下してきてんのは雪で、ついでに今日はクリスマスだってんだから出来過ぎだ。
母国の父親からはなぜかマフラーが届いた。やっぱり子供扱いされてる気がする。
「援助交際、とはもう言わないよなぁ」
いまはパパ活とかいうらしい。やってふことは同じだと思うんだけどなぁ、と俺は机の上の資料を眺めながら思う。
桜澤青花が、それをしているって証拠。写真に、防犯カメラの映像。都内のホテルに入っていく様子。
相手は普通のサラリーマンから医者から警官から(さすがに嘆かわしいなコレは)選り取り見取りだ。
(でもこれは本丸じゃない)
あいつは、もっと「色々」してる。パパ活くらいで逮捕なんかされない。相手はされるけど。
退学で終わって、それで更に逆恨みされちゃ困る。
(……泳がせるか)
本音としては、もうさっさと華から引き離したい。けれど、脳裏によぎるのは薬物のこと。どこでどうやって仕入れて、どうやって捌いてんのか。
(直接本人が動いてねーから)
ふう、とため息をつく。なかなか証拠が掴めないようだ、ウチでも、捜査機関でも。
前科でもありゃ違うんだろうけどなぁ。いきなり女子高生を疑うなんかしないよなぁ。俺はしてるけど。
さて、と俺は動き出す。クリスマスだろうが桜澤がエンコー……じゃないや、パパ活してようが、俺はとりあえず華を迎えに行かなきゃならない。
敬虔なミッション系の青百合学園、クリスマスはお休み、だ。つまり今日一日、華も俺もフリーってわけで。
「寒いね」
車に乗り込んで来た華に、俺はプレゼントの包みをぽすりと渡す。
「わ! なにこれ?」
「正直、父親との血のつながりを感じたわ」
「? なんの話?」
訝しそうな華はプレゼントをさっさと開けて、嬉しそうに「ありがとう」と笑ってくれた。
赤信号で停止したときに、プレゼント……マフラーを華の首にぐるぐると巻きつける。うん、可愛い。
「似合う?」
「うん」
「えへへ」
嬉しそうに、華は笑った。
「で、どこいくの」
「秘密」
「ふーん?」
不思議そうにしながら、窓の外を眺める華。その視線の先では、相変わらず雪がちらりちらりと降っていた。
「……新幹線止まるとかねーよな?」
「なんで?」
「乗るから」
「なんで!?」
びっくりしてる華に俺は笑う。
「クリスマスだから?」
「や、意味わかんないです」
「いいからいいから。つか、何て言って家出てきたの?」
「なんで?」
華の質問に、俺は肩をすくめた。だって、なぁ。クリスマスだぞ。流石に常盤のお嬢さん……つか、シュリは何かしら思うだろう。
「なんとなくー?」
俺が言うと、華は首を傾げながら答えてくれた。
「ふうん? ふつうに出かけるって」
「……そ」
ばーさんはこのところ出張続き、らしいし。……常盤のおじょーさんは読めないんだよなぁ。何か考えてそうな雰囲気は、ある。
「……とりあえずは様子見、か」
「なにが?」
「いやぁ?」
言いながら、俺は華は喜ぶだろうか、と考える。割と俺は約束は実行するタイプの男なんだ。
と、いうわけで「???」顔の華を新幹線に詰め込んで、新幹線のクソ固いアイス食わせてたどり着いたのは。
「京都?」
「だってお前着物着て観光したいって言ってたじゃん」
「え!?」
俺はにやりと笑う。その顔が見たかった。
夏に日光で約束してた。
「……あれかぁ。忘れてた」
「忘れてたのかよ」
「えへへ」
京都も雪が降ってて、まぁ京都は雪でも雰囲気でるからいーだろ、と勝手に俺は思う。
華をレンタカーで連れて、予約してた店に連れてって、華に着物を選ばせる。
華が選んだのは割とモダンな柄の赤っぽい着物で、うん、似合う。
店を出て、さっきのマフラーを巻いてやる。悪くない、と思った。華は少しくすぐったそうに俺を見上げて、俺は目を細める。
穏やかだな、と思う。駐車場まで歩きながら、ちらちらと雪が降っているのを見上げた。灰色の空と、白い雪と、赤い着物の華と。
「寒くないか?」
華は頷きながら、俺をみる。
「仁は?」
「寒くないけど」
「じゃなくて、着物」
「着ない」
「えー」
華は頬を膨らますけど、だって動きにくいもん。慣れてないから。
「そのうちな~」
「ちぇー」
みたかったな、なんて言ってくれるから可愛い。俺の着物なんか見てどーすんだ。
「どうする? 渡月橋とか行ってみるか」
車に乗り込みながら聞いてみる。京都来るのは決めてたけど、ほか、なんも決めてなかったや。
「それよりねぇ」
えへへ、と華は笑った。
「先にご飯かな~」
「だと思った」
思わず笑うと、華は俺のスマホで勝手にお店を探し始める。俺は路肩に車を停めて、華が一生懸命食べたいもの探すのを見てあったかい気持ちになる。
こんな時間がずっと続けばいいのに、ってそんなふうに強く思った。
そんなことを、俺は自宅の窓越しに銀鼠色の分厚い雲を眺めながら思う。そこからゆっくりと降下してきてんのは雪で、ついでに今日はクリスマスだってんだから出来過ぎだ。
母国の父親からはなぜかマフラーが届いた。やっぱり子供扱いされてる気がする。
「援助交際、とはもう言わないよなぁ」
いまはパパ活とかいうらしい。やってふことは同じだと思うんだけどなぁ、と俺は机の上の資料を眺めながら思う。
桜澤青花が、それをしているって証拠。写真に、防犯カメラの映像。都内のホテルに入っていく様子。
相手は普通のサラリーマンから医者から警官から(さすがに嘆かわしいなコレは)選り取り見取りだ。
(でもこれは本丸じゃない)
あいつは、もっと「色々」してる。パパ活くらいで逮捕なんかされない。相手はされるけど。
退学で終わって、それで更に逆恨みされちゃ困る。
(……泳がせるか)
本音としては、もうさっさと華から引き離したい。けれど、脳裏によぎるのは薬物のこと。どこでどうやって仕入れて、どうやって捌いてんのか。
(直接本人が動いてねーから)
ふう、とため息をつく。なかなか証拠が掴めないようだ、ウチでも、捜査機関でも。
前科でもありゃ違うんだろうけどなぁ。いきなり女子高生を疑うなんかしないよなぁ。俺はしてるけど。
さて、と俺は動き出す。クリスマスだろうが桜澤がエンコー……じゃないや、パパ活してようが、俺はとりあえず華を迎えに行かなきゃならない。
敬虔なミッション系の青百合学園、クリスマスはお休み、だ。つまり今日一日、華も俺もフリーってわけで。
「寒いね」
車に乗り込んで来た華に、俺はプレゼントの包みをぽすりと渡す。
「わ! なにこれ?」
「正直、父親との血のつながりを感じたわ」
「? なんの話?」
訝しそうな華はプレゼントをさっさと開けて、嬉しそうに「ありがとう」と笑ってくれた。
赤信号で停止したときに、プレゼント……マフラーを華の首にぐるぐると巻きつける。うん、可愛い。
「似合う?」
「うん」
「えへへ」
嬉しそうに、華は笑った。
「で、どこいくの」
「秘密」
「ふーん?」
不思議そうにしながら、窓の外を眺める華。その視線の先では、相変わらず雪がちらりちらりと降っていた。
「……新幹線止まるとかねーよな?」
「なんで?」
「乗るから」
「なんで!?」
びっくりしてる華に俺は笑う。
「クリスマスだから?」
「や、意味わかんないです」
「いいからいいから。つか、何て言って家出てきたの?」
「なんで?」
華の質問に、俺は肩をすくめた。だって、なぁ。クリスマスだぞ。流石に常盤のお嬢さん……つか、シュリは何かしら思うだろう。
「なんとなくー?」
俺が言うと、華は首を傾げながら答えてくれた。
「ふうん? ふつうに出かけるって」
「……そ」
ばーさんはこのところ出張続き、らしいし。……常盤のおじょーさんは読めないんだよなぁ。何か考えてそうな雰囲気は、ある。
「……とりあえずは様子見、か」
「なにが?」
「いやぁ?」
言いながら、俺は華は喜ぶだろうか、と考える。割と俺は約束は実行するタイプの男なんだ。
と、いうわけで「???」顔の華を新幹線に詰め込んで、新幹線のクソ固いアイス食わせてたどり着いたのは。
「京都?」
「だってお前着物着て観光したいって言ってたじゃん」
「え!?」
俺はにやりと笑う。その顔が見たかった。
夏に日光で約束してた。
「……あれかぁ。忘れてた」
「忘れてたのかよ」
「えへへ」
京都も雪が降ってて、まぁ京都は雪でも雰囲気でるからいーだろ、と勝手に俺は思う。
華をレンタカーで連れて、予約してた店に連れてって、華に着物を選ばせる。
華が選んだのは割とモダンな柄の赤っぽい着物で、うん、似合う。
店を出て、さっきのマフラーを巻いてやる。悪くない、と思った。華は少しくすぐったそうに俺を見上げて、俺は目を細める。
穏やかだな、と思う。駐車場まで歩きながら、ちらちらと雪が降っているのを見上げた。灰色の空と、白い雪と、赤い着物の華と。
「寒くないか?」
華は頷きながら、俺をみる。
「仁は?」
「寒くないけど」
「じゃなくて、着物」
「着ない」
「えー」
華は頬を膨らますけど、だって動きにくいもん。慣れてないから。
「そのうちな~」
「ちぇー」
みたかったな、なんて言ってくれるから可愛い。俺の着物なんか見てどーすんだ。
「どうする? 渡月橋とか行ってみるか」
車に乗り込みながら聞いてみる。京都来るのは決めてたけど、ほか、なんも決めてなかったや。
「それよりねぇ」
えへへ、と華は笑った。
「先にご飯かな~」
「だと思った」
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